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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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一縷の望み

 ユーネットワークに狙われた者は不思議な超能力の様な物を持っていると聞いているので奴らに狙われた者は死を待つしかないと言われている。


 その超能力の様な物で今度は夢を抱いている剛君に向けられた。


 私は剛君を探しに自転車を漕いでいる。


 いつものバスケットコートにいるんじゃないかと思って、バスケットコートに行くと、彼の姿はなかった。


 剛君、どこに行ったの?剛君がもし何かあったら私は立ち直れないし、私の息子の純君や彼女の明ちゃんやみんなもショックを受けてしまうだろう。


 剛君どこにいるの?


 どうしてユーネットワークに言われた事を私に相談してくれなかったの?


 私は剛君を探しに行かなくてはいけない。


 私には聞こえる。ユーネットワークを操る駒木根の笑い声が。


 そんな駒木根の奴を許せない気持ちでいっぱいだが、私は今は剛君がどこに行ったのか探すしかないと思っていた。


 彼は本気でBリーグの舞台に立とうといつも私が練習相手をしてあげた。


 剛君、お願い、たとえ、夢が絶たれてもその命を粗末にする事はしないで欲しいと思っている。


 彼は携帯を持っていない、だから彼が行きそうな所を自転車で回ったが、どこにも見つからない。


 そんな時、私は今英明にいる明ちゃんに連絡を取った。


「もしもし、明ちゃん」


『はい、明ですけれども』


「剛君が行きそうな所は私が知っている限り探したけれども、どこにもいないんだよね、何か心当たりがありそうな所はないかしら?」


『私も彼が行くところをしらみつぶしに探したのですがどこにも見つからないのです。剛の奴本当にどこに行ったのか心配で心配でたまらないのですよ』


 いつも冷静で頭の切れる明ちゃんも取り乱している。


「どこでも良い。どこか剛君が行きそうな所を教えて欲しいの、何か分かる所はない?」


『私の憶測だけれども、Bリーグが開催されている舞台の観客席に行ったのかもしれません』


 Bリーグが開催された場所ってどこか私は気になったし、私にも分からない。


 そろそろ日が暮れようとしている。


 今日はスマホのネットで調べたが、Bリーグの試合はないと思っているし、それに、Bリーグが開催されている場所はここからだと遠い過ぎるし、とても小学生がいける場所ではない。

 ここからだとバスケの練習をしている区民センターしか考えられない。


「明ちゃん、ありがとう。とりあえず剛君の手がかりが僅かでも分かったかもしれない」


『じゃあ、亜希子お母さんよろしくお願いします。剛を救えるのは亜希子お母さんしかいないと思っているので』


 私は早速区民センターのいつも中学生やら高校生やらが練習している所まで自転車で急いだ。


 ここから区民センターまで近い、区民センターはいつも純君と小百合ちゃんが少林寺拳法を教わっている場所だ。


 とにかく今は一縷の望みをかけて区民センターに行くしかないと思っている。


 区民センターに到着すると、バスケットの練習をしている高校生がいる。


 そこには地区予選の試合が始まる所もあって、観客席が設けられている。


 その観客席を探してみると剛君はいた。


 私は剛君が見つかって声をかけた。


「剛君!」


「亜希子お母さん、どうして?」


「剛君、お願いだからバカな事はやめてはくれないかな!?」


 そこで剛君の左手首を見てみると、リストカットの痕がある。


「もう俺は人生終わったも当然だよ。俺には才能がない」


 私が剛君の元へ行こうとすると、ナイフを手首に添えた。


「お願い剛君、あなたはまだ十歳よ。才能があるかどうかなんてまだ分からないじゃない」


「俺はまだ、亜希子お母さんにあっ君と俺とワンオンツーでやっても歯が立たないじゃない。そんな俺に才能なんてあるわけがないじゃないか!」


「剛君は才能あるよ」


 私は剛君に本心を伝えてあげた。


「でも俺には亜希子お母さんにあっ君と俺でワンオンツーで一度も勝った事もないんだよ」


「でも剛君は私が教えた事をちゃんと実践で使って上達しているじゃない」


「でも俺には・・・」


 そう言って剛君は手首にナイフを突きつけた。


「やめなさい。もしあなたがここで命を落としたら明ちゃん達が悲しむよ」


「悲しんだって良いさ、俺にはバスケの才能なんてない。光さんに恩を返す事が出来ない」


「恩に報いるなら、ちゃんとした社会人になって恩を返してあげたらどうかな?」


「俺はBリーグの舞台に立って光さんに恩を報いたいと思っている。俺にはバスケの才能はないから恩に報いる事は出来ない」


「でも剛君私と出会ってまだ、二ヶ月しか経っていないじゃん。それに私にバスケでワンオンツーで勝てると思っているの?私は高校生の時に全国大会に行ったほどの実力があるんだよ。そんな私に勝てる訳がないじゃん」


 すると私の言葉は剛君に伝わったのか、その手首に当てたナイフを引っ込めたのだった。


 駒木根に何を吹き込まれたか知らないが彼は本気で死のうとしている。


 そんな事は絶対にさせない。


 剛君はまだ十歳だ。それに夢を諦めるのはまだ早いと思っている。


「俺はどうすれば良いんだ」


 そう言って剛君はナイフを床に落として、絶望の淵に立たされて、泣きすくんでしまった 

 今だと思って私は剛君の元へ行って、腕を捻り、動けないようにして牽制した。


「お願いだから、もうやめて、あなたが死んでしまったら、光さん達や純君達が悲しむ事になるんだよ。それに仮にBリーグがダメでも生きて、そして立派な社会人になって光さんを喜ばせなさいよ」


 そうだ。スポーツの世界はそんなに甘い物ではない、けれども目標を持って行けばもしかしたら剛君にはBリーグに行けるかもしれない。


「亜希子お母さん。俺はBリーグに立ちたい」


「なら私ともっと修行を付けましょうよ」


「亜希子お母さん、俺才能あると思う」


「Bリーグに立つことは難しいかもしれないけれど、私は剛君の夢を応援するわ」


 そんな時である。


「剛!」


 と明ちゃんの声がこのコート全体に響いた。


「明、お前」


 すると明ちゃんは剛君の頬を思い切り叩いた。そして剛君に抱きしめた。


「心配させるんじゃないよ。何よこの右手の傷は?あなたもしかしてリストカット自殺でもしようとしたの?相変わらずに単細胞なんだから」


 私は剛君に大事な事を伝える事にした。


「剛君、確かにBリーグに立つのは安易な事じゃないけれども、一人でBリーグに立つことは出来ないよ。それには私の力はもちろんの事、明ちゃん達の力も必要となってくるよ」


「一人で立つことは出来ないかあ」


「それにあなたは知っているはずよ、一人の無力さを、誰にあなたにBリーグに立てないなんて事を言ったかは知らないけれど、あなたは絶望した時点で誰かに相談しなければいけなかったのよ。それを一人で抱えよう何て愚の骨頂だわ」


 すると剛君は男の子の癖に泣き出してしまった。


「ゴメン、俺が悪かったよ」


 明は、


「何泣いているのよ。剛の夢はまだ始まってもいないじゃない。それまで亜希子お母さんに修行を頼みなさい」


 いつもの明ちゃんに戻ってくれて私は嬉しかった。


「明ちゃんの言う通りね、私はいつでも剛君の練習に付き合ってあげるから、これから修行の再会よ」


「おう」


 と剛君は涙を拭って立ち上がってくれた。


 一時はどうなるかと思ったが、どうやら一件落着かもしれない。


 駒木根はユーネットワークを利用して今度は何をしてくるか分からない。


 でも私達は負けるわけにはいかない。


 それよりも明日からまた、剛とBリーグにむけて頑張るしかないと思っている。


 いつまでもユーネットワークに怯えている場合じゃないと私は思った。

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