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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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悪質な陰謀

 僕と小百合さんは狙われている。


 奴らは僕達がいなくなった隙に仲間を一人一人、徹底的に潰そうとしている。


 それに今、僕と小百合さんは笹森君達とバスケをして楽しんでいる。


 今度のターゲットは笹森君かもしれない。


 でも分からない、この中の英明の人の誰かかもしれない。


 駒木根は知っているんだ。僕達を追い詰めるよりも、その仲間達を潰しにかかり、僕達が内臓をえぐられるよりも辛い思いをする事を。


 だから僕達は英明の人が襲われない様に見張っていなければならない。


 笹森君達は僕と小百合さんが教えたバスケに夢中になっている。


 そんなに僕達が放ったスリーポイントシュートが出来るようになりたいのか必死になって頑張っている。


 とりあえず今の時間帯には来ないと思っている。


 もう麻美ちゃんの様な犠牲者は出したくないと思っている。


 犠牲者かあ、そう思うと、僕達は本当に疫病神なのかもしれない。


 そんな事を心の中で呟いていると、小百合さんが僕に語りかけて来た。


「どうしたの純君、そんな顔をしちゃって」


「・・・」


 どうやら僕は知らない間に卑屈な事を考えてしまった様だ。それで僕は鬱蒼とした顔を見て小百合さんは僕の事を心配したのだろう。


「大丈夫だよ純君、今度駒木根の連中の仲間が来ても私が撃退してあげるんだから」


「それは頼もしいけれど、駒木根の奴はどうやら僕達がいなくなったところを僕達の仲間を一人一人潰して行く腹だよきっと」


「とにかく、仲間がやられるのは嫌だけれども、とにかくみんなを信じて見ない」


「信じるって、みんなは僕達の様な強さは持っていないんだよ」


「私は思うんだけれども、みんなもそんなにヤワな仲間達じゃないよ」


 そう言われて僕はホッとした。


 そうだよな、みんなもそんなに弱い人間じゃない。


「でも僕達のせいで仲間達がやられるのは嫌だよ」


「確かにそうだね、私達のせいで仲間達がやられるのは本当に心臓を貫かれる程、嫌だわ」


「でしょ」


「・・・」


 小百合さんも言葉を失い、僕に対する言葉も見つからない感じだ。


 いっそ、僕達二人だけでどこか遠い所に引っ込んでしまえば、誰も犠牲者はいなくなるかもしれないけれど、僕達はまだ半人前以下の十歳だ。それに無力な人間でもあり、何も出来ない。


 駒木根を敵に回してしまったのは間違いなく僕達だ。それで仕返しに何度か僕達を襲って晴らそうとしたが、今度は僕達のか弱い仲間達に手を出そうとしている。


 麻美ちゃんがやられたのは駒木根の力が働いていた事に関しては100パーセント本当の事だと思っているが、僕達にはその証拠すら持っていない。


 仮に証拠があったとしても奴の父親の力でねじ伏せると思っている。


 でもこうして手をこまねいてばかりではいられない。


 とにかく僕達は今出来る事を頑張るしかない。


 そう思って、僕と小百合さんは立ち上がり、笹森君達とバスケで試合をする事にした。




 ★




 バスケの試合も楽しんで、もう空は黄昏れていた。


 とにかく笹森君達にはいえない事だが、僕達の仲間を狙う奴がいるので、笹森君達を英明まで送って行くのであった。


 英明に到着すると、パソコン室がいつもより騒がしかった。


 それに何か、豊川先生が一人の男に罵声を浴びせていた。


 いったい何があったのだろうと思って、笹森君達と僕と小百合さんはパソコン室のドアの前で耳をそばだてていた。


 パソコン室は防音で豊川先生の声は聞こえて来るが、はっきりとした声は聞こえなかった。

 それに罵声を浴びている者は酷く怯えている感じだった。


 何が起こっているのだろうと僕と小百合さんが中に入ろうとしたが、ドアは厳重に閉ざされ、かすかに聞こえる豊川先生の罵声と、ある男の悲鳴の様な声が聞こえる。


 それを聞いていた生徒達笹森君達は怯えていた。それに勉強室で勉強をしていた勝さんに徳川さんも興味津々に聞いている様子だった。


「こんな豊川先生を見るのは初めてだよ」


 と笹森君と、その他の生徒達は皆怯えていた。


 いつも穏やかな豊川先生、いったい誰にその罵声を浴びせているのか?僕と小百合さん、それに英明塾のみんなは気になっていた。


「いったい何があったんだろうね?」


 正直、豊川先生の罵声は本当に怖い感じだった。それに対して小百合さんは、「さあ?」と首をかしげるのであった。


 いったい豊川先生に何があったのか、僕と小百合さんは怖いけれど気になった。


 時計を見ると午後五時を示していた。


 まだ帰るには早い時間だ。


 そんな事を思っていると、先生の罵声とそれを浴びせられる声が聞こえなくなった。


 どうやら治まったらしい。


 そうしてドアが開いて、豊川先生はいつもの穏やかな先生でいた。


 でももう一方の罵声を浴びさせられる程の人は泣きじゃくんでいた。


 その泣きじゃくんだ。人の顔を見ると、高校生ぐらいの人だと言うことが分かる。


 僕はその泣きじゃくんだ。高校生に聞いてみる。


「お前、駒木根の回し者だろ」


 聞いてみると、一瞬驚いた顔をして、「ち、違う!」と狼狽えていたような感じで言う。


 この反応からすると、こいつは駒木根の回し者だと言うことが分かった。


 すると豊川先生は、


「今度僕の生徒に何か仕掛けて来たら、ただじゃ置かないことを肝に銘じて置いてね」


 豊川先生はいつものスマイルでそう言う。


「豊川先生」


 と僕が呼ぶと、先生は、


「ちょっと二人に話したい事があるんだけれども良いかな?」


 どうやら僕と小百合さんに関係している事だと豊川先生は悟ったのだろう。だから僕と小百合さんをパソコン室に誘導するのだった。


 パソコン室の中に入ると、豊川先生は、


「君達は本当に狙われているみたいだね」


 何だろう。豊川先生がそう言うと、さっきから感じていた誰かに見られている気配は無くなった。


「はい、僕達は狙われています」


 そうだ。僕達は狙われている。これは気のせいでも疑心暗鬼でも無い。


「どうやら相手はちょっとやっかいな人だと言うことは分かったよ」


「それをさっきの人が言っていたんですか!?」


「言っていないけれども、もしさっきの人が言ったら、多分ボスに酷い目に合うと思ったからじゃないか」


 すると小百合さんは土下座をして、


「豊川先生申し訳ありません。私達は狙われています。それにやっかいな事に私達の仲間を酷い目に合わせて私達の心をボロボロにしてやろうと思っているみたいです。その事でどうか力を貸してくれませんか?お金だったら大人になったら返しますので」


 そこで僕も小百合さんと並んで、


「僕からもお願いします。今は僕達は子供でお金は出せませんけれども、大人になったらいっぱい働いてお金を返します」


「君達はまだ、子供だ。むしろ守られて無ければいけない幼気な十歳でしょ。でも大人になったらお金を支払うと言うのはなかなか名案だね」


「連中は僕達の仲間を一人一人潰して、最後に僕達を狙ってくるでしょう。でもその頃には、僕達の仲間はみんなやられてしまうかもしれない」


 そんな時である。


 スクリーンセイバーになっていたパソコンが、急に機械音で『ハッカーからの物です』と言って画面に目を向けると、麻美ちゃんの裸体がパソコンに映し出されていた。


「純君、これって」


 僕は悔しさのあまり、すべてを壊したいほどの衝撃に見舞われた。


 駒木根の奴はどこまで汚い奴なんだと思った。


 そうして僕は駒木根に殺意を抱くのであった。


 これじゃあ、麻美ちゃんがかわいそうだ。


 ネットに出回った物は消すことは不可能だ。


 もしこれが僕だったら自殺を考えてしまうかもしれないし、いや自殺が怖くとも、家の中に引きこもってしまうかもしれない。


 駒木根の奴、僕は絶対に許さない。


 今頃奴は笑っている。


 僕達は麻美ちゃんを守り切る事が出来なかった。


 麻美ちゃんがこんな事をされてしまったら、麻美ちゃんがかわいそうだ。


 でもその原因は僕と小百合さんにある。

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