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The All Online ~アイテム「だいじなもの」を活用して、レベル1のままVRMMO世界を満喫します~  作者: 浅磯航河


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第19話 甘い尋問

「あれ? まだ達成した人がいないって言ってましたけど、その五位さんがしてるじゃないですか」


「達成されているのは十回連続の実績だけです。五十回と百回の実績はあなたが初めてなんですよ。これはもうチート確定ですよね?」


「どうしてそういうことになるんだ……?!」


 あまりにも一方的な物言いに、俺は思わず立ち上がってしまった。いくら低確率だと言われても納得がいかない。現に俺はチートなんてしていないし、しようとも思わないのだから。


「言い訳ならいくらでもどうぞ。でも無駄ですよ? ……カラダに聞けばすぐにわかりますから」


「えっ……なっ?!」


 机を回り込んできたフェイラさんが、自分の体を俺の方へと預けてきた。咄嗟のことについ彼女を受け止めてしまったのだが。


「は~い♡ ぎゅっ、ぎゅっ♡」


「はぁぁぁ……?!」


 くびれた腰とおなか、それに胸。ギルドの制服というのは見た目よりもずっと薄手で。柔らかくてふにふにした感触が俺の初心者のシャツ越しに伝わってくる。


「もうっ、逃げないでもっと密着してくださいね。調べられないので」


「あばばばば……!」


 ここはVRの中なのに。相手はNPCなのに。密着してくる彼女のカラダは確かに温かくて。それは間違いなく人肌と言えるものだった。


「んんー? プレイヤーのステータスはイジってないみたいですね」


「はぁ、はぁ……チートなんてしてないって言ったじゃないですか」


 先ほど、彼女はカラダに聞くと言っていた。どういう仕組みかはわからないが、このハグが。カラダ同士をくっつける行為が不正行為を検出する方法ということなのかもしれない。


 なんて調査方法だ。非常にこちらの心臓に悪い。やめて欲しい。……やめなくてもいい。




「では、ステータス以外のチートですかぁ。うーん……」


 能力値へのチート疑いは晴れたようだ。しかし、依然として俺を疑い続けるフェイラさんは次の行動に出た。


「ふふふ、どこかなどこかなー? チート出てこい♪ チート出てこーい♪」


「あっ、ちょっ、フェイラさんっ……?!」


 抱き着いたままの状態で、彼女の手が俺の体を弄る。上は頭から、下はふとももの方まで。細くてしなやかな指がツーっとなぞってくる。くすぐったいやら恥ずかしいやら。か弱い女性を跳ね除けるわけにもいかず、俺は悶えさせられ続けた。


「あっ♡ ……見ぃつけた♡ この、硬くておっきいの♡」


「なっ、そ、そこはっ……!」


 俺の腰辺りを弄っていた彼女がそんなことを言い出した。その場所にあるのは俺の相棒とも言えるアレがあるわけで……。


「……やっぱり。明らかに装備のパラメーターがおかしいです。これ、チート武器ですよね?」


 やっと離れてくれた彼女が手に持っていたのは、いつのまに抜き取られたのか。俺の愛用している「初心者の剣+」だった。


「もうっ、ダメですよ? こんなヘンテコなチート武器を作るなんて。……非常に残念ですけどBAN案件ですね、これは」


「いや、ちょっと待ってください!」


 BANというのは禁止という意味であり、オンラインゲームにおいては利用停止になることを指す。つまり、アバターも削除される。キャラデリートだ。


 冗談じゃない。こっちは「だいじなものコピー」というスキルのせいでレベルが1から上がらなくなっているんだ。必死に打開策を探して、アオイと協力して作り上げたのがこの初心者の剣+だったのに。それをチート呼ばわりされるのは不本意に過ぎる。


「……本当にチートなんかしていないんです。俺のスキルで増やしたアイテムをアオイの、パーティーメンバーのスキルで進化させただけで」


「[プレイヤーネーム:アオイ] ……あぁ、さっき一緒にいらっしゃったプレイヤーさんですね。彼女も同罪ということですか。まさかステータスではなくスキルの方を改造するなんて……」


 まずい。余計なことを言ってしまったか。このままではアオイに飛び火して彼女の方にもチート行為の疑いがかかってしまう。


「だから違うんですって! ……だったら俺のスキルを調べてください。そうすればチートしてないってわかるはずです」


「んー……スキルっていうのはですね? プレイヤーデータの中でもかなり奥の方にあるものなので、調べる方法というのが少々……」


 目を閉じて考え込んだフェイラさんは少しの間動きを止めて。


「まぁ、いいでしょう。どうせこれでBANになることですし。最期に少しぐらいは……」


 プチ、プチ……。


 ギルドの制服の留め具を外していくフェイラさん。更に制服の袖から手を抜くと……彼女の下着姿が露わになった。


「フェフェフェ、フェイラ、さん?」


 これははたして見てもいいものなのか。ギルドのアイドル的存在。クエストを受けに行くたびに、ついその姿を探してしまう美人のお姉さんが、制服を脱いで下着姿になろうとしている。陶磁器のように白い肌。ブラジャーで左右から寄せられた胸の真ん中には、それはもう見事な谷間が作られていて……。神々しすぎて目が潰れそうだ。


 普通のMMOならイラストが一枚表示されて終わるところだが、これはVRMMOだ。恥じらいからか少しだけ頬を染めた下着姿のお姉さんが目の前に確かに存在している。身じろいでいる。TAOをプレイしてきて、今ほどVRで良かったと思うことはない。


「はいはい、あなたも脱いでくださいね?」


 パチッ。


 フェイラさんが指を鳴らすと。


 シュンッ!


「うわっ?!」


 俺の着ていた体上装備、初心者のシャツが強制的に解除された。つまりインナー姿一枚。そんな状態で。 


 ぎゅむっ。


「ちょっ……!」


 下着姿同士。フェイラさんが俺に抱き着いてくる。お互いに薄手の布一枚を隔てたのみで密着するその威力たるや先ほどの比ではない。温かいやら柔らかいやら。甘ったるい香水のような匂いもしてきて、もう訳が分からない。


「深部のデータは肌を重ねないと調べられないのが難点ですね。まぁ、最期の思い出ってことで」


 下を見れば彼女の豊かな胸が俺の胸板で潰されているのも目に入ってしまうわけで。自分の心拍数が急激に上昇していくのがわかった。




 しばらくの間、俺に抱き着いていたフェイラさん。その途中から、どうにも彼女の様子がおかしくなってきていた。


「あら……? あらら……? お、おかしいですね。まさか本当に……?」


 データ解析とやらが終わったのだろうか。目を丸くした彼女は信じられないといった表情を浮かべていた。ついでに、その顔からは血の気が引いていた。


「それでは彼女の方も……? [プレイヤーネーム:アオイ] ……チートの疑い、なし。これは……」


 スススッと。俺から距離をとったフェイラさんは、膝立ちになると両手を床に着いた。そしてそのまま頭を床すれすれのところまで下げた。いわゆる土下座の格好である。


「本っっっっっ当に、申し訳ありませんでした! [プレイヤーネーム:リン様]、[プレイヤーネーム:アオイ様] 両人共にチート行為をした形跡、およびチートの疑いがあるアイテムを使用した形跡は認められませんでした!」


「え、ちょっ、何も土下座までしないでも……!」


 しかも彼女は上半身が下着姿のままだ。俺がそんな格好をさせて土下座を強要させているみたいに見えるじゃないか。俺にそんな趣味はない。たぶん。


「こちらがスキルの仕様を把握していなかったことが原因です。言い訳になってしまいますが、あまりにもスキルの効果が多すぎるので、その組み合わせまで把握しきれていないのが現状でして……」


 実際そうだろうなぁ。スキルの効果が人と被ること自体が稀だ。ということはそれぞれ違う効果のスキルを持っていることになる。リリース直後ながらプレイヤー数一千万人を超えようとしているTAOだ。その組み合わせともなれば一体何通りになるか。


 俺とアオイのスキルが噛み合い過ぎた結果がこれだ。運営にまでチートを疑われるアイテムを作ってしまった。なんというか、本当にとんでもない組み合わせなんだな俺たちは。


「重ね重ね、謝罪を申し上げます。本当に申し訳ありません。今後はリン様が所持しているアイテムに関してチートを言及しないことを全NPCへと通達しておきますので……」


「あ、あぁ、それは助かります」


 流石に違反行為をしていると疑いを掛けられるのはもうこりごりだ。運営やNPCがそういう認識を俺に対して持ってくれるのであれば、大手を振ってゲームをプレイというものである。万が一、他のプレイヤーにチートを疑われるようなことがあったとしても、それがシロである証明にもなるだろうし。




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