絆
お母さんが過労で倒れてしまった。
僕と小百合さんは共にお母さんの看病に務めるのだった。
「あら、小百合ちゃん、どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないですよ。いつもいつも翻訳家の仕事と剛君達にバスケを教えて倒れたそうじゃないですか」
「ちょっと無理をしちゃったかもしれないね。でも大丈夫よ。私はそんなに柔な亜希子お母さんじゃないから」
「何を言っているんですか?とにかく今日の所は休んでください」
「それじゃあ、お言葉に甘えちゃおうかしら」
「とにかく亜希子お母さんは今日は休んでいてくださいね」
「あなた達、勉強と小説はどうするの?」
「そんなの決まっているじゃないですか、亜希子お母さん。勉強と小説はどこでも出来ます。今日は亜希子お母さんを看病しながら、私と純君は小説と勉強をここでする事にします」
さすが小百合さんナイスアイディアだ。
「じゃあ、小百合さん。お母さんは僕の部屋で眠っていて貰うから、僕と小百合さんはお母さんを看病しながら勉強と小説を僕の部屋でしよう」
そうだ。勉強と小説はどこでも出来る。
僕と小百合さんは早速僕の机で勉強と小説を進めるのであった。
こうして僕と小百合さんはいつものように勉強と小説を進めるのであった。
もしかしたらお母さんも暢気に眠ってはいられないかもしれない。だって翻訳家の仕事は山ほどあるのだから、おちおちしていられないだろう。
でも今日だけでもお母さんを休ませてあげたいと思っている。
仮にお母さんが仕事が出来なくなってしまったら、誰がお母さんの翻訳家の仕事をするのか。僕達の頭では出来ない事だろう。
それに剛君達のバスケと少林寺拳法を教えているんだ。
子供になったお母さんは、剛君達となじむ事が出来て、それは本当に良いことでお母さんも喜んでバスケや少林寺拳法を教えているのだろう。
僕と小百合さんは勉強と小説を進めながら、没頭しているとお母さんが起き出した。
「どうしたの?亜希子お母さん」
僕も心配になってお母さんを見つめる。
「ちょっとトイレよ」
「トイレなら仕方がないか」
僕と小百合さんは勉強と小説に没頭している。
そこで時計を見てみると、お母さんがトイレに行ったのは十五分前だった。
「ねえ、小百合さんお母さん遅くない?」
「それもそうね」
そう言って僕と小百合さんはトイレを除いて見ると、お母さんの姿はそこにはなかった。
するとリビングからカタカタカタといつものお母さんが翻訳家の仕事をしている音が聞こえてきた。
僕と小百合さんはリビングに行き、お母さんがリビングで翻訳家の仕事をしていた。
「何をしているんですか?亜希子お母さん」
無理をしているお母さんに対して小百合さんはご立腹の様だ。
お母さんの顔を見てみると凄く真っ赤になっている。
「お母さん、いくら僕を養うためだとはいえ、とにかく無理しないでよ」
「純君、お母さんは無理なんてしていないよ。とにかく今日中にこの翻訳をしておかないとアウトになってしまうから」
そこまでお母さんは追い詰められていたのか。
僕はそんな無理してまでしなきゃいけない事に僕はお母さんをどうする事も出来ないのか?このままではお母さんは倒れてしまう。それだけは避けたいと思っている。
「とにかくお母さん。無理しないでよ」
「何を言っているのよ。お母さんを誰だと思って、い・・る・・の」
お母さんは明らかに無理をしている。
このままではお母さんが無理をして倒れてしまう。どうすれば良いのか今の僕には分からなかった。
「純君、そんな顔をしないの。お母さんはね、純君を養うために命をかけているのだから」
「そんな、命をかける程までに僕はお母さんを無理をさせたくないよ」
そう言って僕はお母さんを抱きしめた。
お母さんは僕のたった一人の肉親だ。お母さんがいなくなってしまったら、僕は生きていけなくなるし、剛君達と同じ立場になってしまう。
「純君、離してくれないかな?そうしないと、純君を養う事が出来なくなってしまうでしょ」
「お母さん、そんなにしてまで僕はお母さんを無理させたくない」
するとお母さんは少林寺の技で手込めにされてしまった。
「とにかく純君は自分の勉強と小説を進めていれば良いのよ」
「ちょっとお母さん、この技解いてよ。とにかくお母さんは今日の所は眠っていてよ」
「ダメよ純君。お母さんは純君を養うためにやらなきゃいけないことがあるの。だから今日は眠ってなんかいられないよ」
お母さんはすぐに技を解いてくれて、その隙に僕はお母さんを羽交い締めにした。
これならいくら少林寺拳法四段のお母さんでさえ、技を仕掛ける事は出来ないだろう。
僕は力いっぱいお母さんを羽交い締めにして、そのままお布団の部屋(僕の部屋)まで連れて行った。
「ちょっと純君離してよ。お母さんはこれをやらなきゃ、ご飯を食べてはいけなくなっちゃうのよ。それでも良いの?」
「締め切りは今日までじゃないでしょ。とにかく無理することは僕と小百合さんが許さないから」
「・・・」
お母さんは観念してくれたのか、僕と小百合さんの言うとおりにしてくれた。
そうだ。今日の所は休ませないといけない。
風邪は万病の元と言うから、これでお母さんが無理をしたら、僕は一人ぼっちになってしまう。それだけは嫌だ。
とにかくお母さんは大人しく眠っていてくれた。
お母さんはまた無理をして、剛君達の所に行ってしまうかもしれないので、僕はスマホで施設に電話をかけた。
光さんが出て、事情を説明して、今日は剛君達にバスケを教える事は出来ないことをちゃんと伝えて置いた。
僕達も勉強どころじゃなくなった。とにかくお母さんが治るまで僕と小百合さんは二人でお母さんを看病した。
「純君、そろそろお昼だね。私お粥作れるから、亜希子お母さんの事をよろしく」
そんな時、チャイムの音がした。
こんな時間にセールスかと思いきや、剛君に明に凛ちゃんにあっ君に麻美ちゃんだった。
「みんなどうしたの?」
「亜希子お母さんが病気で倒れたと聞いて俺達は来た」
剛君がそう言うと、僕の胸は最高潮に熱くなった。
「狭いところだけれども上がってよ」
「「「「「お邪魔します」」」」」
そう言って剛君達はお母さんのところまで連れて行った。
「亜希子お母さん。大丈夫ですか?」
剛君が言うと、明が、
「ちょっと剛声がデカいよ。亜希子お母さんがびっくりするじゃない」
「悪ぃ」
「とにかく亜希子お母さん。これは私達からの贈り物」
そう言って明は桃缶を取り出した。
「明ちゃんにみんな、来てくれたんだ。本当にありがとう」
「お礼を言いたいのは私達の方なんですが」
「じゃあ、剛君達、今日もバスケの練習に付き合ってあげるわよ」
「何を言っているんですか亜希子お母さん。風邪なのに剛みたいに亜希子お母さんは単細胞じゃないでしょ。だからここは眠っていてください」
そこで小百合さんがお粥を作って来てくれた。
「亜希子お母さん、お粥を作ってきましたってあなた達、来てくれたの?」
「おう、小百合さんじゃん。とにかく亜希子お母さんの事は聞いたよ。俺達はいつも亜希子お母さんに世話になっているから、俺達にも出来る事なら何でも言ってくれ」
「分かったわ。ありがとうみんな」
小百合さんも剛君達の行為に胸が熱くなっているんじゃないかと思った。
これが本当の友情だと思っている。
この友情はお金では買えない物だ。それほどまでにお母さんはみんなに愛されているのだと思うとさらに胸が熱くなる。
「みんな静かにね、亜希子お母さんを安静にさせなきゃいけないんだから」
小百合さんがそう言って、剛君が、
「分かっているよ」
親指を突き上げて言う。




