忍び寄る悪意
お母さんや小百合さんそれに剛君達と英明塾のみんなと出会って僕と小百合さんは幸せな毎日を送ることが出来た。
だがそんな僕達に忍び寄る悪意が飛び込んで来ようとは思いもしなかった。
まだ、僕達はその悪意の気配すら感じていない。
その悪意を向ける者は僕達が幸せな毎日を送る事を好ましくないと思っている。
どんな事でも真実をねじ曲げて正当化してしまう悪魔の様な少年課の刑事がいる。
その者は、まだ僕達に真実ではない悪意に満ちた物を向けそれを正当化しようとしている。
またその犠牲者が一人現れた。
署の部屋で取り調べをされている人物、名前は分からないがその者はすべてを正当化させてしまう刑事の被害者だった。
「お前が篠原文行の腕を折ったんだろ」
すべての真実をねじ曲げてすべてを正当化させてしまう少年課の蔵石努。
「僕はそんな事はしていない。すべてでたらめだ!!」
「篠原先生はそう言っているよ。お前がやったのだと」
「僕はやっていない。僕がそんな大人の腕を折るような事はしていない」
「おかしいなじゃあ、誰がやったと言うの?」
「分かりませんが僕はそんな事をしていません!どうして信じてくれないんですか!」
「何を言っているの?この世に真実が二つ三つあるはずがないんだよ!!」
そう罵って、少年の頭に頭突きをかましたのだった。
「僕じゃない。僕はそんな事をしていません」
「じゃあ、誰がやったと言うのだ?」
その少年は誰が篠原文行の腕をへし折ったのかおおよその見当はついているが、名前を出せばもっと酷い目に会うことを彼は知っている。だから彼は言うしかないのだ。「分かりません」と。
「君が篠原文行の腕を折った所を防犯カメラがあるんだけれども、見せてあげようか?」
「じゃあ、見せてくださいよ」
「お前いい加減にしろよ。このまま長引くと君の人生に傷がついてしまうよ!」
そう言って蔵石はその少年の頬を思い切り叩いたのだった。
するともう一人の刑事が、
「おい、顔はやめておけ」
そう聞いた蔵石は少年に腹や背中など見た目では分からない所を殴り続けた。
そして少年は泣きながら訴える。
「僕はそんな事はしません。信じてくださいよ」
「何度も言わせるな、この世に真実が二つや三つあるのがおかしいだろ!」
そう罵りながら、少年に鳩尾に拳を突きつけた。
「僕はやっていませんよーーーー」
そう言いながら少年は泣き出してしまった。しかもお漏らしまでしてしまった。
「本当にガキって小便臭い奴だな!」
そう罵りながら厚底のブーツで彼の股間を蹴り上げた。
「僕は何もしていない」
「認めちまえよ。これ以上暴力は振るわれたくないだろ」
「証拠があるんですか?」
「あるよたくさん」
「じゃあ、その証拠を見せてくださいよ」
「分からないガキだな、これ以上俺を怒らせたいのか?この小便小僧が!」
「ぼ、僕は何も知らない、篠原先生の腕を折ったりはしませんよ」
「今認めれば、お前は少年だ。少年法で腕を折った位じゃ、少年院には行かないよ。だから素直になれよ。篠原文行の腕を折ったのはお前なんだろ。証拠は山ずみになっているんだよ」
「だから何度も言っているじゃないですか。僕がやったという証拠を僕に見せてくださいよ」
すると蔵石は、
「お前に見せる物なんて何もないんだよ。だから認めちまえよ。そうすれば、お前は少年法で守られるから。もしお前が裁判を行ってその嘘の証言をしたら、偽証罪で前科が渇せられるぞ」
「僕は嘘をついていない、だから刑事さん。僕は何もやっていない」
すると蔵石は鳩尾に拳を突きつけた。
「聞こえないな、もう一度言ってごらんよ」
「やってません」
また鳩尾に拳を突きつけられる。
「こほっこほっ!やっていません」
「聞こえないな。はっきり言ってしまえよ」
するとまた再び、少年の鳩尾に数回拳を突きつけられる。
「やってません」
「聞こえないな?」
そう言って少年課の蔵石は少年の脇腹に蹴りを入れるのであった。
すると別の刑事が「おい。蔵石、もうやめとけ、とりあえず、話は今度また聞くことにする。今日の所は返してやれ」
「いや、待ってくださいよ。課長、こいつに真実を聞くまでは返すわけにはいかないですよ」
「僕は・・やって・・いない」
「お前みたいな嘘を突き通す奴は初めてだよ。でもこれ以上嘘をつくと少年院で臭い飯を食うことになるぞ」
「何なの?僕は何もしていないのに、どうして僕が篠原先生の腕を折ったことになっているの?」
「それはなあ」
蔵石はにっこりと笑って、
「お前の普段の行いが悪いからだよ!!」
「僕は普段から悪いことはしていません」
すると蔵石はその少年の胸元を掴んで腹部に思い切り拳を突きつけた。
「ぶはっ」
と嘔吐する少年。
「汚えなこのくそガキがよ!」
そう言って蔵石は腹部を思い切り蹴り飛ばして、少年は気絶してしまった。
「おい!蔵石やり過ぎだぞ。この事が公になったら俺達がただじゃ済まなくなってくるぞ」
「大丈夫ですよ。こいつの遺書を偽造させて、自殺に見せつけますから」
「そんな事をして何になると言うんだ。これで何回目だと思っているんだ。そこまでしてその少年を教師の腕をへし折った事にするのか?」
「はあ?何を言っておられるのですか課長、俺達にはあの人がいるじゃありませんか」
「それもそうか。またあの方の力を借りましょうか」
「ですよ、ですよ。こんな小便臭いガキが死んだって親が悲しむだけで、太陽が消される訳じゃないし、地球が滅亡する事じゃないし、それに俺達にはあの人がついているんだから、俺達のせいにはさせられなくなってきますよ」
「そうだな」
「そうして俺が課長になって課長の宮森さんは部長になれるわけですよ。俺達が目を付けた連中はみんなこの通り、真実に変わってしまうのだから大丈夫ですよ」
「お前も悪い奴だな」
「課長こそ悪い奴ですよ。俺達は国家の番犬じゃ、済みませんからね」
そして少年は意識を取り戻した。
「よう、ガキ、これ以上酷い目に合わされたくなかったらちゃんと真実を語れ」
そして少年は暴力に耐えきれず、真実ではない証言をしてしまった。
「はい。僕がやりました。篠原先生の腕をへし折ったのは僕です」
「よし、よく言えたじゃないか!それと俺がお前に暴力を振るった件だけれども、もし誰かに話したらどうなるか分かっているよな?」
「はい」
不服そうに返事をする少年。
「あれー聞こえないな、もっとはっきりと言ってくれないと分からないよ」
「はい!」
不服の返事を吹き飛ばすかの様にきっぱりと答えた。
「良く出来ましたね。お腹すいてないか?昼から取り調べで疲れているだろう。それに痛い目にもあったしな、これからちゃんと真実を吐いて貰うから飯食ったら、始めるからな」
と蔵石はにこやかに笑いながら優しい口調で言ったのだった。
一人の少年の力では皆無で真実を曲げてでも嘘を真実に変えてしまう蔵石。
その糸を引っ張っている者がいる。
それは駒木根弘十歳。
彼の担当の教師である篠原文行の腕を折ったのは彼だ。
彼には嘘の証言を真実に変えてしまう力を持っている。
その矛先が僕達、小百合さんやお母さんに剛君達、それに英明塾にいる人達に向けられる事を今の僕達には分からなかった。
駒木根には恨みを持った人物がいる。
それは小百合さんと僕だ。
僕と小百合さんは最近視線を感じると思っていたが気のせいだと思って見過ごしていたが、それは気のせいではなかった。僕達にさらなる悪意をぶつけようとしている駒木根弘十歳だ。




