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The All Online ~アイテム「だいじなもの」を活用して、レベル1のままVRMMO世界を満喫します~  作者: 浅磯航河


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第17話 ギルドへ報酬を受け取りに

 流石に数十匹ものスライムを相手にするわけにはいかない。一匹倒したら敵に囲まれる前に後ろへ下がり、また突出してきた一匹を攻撃する。いわゆるヒットアンドアウェイの形だ。ひたすらそれを繰り返していく。スライムの数が残り二、三匹になった頃。


 ピコン!


 とうとう俺は『モンスターにクリティカル攻撃を100回連続で当てる』という前人未到(たぶん)の実績を達成することに成功したのだった。




「はぁ……ハァ……つかっ……疲れっ……たぁっ……!」


 短距離ダッシュを何本もやったような疲労感だった。知らなかった。ヒットアンドアウェイというのはけして華麗な戦術などではなく、体力にものを言わせた泥臭い戦法であるなんて。


「おつかれさまっす! それでそれでっ? 百回クリティカルの報酬はっ?」


「あの、一息つかせて欲しいんですけど」


 まぁ、逸るアオイの気持ちもわかる。俺だって気になっているんだ。幸運、強運ときたら、その次は一体どんな運なのか。勝手に運関係だと思ってしまっているが、十回、五十回もそうだったからきっと百回のもそうなんだろう。


「報酬は『激運のサークレット』だってさ。効果は、『運勢が結構上がります』だそうだ」


「やっぱり運が上がる系のアクセサリーだったっすねぇ。クエスト報酬が増えそうな名前」


 それは某狩りゲーだけだ。


「クリティカル関連の実績は百回でおしまいみたいだ。わざわざ付き合ってくれてありがとうな」


「いえいえ、ウチはその激レアアイテムを見せてもらえればそれで満足っすよ……フフフ」


 アオイの目がヤバいくらいにギラついていた。彼女はデザインを勉強する学校とやらに通っているらしく、TAOでもアイテムやその装飾部分に目がない。パーティを組んだのも、俺と一緒にいればまだ見た事のないアイテム(のデザイン)に出会えそうだからというのが理由である。


「ところで実績を達成した場合って、どこに行けば報酬がもらえるんだ?」


 アオイはオーバーキルという実績を達成したことがあると言っていた。きっと報酬の受け取り場所も知っているに違いない。


「クエストと同じっすよ。ギルドっす!」




 再び元の場所へと戻ってきた俺たち二人は、ギルドの中へと足を踏み入れた。


 ギルドには三種類の受付がある。


 一番混んでいるのはクエストを受注する受付。「〇〇というモンスターの討伐」や「〇〇草の納品」などその種類は多岐に渡り、プレイヤーが常に列を作っている場所だ。


 その次に混んでいるのがクエスト報酬を受け取る受付。受注の方ほどプレイヤーが並んでいるわけではないが、こちらの方もともかく時間がかかる。討伐してきたモンスタードロップを精査して本当に倒したかどうか確かめたり、採取物が類似品と間違われてないか確認したり。そのせいで列の見た目よりも長くなるのが常だった。


 そして最後の一つはクエスト関連以外の受付だ。ここだけはいつ来ても空いている。本来は土地や家の登記をする場所としての役割があるそうだが、ファイゼンにいる大半のプレイヤーはクエストを受けに来る場所としてギルドを認識している。最初に訪れる街であるため、まだ所持金に余裕のないプレイヤーが多く、物件等を購入するプレイヤーが少ないからだ。


 実績というのもどちらかと言えばやり込みに分類される要素であり、達成する人の方が稀なのだろう。そんなわけで俺たちは並ぶことなく、受付に通されたのである。


「いらっしゃいませ。本日は何のご用でしょうか?」


 なんとも丁寧な態度で受付してくれたのは、このギルドの中でも一、二を争う受付嬢、フェイラさんだった。宿屋のメルンさんと双璧をなす、ファイゼンの街の人気NPCである。彼女が受注受付を担当する日は、ギルドにあるクエストの在庫がなくなってしまうほど受注率が高くなるという伝説もあるほどだ。


 ただ、新人のNPCに窓口の経験を詰ませるためか、フェイラさんは奥の方で事務仕事をしている場合が多く、こうして受付に立ってくれるのは非常に珍しいことだった。ちなみに俺も彼女のファンである。メルンさんといいフェイラさんといい、NPCのクオリティが高すぎるんだよなぁTAOは……(嬉)


「あの、実績の報酬を受け取りに来たんですけど」


 俺は実績の画面を開いた。フェイラさんに見えやすいよう逆さにしてから、受付の机にそれを提示する。


「あら……ご丁寧にありがとうございます♪」


 実績に目を通し始めたフェイラさん。緩い受け答えと裏腹にその眼光は真剣そのものだった。ギルドでトップクラスと言ったのは何も外見に限った話だけではない。仕事ができるかどうかもそこに含まれているのだ。つまりパーフェクトお姉さんなのである。


「ええと、今回達成された実績は……え”っ?! クリティ、カル?」


 フェイラさんの言葉にギルド内がざわつき始める。


 理由は二つ。一つ目はクリティカルという、その発生率の低さからあまり聞くことがのない言葉にプレイヤーたちが反応したから。そしてもう一つはフェイラさんの様子だった。


 普段取り乱すことがない彼女が驚きの声を上げる。それ自体が大事件であった。プレイヤーはもちろん、同僚の受付嬢や職員たちも何事かとこちらの方を見る始末だ。


「うっわー、注目されてるっすねぇ。きっもちいい~♪」


「アオイはよく平気でいられるな。俺は物凄く落ち着かないんだけど」


「ランウェイとかでもそうっすけど、注目されたもの勝ち。それがウチのモットーなんで」


 ランウェイってファッションショーとかでモデル歩きをするアレのことだよな。デザインを学んでいるからこそ、そういう発想になるんだろうか。メンタル強ぇや。


「……申し訳ないのですが、別室の方でお話を伺ってもいいですか?」


「あっ、ハイ」


 これだけ人目を集めているのは、ギルドにとってもよくないと判断したのだろう。場所を移しての手続きには俺も賛成だったので、フェイラさんの申し出をありがたく受けることにした。


「いってらっしゃーい。ウチは自分のクエスト報酬を受け取ってくるっす! (‵・ω・)ノシ」


 アオイに見送られながら、俺はギルドにある部屋の一室へと案内されていった。




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