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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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めぐり逢えた奇跡

 僕と小百合さんは学校に嫌気がさし、そのまま学校をボイコットして図書館に向かった。


 図書館で小説を書いていると、僕のお母さんが現れて、僕達は学校がつまらないことを伝えた。


 するとお母さんは僕達にフリースクールを紹介してくれる事になった。


 フリースクールってどんなところだろう?


 そうしてお母さんが紹介してくれたのがフリースクール塾長の豊川先生だった。


 僕と小百合さんは豊川先生に事情を説明して英明塾に歓迎された。


「さあ、二人とも中に入りなよ」


 そこでお母さんは翻訳家の仕事と午後に剛君達のバスケットコーチをしないといけないからその場を去った。


 僕と小百合さんは何か緊張してきた。


 どんな人がいるのか想像すら出来ない。


 最初にパソコン室を紹介され、中に入ると三台のパソコンが設置されている。


「僕はねえ、いつも引きこもりの生徒達にメールでエールを送って引きこもりの人達に一歩進められるように毎日やっているんだ」


 引きこもりの生徒にメールでエールを送っているのか。


「君達はさあ引きこもりの人達が今どれぐらいの年をとっていると思う?」


「分かりません」


 と僕は答えた。


「中には五十代や四十代の人が引きこもっているんだよ」


 それを聞いて僕と小百合さんは大いに驚いた。


 四十代や五十代の人が引きこもっているなんて、それはもう人生捨てた物だと考えてかわいそうだとしか思えなかった。


「驚いたでしょ。でもここに来る人達は十代や二十代の人達がもっぱらだから安心して通うと良いよ」


 そして次にゲーム室を案内してくれた。


 中に入ると、十代の人達が三人いてゲームをしている。


「この子達はねゲーマーズと呼んでいる三人組のいつもゲームをしている人達だよ」


 ゲーマーズの三人は言う。


「何だ若い人が入ってきたね」「もしゲームがしたかったらウチらを頼りなよ」「ここには色々なゲームが置いてあるからね」


「はい」


 と僕は言っておいた。ゲームと言えば任天堂スイッチを持っているが最近やっていないな。

 そして学習室を案内してくれた。


 中に入ると先ほどの勝君と言った人と徳川さんと言う人が勉強をしていた。


「あの若い子が勝で、今年一浪して受験を控えているんだよ。それでこのお爺さんは六十になって東大を目指している人なんだよ」


 ここにも驚きがあった。六十になっても大学受験をするなんてしかも東大を目指しているなんて凄いと思った。


「まあ、僕の塾ではこれぐらいが紹介できる範囲内かな?後は自由にやっちゃってよ」


 そう言って、豊川先生は引きこもりの生徒達にメールでエールを送るつもりなのか?パソコン室に入っていった。


「純君、何か楽しいそうな所だね。ここ」


 とりあえず僕達二人は学習室の中に入り、小説と勉強を進める事にした。


 勝さんと言う受験生と高齢の徳川さんと言う人は凄い熱を出して勉強している。僕達も負けていられないと思って、二人に続くように、小説と勉強を始めた。


 凄い熱を感じる、それにあやかって僕と小百合さんは勉強を始めた。


 そうだよ僕達が求めていたのは学校でやる気のない奴の熱を感じても何もならないので、僕達は勝さんと徳川さんの熱を浴びていれば良いんだと思う。


 凄い熱だ。とにかく一気に進めてしまおうと思っている。


 そんな時、勝さんは一息つきたいのか、僕達に話をかけて来た。


「ねえ、君達は何の勉強をしているの?」


 勝さんは僕達のノートを見る。


「ほうほう分母の違う足し算をしているのか?察するに君達は五年生?」


「いえ、僕達は四年生です。とにかく勉強も大事ですし、小説も書いているんですよ」


「へえ、君達は一学年上の勉強をしているんだ」


 すると後ろで勉強している徳川さんが、


「何だ君達は一学年上の勉強をしているのか?」


 徳川さんは確か東大に行きたいと言っていたっけ。


「あのー徳川さん、どうして東大に行きたいんですか?」


「俺はあの赤門をくぐる事が夢なんだよ。だからこうして勉強しているんだよ」


「別にどこの大学でも良いんじゃありませんか?」


「いや東大は俺の憧れだよ。貧乏生活を余儀なくされて学校さえ行けなかった。だから大工一筋で子供も大学に行かせて今では立派な社会人にしてやったよ」


 そこで小百合さんが。


「立派なお父さんですね。そんな素敵なお父さんの子供の顔が見てみたいと思いますよ。こうして出会えたのは偶然ではなく必然なのかもしれませんね」


「お嬢さん面白いことを言うね、君達の名前は何?」


「僕は高橋純と申します」


「私が高岡小百合と申します」


 僕と小百合さんは一緒に自己紹介をした。


「ほう、君達は付き合っているのかね?」


「はい、付き合っています。純君と会えたのも素敵な必然だと思っています。私が純君に出会わなければこのような素敵な夢を追いかける事なんてなかった。まるで純君との出会いは奇跡その物で、私を素敵な未来へと誘ってくれるような人です」


「小百合さん、何恥ずかしい事を言っているの?」


「だって本当の事じゃない。こうして勝さんや徳川さんに先ほどのゲーマーズに出会えたのは偶然ではなく必然で、これも純君に出会わなければ、こんな奇跡はなかったと思うんだけれどもな」


 いつもの小百合さんとは違っていた。本当に小百合さんなのか僕は疑ってしまった。


 でも確かに小百合さんの言うとおりなのかもしれない。こうして色々な人達と出会う事で僕達の夢はさらに加速されて行くんだと僕は思った。


 そうだ。僕達がこうして出会えたのは奇跡その物かもしれない。


 そんな小百合さんは、


「徳川さんはどんな勉強をしているの?東大に行くんだからものすごい難しい問題をやっているんじゃないですか?」


「いやー君達に見せられる物じゃないよ。やっと中学の勉強に入った所だよ」


 東大を目指しているのに中学生の問題をやっているなんて、それは志望校を変えた方が良いんじゃないかと思ったがそれは口にしてはいけないと思って黙っていた。


 世の中には本当に色々な人達がいる。


「勝さんはどんな勉強をしているんですか?」


「普通に大学受験の問題をやっているだけだよ。とにかくまだ五月だ。焦らずに行きたいと思っている」


 どこの大学に行くのを聞くのは失礼だと思って聞かなかった。


「小百合さん。話はそれくらいにして、僕達も夢に向かってレッツゴーだよ」


「本当に君達が羨ましいよ」


 と徳川さんは言った。


 その事に対しては何の返答もなかったが、徳川さんも夢に向かって頑張っているんだと僕は思った。


 こんな高齢の人とそれに大学受験の為に頑張っている勝さんを見て、僕達の熱になってくれるだろう。それで勉強や小説の拍車がかかる。




 ★



 僕達は奇跡の出会いをして、勉強を共にする仲間達が増えて勉強にも小説にも拍車がかかるのだが、僕と小百合さんはお腹がすいてしまった。


 どうしよう。お昼が回ったと言うのに、お腹がすいては勉強も小説も捗らない。


「小百合さん、いったん僕達の家に戻ろうか?」


「そうねえ、お腹がすいたんじゃ、勉強と小説どころじゃないからね」


 そこで徳川さんが、


「よし!今日はこの俺がお昼ご飯をご馳走しよう」


「そんな、悪いですよ」


 僕が言うと、


「君達と出会ってこうして熱を感じながら勉強するのは良い刺激だ。だから今日は君達のお昼ご飯はこの徳川家康に任せてくれよ」


 徳川さんの名前って家康って言うんだ。まさかあの関ヶ原の戦いで天下を取った徳川家康と同じ名前とは正直に驚いた。


「君達、おいしいラーメン屋に連れてってあげるよ。それに勝君も」


「えっ僕も良いんですか?」


「ああ、今日はこの子達のこのフリースクールに来た奇跡に乾杯だ」


 乾杯だってまさかお酒を飲むんじゃないだろうなこの徳川家康さんは。

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