報復
署に事情徴収を受け、いくつか事情を説明して、ユーネットワークがやったことを言うと相手にされずに、小百合ちゃんの母親は自殺と判定されてしまった。
ユーネットワークは警察でも手が出せずに、その組織内でも警察が絡んでいる。
小百合ちゃんの母親の死因は青酸カリを飲んで死んだことになっている。だから自殺と判明されたのだった。
自殺した者がウエディングドレスを纏って死ぬ事なんてあり得るのかと思ったが、警察では自殺と判明されてしまった。
私はユーネットワークを裏で動かしている駒木根の事が凄く憎いと思った。
それよりも悔しくて悲しいのは小百合ちゃんだ。
そんな時、私のスマホに連絡が入ったのだった。
着信画面を見てみると、無名になっている。
私は恐る恐る、電話に出ることにした。
「・・・」
黙ったまま受話器を耳に当てる。
「どうだ。亜希子さん、これで俺達の恐ろしさが分かったか?」
「お前、いったいどういうつもりだよ」
怒りをこみ上げて私は言う。
「高岡小百合の母親が殺されて、小百合はどの様な犯行に至るか楽しみじゃないかい」
「駒木根ね、音声を変えても私には分かるんだから」
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
とあざ笑う駒木根。
「何がおかしいのよ」
「お前、面白い奴だよな、俺はお前にプレゼントを与えたいと思っていたよ」
「プレゼント!?」
「そう、プレゼント。恐怖というプレゼント。高岡小百合は単独で俺の事を殺しに来るだろう、そうなったら、こっちは返り討ちにして殺してやろうと思っているのだがな」
「そんな事は絶対にさせないわ。そんな事をしたら、あなたを死よりも苦しい物をあなたにしてあげる。あなたには死刑なんて甘っちょろいわ」
「死刑なんて甘っちょろいか!?俺はユーネットワークを自在に操る事が出来るんだぞ。絶対にそんな事は無理だと思うけどな」
「私はお前だけは許さない」
「せいぜい俺のお前へのプレゼントを用意してやるから、楽しみに待っていると良いよ」
そうして通話は切れてしまった。
とにかく小百合ちゃんのお母さんが殺されてしまったんだ。小百合ちゃんの事が心配だ。それに純君も小百合ちゃんと協力をして、ユーネットワークに無謀にも立ち向かうのかもしれない。
とりあえず、私は純君と小百合ちゃんが行っている、英明塾に戻ることにした。
自転車を漕ごうとしたら、何か、震えが止まらずに、足がすくんで倒れてしまった。
純君や小百合ちゃんは暴力を受けるよりも、仲間がやられる方が心に応えている。
これ以上私達の仲間を危険な目にはさせられないと思っている。
覚束ない自転車を漕ぎながら、英明塾に行くと、豊川先生がパソコン室で腕を組んで目を閉じて椅子にもたれかかっていた。
「先生、純君と小百合ちゃんは」
「純君と小百合ちゃんは無謀にも二人だけで小百合ちゃんのお母さんの敵を討ちに出かけてしまったよ」
「何で先生は止めなかったんですか?」
「止めようとしたさ、でも少林寺で学んだ技をかけられて僕は身動きがとれなかったよ。僕はあの子達の殺意を止める事は出来なかったよ」
「で!?どこに行ったのですか!?」
「それは僕にも分からない?」
それを聞いた私は、外に出ようと彼らを探しに行こうとしたところ。
「待ちなさい、亜希子ちゃん」
「何を言っているんですか。このまま二人を野放しにしてしまったら、二人は殺されてしまう」
「僕は今、二人の携帯に盗聴をしているんだ。そのユーネットワークから彼らに連絡を取るだろうと思って」
「じゃあ、その盗聴の電波でどこにいるのか分かるんですか?」
「どこにいるかは分からないが、とりあえずユーネットワークの駒木根って言う者はきっと彼らをおびき寄せると思うから、盗聴を仕掛けたのさ」
さすがは豊川先生相変わらずに頼りになると思った。
「で、何か分かった事があるんですか?」
「多分、その駒木根と言う者は、ユーネットワークに殺されてしまうだろう」
「どうしてそんな事が分かるんですか!?」
「僕もユーネットワークに顔が利くからね」
「じゃあ、先生、ユーネットワークを操る駒木根は殺されて、純君と小百合ちゃんはどうなるんですか?」
「分からない。とにかく盗聴をして奴らが純君達に危害を加えようとしたら、連絡をするよ」
とそう言って豊川先生は私に拳銃を渡したのだった。
「言っておくけれど、彼らを止めるには君しかいない。小百合ちゃんと純君は我を忘れて、駒木根に報復をしようとしている。だから亜希子ちゃん。よろしく頼むよ!」
「はい!」
私は豊川先生に拳銃を受け取って、自転車に跨がって、走り出すのであった。
この手がかりがない夜空の下で、自転車を漕ぎながら、走り出す。
もし小百合ちゃんと純君が殺されてしまったら、私はもう生きていけないと思っている。
神様お願いです。私の大切な者を取らないで下さい。
きっと小百合ちゃんも純君も我を忘れて小百合ちゃんのお母さんが殺されて報復に行ったのだろう。
ユーネットワークを操る駒木根は悪魔だ。もはや人間ではない。
その悪魔を純君と小百合ちゃんは無謀にも立ち向かおうとしているのだ。
ユーネットワークに狙われた者はほぼ100パーセントの確率で殺されてしまうと聞いている。
でもあくまでほぼだ、ほぼだから100パーセントではない。だから一縷の望みをかけて見ようと私は思っている。
もし私が息子の純君が殺されてしまったら、我を忘れて、ユーネットワークを操る駒木根を死よりも苦しい生き地獄を味らわせてやろうと思っている。
純君の聞くところによると、初めは駒木根にいじめられて、私が少林寺の技を教えてあげたら、それを実行して返り討ちにしてあげたと聞いている。
そしてまた駒木根の奴は報復として今度は中学生を三人連れて純君達をぶっ飛ばそうとしたら、駒木根はまた返り討ちされてしまったと聞いている。
最後は駒木根のいるクラスでは駒木根の言うことを聞かない奴はいじめに遭うと聞いた。
それで私がフリースクールを紹介してあげて、純君も小百合ちゃんも充実した日々を送ることが出来るようになったのだ。
ただ、純君も小百合ちゃんもフリースクール英明で充実した日々を送りたいだけなのになぜ、駒木根は純君と小百合ちゃんに酷い目に遭わせようとするんだ。
そう思うと、駒木根の奴が憎いと言う気持ちに支配されてしまう。
純君と小百合ちゃんが今どこにいるのか分からない。
殺意と言う物は、どんなに強い相手でも敵わない力を持っている事を私は知っている。
仮に私の主将だった少林寺の先生を相手にしても、殺意に満ちた純君と小百合ちゃんを止める事が出来ないだろう。
その証拠に英明塾の豊川先生でさえも止める事が出来なかったんだ。
純君と小百合ちゃんはどこに行ってしまったのだろう。
早く二人を探さなければ大変な事になってしまう。
私は自転車を止めて、深呼吸をして落ち着きを取り戻した。
手がかりのない夜空の下で、手がかりがないなら、私が動いたって意味がないと気がついた。
「お願いだから純君に小百合ちゃんバカな事はやめて私の所に帰っておいでよ」
人知れずにそう呟く。
そんな時であった。私の携帯に連絡が入った。
着信画面を見てみると、豊川先生からだった。
「はい、もしもし、高橋亜希子です」
『亜希子ちゃん、二人の居場所が見つかった』
「本当ですか!?」




