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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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人間は一人では生きていけない

 麻美ちゃんの行方が分からなくなり、時計は午後八時を示していた。


 お母さんと剛君達は麻美ちゃんが行きそうな所を探していたがどこにも見つからない。


 僕と小百合さんも一緒に探したのだが、どうも見つからない。


 心配が募るばかりであった。


「小百合さん、もしかして麻美ちゃん誘拐されちゃったのかな?」


「縁起でも、悪いことを言わないの」


 そんな時、僕の携帯が鳴り出した。


 着信画面を見てみると、誰か知らないが、番号は記されてなくて、何か嫌な予感を感じながら、携帯に出た。


「もしもし」


『青空小学校の倉庫!』


 そう言って着信が途絶えた。小百合さんが気になって、


「どうしたの純君」


「何か『青空小学校の倉庫』と言って通話が途切れたんだけれども」


「青空小学校と言ったら、私達が通っていた小学校じゃない」


 そこでピンときて。


「もしかしたら小百合さん。麻美ちゃんは青空小学校の倉庫に幽閉されてしまったんじゃないかな?」


「分からないけれど、行ってみる価値はありそうね」


 そう言って僕と小百合さんは僕達が通っていた小学校の青空小学校の倉庫に行くことにした。


 青空小学校は自転車で五分もかからない場所だ。


 僕達は青空小学校に辿り着き、裏庭の倉庫の中を調べて見ると、意識を失い、しかも下着姿のままで麻美ちゃんが見つかったのであった。


 麻美ちゃんの下着姿を見るのは男の僕に取ってダメだと思って、ここは小百合さんに任せることにした。


 僕は麻美ちゃんの方を見ないように後ろを向いて、麻美ちゃんが気を取り戻すことを願っていた。


 それよりも、僕は麻美ちゃんは小百合さんに任せて、僕はお母さんや光さんや剛君達が心配して探している麻美ちゃんが見つかった事を携帯で知らせるのであった。


「もしもし、お母さん、麻美ちゃんがいたよ」


『えっ!?どこにいたの』


「僕達の小学校の倉庫の中にいたよ」


 お母さんとの通話は切れて僕はお母さん達を待つことにした。


 そして十分後、光さんがワゴンの自動車にみんなを乗せて僕と小百合さんが通っていた青空小学校まで来てくれた。


「麻美!」


 光さんが麻美ちゃんの方に顔を出す。


 すると麻美ちゃんは気を取り戻して「キャー!!!」と悲鳴をあげた。


「麻美、どうしたの」


「ごめんなさいごめんなさい、私は何も知りません。だから私に変な事をしないで」


「変な事!?麻美、誰にそんな事をされたの。とりあえず私の車に乗って、もう大丈夫だから」


 そう光さんは言って、麻美ちゃんを車の中に誘導していったのだ。


 そして僕は思った。これは駒木根の仕業だと、でも証拠がないがこんな事をするのは駒木根のやつしかいない。


 今朝感じていたあの気配は駒木根か、それに関係する何者かだ。


「小百合さん。こんな事をするのは駒木根の奴しかいないよ」


「確かに証拠がないけれど、それはあり得るわね」


 気の弱い麻美ちゃんをこんな下着姿にして、こんな牢獄の様な倉庫に閉じ込めて、奴はいったい何を考えているんだ。


 なぜ、麻美ちゃんがターゲットにされてしまったのか今の僕には憶測だが、僕達の大切な仲間達を一人ずつ消していこうと言う、作戦なのかも。


 とりあえず麻美ちゃんが見つかって良かったと思った。


 でも麻美ちゃんは凄く怯えていて、光さんが側にいてもパニック状態だった。


「やめてー!!!私に変な事はしないで!!!私は何も悪くないのに!!」


 確かにそうだ。麻美ちゃんは何も悪い事なんてしていない。原因は駒木根の奴に恨みを買った僕と小百合さんが原因なのかも。


 恨みが僕と小百合さんにあるなら、やって来れば良いのに、今回は僕と小百合さんの大切な仲間を傷つけてしまった様な物だ。


 時計を見ると午後九時を示していた。


 とにかく理由はどうあれ、麻美ちゃんを見つける事が出来たのだ。


 それはそれで良いのかもしれないが、また駒木根の奴が、僕と小百合さんの仲間に何をしてくるのか分からない。





 ★




 僕と小百合さんは僕の家でお母さんに事情を説明した。


「なるほど、あなた達の同級生だった子があなた達よりも、仲間の麻美ちゃんを襲った訳ね」


「・・・」


 僕は目を閉じて、自分を責めるしかなかった。


「純君に小百合ちゃん、自分を責めるのはやめなさい」


 そうだ。お母さんの言うとおり自分を責めたって何も解決にも至らない。


 麻美ちゃんは気の弱い女の子だ。以前喧嘩の話を聞いただけで怯えてしまった時の記憶が蘇る。その時も僕は自分自身を責めたりしたが、麻美ちゃんが立ち直ってくれて良かったと思っている。


 そこで小百合さんは言う。


「今回の件は私達のせいなのかな?私達と関わったから駒木根に私達の仲間をあんな酷い目に合わせたのだから」


「小百合ちゃん。何度も言わせないの、あなた達のせいじゃないし、自分を責めたって仕方がないことなのよ」


 お母さんはそう言って小百合さんを窘める。


 お母さんは僕達のせいではないと言っているけれど、僕達が駒木根の恨みによる物だと思っている。


 だから僕達はお母さんに自分を責めたって何も解決しないと言う言葉は合っているかもしれないけれど、僕と小百合さんは自分を責めずにはいられなかった。


 今日の夜も小百合さんは泊まって行く事になった。


 夜ご飯を食べてお風呂に入り、それでも僕と小百合さんは自分を責めずにはいられなかった。


 そこで小百合さんと隣の布団で眠る事になり、僕は眠れなかった。


 時計は午前一時を示している。


 眠れない僕は窓を開けて、星を見るのであった。


 乙女座のスピカを僕は見つけた。それにもう夏なのか夏の大三角形を見つけた。


 心無しか、星を見ていると、何か自然と自分を責める事が馬鹿げていると僕は思い始めた。

「純君、眠れないの?」


 小百合さんを起こしてしまったのか、小百合さんは布団から出て僕が見上げている星空を見つめた。


「あれがスピカで、あれが夏の大三角だね。そろそろ夏の時期が近づいているみたいだね」


 そこで「「あっ流れ星」」と僕と小百合さんは同時に声を出して言った。


 流れ星に三回お願い事を言うと叶うってジンクスがあるけれど、僕と小百合さんの頭の中は早く麻美ちゃんが元気を取り戻してくれないかと言う願いだった。


「小百合さん。もう僕達はみんなに会うことをやめた方が良いかもしれないね」


「確かにそうかもしれないけれど、でも人間は一人では生きていけないわ」


 確かにそうだ。人間は一人では生きていけない。


 でももう麻美ちゃんの様に仲間がまた一人傷つく事を考えると、僕達はもう二人でいるしかないのかもしれないし、僕も小百合さんもお互いに別れた方が良いんじゃないかと思ったが、それはしてはいけないことだと思っている。


 人間は一人では生きていけない。駒木根の奴はきっと僕達の仲間をむしばむように傷つけてさせようとしている。


 でも駒木根がやったという証拠はないし、警察に訴えたって、奴の親父は市議会員であるから、僕達が何をしようとしてもすべてもみ消されてしまう。


「僕達は無力だ」


 そう言いながら僕は小百合さんに弱音を吐いたのであった。


「純君、亜希子お母さんが言っているでしょ。自分を責めたって何もならないって」


「じゃあ、どうすれば良いの?きっと駒木根がやったなら、僕達と関わっている剛君達や英明塾の人達にその刃は向けられるかもしれないんだよ。そうなったら僕は・・・」


 涙がこぼれ落ちそうな時、小百合さんは僕の唇を重ねて来た。


 そして僕と小百合さんは恋人同士でしか出来ない事をしたのであった。


 そうだ。僕は一人じゃないんだ。そして一人になっては決していけないのだ。


 決して・・・。

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