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石神様の仰ることは  作者: 黒辺あゆみ
第九話 死者の声

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エピローグ

入学式の翌朝。校門前には風紀委員たちが服装チェックに立っている。目を光らせている風紀委員の中に、一際周囲の視線をひきつけている男がいる。

「きゃー、本郷先輩だ!」

「朝からラッキー!」

通り過ぎる女子生徒が、浮き足立っている様子が見て取れた。そんな中を、楓は俯き加減で歩いていく。すると、

「そこの女子」

本郷が声をかけてくる。周囲に女子は大勢いるが、おそらくこれは楓を指しているのだろう。何故なら、本郷と目が合ったからだ。

 楓が立ち止まると、本郷が寄ってくる。

「ネクタイが曲がってますよ?」

「……そうですかね?」

いつも通りのネクタイだと、楓は首もとを弄りつつも首を傾げる。


 その様子を眺めていた本郷が、小さく笑った。

「挨拶の口実ですよ、せっかく朝から顔を見たんですから」

小声でささやく本郷に、楓も微笑んだ。

「ふふ、ネクタイ、気をつけます委員長」

「そうしてください」

精一杯のしかめっ面を作った本郷が、なごり惜しそうに視線を外した。

 ――巽さんと会ってから、もう一年か

 この一年にいろいろありすぎで、早かったような、遅かったような不思議な気持ちになる。

 新年にあった楓の誘拐事件の後一時期、両親や本郷、果ては石神様までもが楓に過保護になった。正直窮屈に思わなかったというのは嘘になるが、それでもみんなが心配しているということは理解できたので、しばらくはみんなの言うとおりに、楓は過保護にされていた。


 しかしそれも、何事もなく楓が毎日を過ごすうちに、緩やかなものになっていった。楓がまたさらわれるかもしれないという恐怖が、消えはしないだろうが、徐々に落ち着いてきたのだろう。

 楓もヘッドフォンをしないで歩く道のりを、平然と歩けるようになるまで苦労した。だが人間は慣れる生き物で、石の声を気にせずに歩けるようになってきた。もっと早くこうしていればよかったと思うが、きっと今がヘッドフォンをとるタイミングだったのだ、と本郷に言われた。

「楓ちゃん、おはよう!」

後ろから声をかけられ振り返ると、橋本姉妹が歩いてきた。

「寧々ちゃんに莉奈先輩、おはよう」

楓が挨拶を返すと、二人は両方から肩を組んできた。

「楓よ、今年も郷土歴史研究会の新規メンバー獲得に精を出すぞ」

「そう!歓迎のためのオカルトスポットも調べてあるんだから!」

莉奈のやる気はわかるが、寧々のやる気は楓としては遠慮したい。

 二人と一緒に歩きながら、、楓は去年俯いて通った校門を振り返った。

 ――今年も、楽しくなりそう

 顔を上げた楓は、笑顔で進んでいった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楓ちゃんほんと可愛い コンプレックスの塊である楓ちゃんを巽くんが絆していく様が良いですね [気になる点] 是非その後の二人の様子も見てみたい...
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