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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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蟠りを消す方法

 剛君達が見つけた秘密基地で僕は罪悪感にとらわれていた。


 それをお母さんが、『あまり気にしてはいけない』と言っていたが気にするなと言われると気にしてしまうタイプの僕だった。


 空は夕焼けに染まり今日と言う日が終わろうとしている。


 僕の心の中は罪悪感でいっぱいだった。


「ちょっと純君、まだ気にしているの?」


 小百合さんが麻美ちゃんの事を気にしているのが、ばれてしまったみたいだ。


 僕はすぐに感情が顔に出てしまうんだよな。


 このような時は僕は笑っていた方が良いのか?でも僕はもう演じきれないほどの罪悪感にとらわれている。


 とりあえず今日の所は基地を後にして、僕と小百合さんとお母さんは帰ることにした。


 帰る途中、お母さんは、


「小百合ちゃん、今日も泊まっていく?」


「是非是非」


 あー今日も小百合さんは泊まりに来るのか、そう思うとなぜか小百合さんに心配されないようにどんな顔をしていれば良いのか僕は迷った。


 僕は知らなかったとは言え、麻美ちゃんを傷つけてしまった。


 でも僕は知らなかったんだ。だから僕が気にすることじゃない。


 そう思って僕は小説の続きを書こうとするが、どうしても書くことが出来なかった。


 僕がこんなに気の弱い人間だと言うことに心底嫌になってくる。


「だーれだ」


 そう言って僕の目元を覆い隠して小百合さんがそう言った。


「何をやっているの小百合さん」


「純君が元気ないと私も元気が無くなっちゃうな」


「僕は元気だよ」


「嘘」


「だから元気だって」


「嘘、純君は麻美ちゃんに対して蟠りを感じている」


 何て鋭いんだ、小百合さんは。


「純君、今の気持ちを吐き出してご覧なさいよ。そうしたら、少しは気持ちが楽になるかもしれないよ」


 僕は大きくため息をついて、


「僕は麻美ちゃんを知らなかったとは言え、あんな状態にしてしまった」


「そうだよね。純君は人一倍優しい性格をしているから、その蟠りにとらわれているんだね」


「うん。そうだよ。この蟠りどうしたら晴れるか分からないよ」


 終いには僕は涙を流してしまった。


 すると小百合さんは僕を包み込むように抱きしめてくれた。


 そうされると僕の心の中にたまっていた物が一気に解放されるように、気持ちが楽になり、一気に涙がこぼれ落ちた。


 僕は小さな子供の様に泣いたのだった。


 小百合さんはそんな僕を優しく包み混むように抱きしめてくれた。


 すると僕の蟠りは一気に無くなって、僕は泣くことを止めて笑うことが出来た。


「僕ってこんなに弱虫なんだね」


「いいや、純君は弱虫なんかじゃないよ。純君の心は凄く洗練されていて、心が綺麗だよ」


「本当にそうかな?」


「そうだよ」


 小百合さんのおかげで僕の気持ちは落ち着いた。


 そうだ。僕は弱虫じゃない。それに一人じゃない。僕は強くはないけれど、こうして僕の心の蟠りを退治してくれる小百合さんやお母さんがいる。


「小百合ちゃん、純君、そろそろご飯にしましょう」


「そう言ってお母さんが台所から僕と小百合さんの名前を呼んだのだった」


「行きましょう純君」


 小百合さんに手を引かれて、でも僕はまだ涙目だった。こんな姿をお母さんに見せるわけには行かないので、僕は涙が乾いたら行こうと思ったが、小百合さんはそうはさせてくれなかった。


 そうして涙目のまま、僕はお母さんの前に立つことになった。


「あれ、純君どうしたの?何泣いているの?」


「・・・」


 僕は何て答えたら良いのか分からなくなる。


 すると小百合さんが事情を説明してくれた。


「なるほど、麻美ちゃんの件でまだ涙が乾いていなかったみたいね。純君、そう言う時はお母さんを頼りなさい。それと小百合ちゃん、ありがとね、純君の心の蟠りを解いてくれて」


 すると小百合さんは目を俯かせ、「私にもそう言った事がありましたから、分かるんです。だから純君の蟠りを解くことが出来たのです」


 小百合さんも蟠りを感じる時があるのか、蟠りと言うのは心の痛みであり、小百合さんやお母さんの様な人に言えば楽になれる事を知った。


 以前の僕は蟠りを感じた時、一人でトイレに入って泣いていたっけ。


 あの時は少しでもお母さんに見つからないようにしていたっけ。


 でもトイレで泣いていたら、お母さんに見つかって、トイレの鍵を壊してでも入ってきた記憶がある。


 お母さんは言っていた。悲しいならお母さんを頼りなさいって。


 そう言っていつだっけか?そのようにして抱きしめられて、お母さんの胸で泣いた記憶がある。


 それで気持ちが落ち着いた時がある。


 その時知ったんだ、僕は一人じゃないと、それと一人の無力さを。


 だから僕は悲しいときがあったときお母さんに聞いて貰うだけで心が楽になった記憶がある。


 僕は一人じゃない。こうしてお母さんや小百合さんに剛君達がついている。


 だから蟠りを一人で抱え込むんじゃなくて、誰かと分かち会えばその思いは強まる物だと。

 僕は小百合さんに心の蟠りを話して楽になれたし、涙は流してしまったけれど、これは喜びの涙だった。


 それよりも、また振り出しに戻ってしまうかもしれないが、悲しいのは僕だけじゃないんだよな。麻美ちゃんにあんな事を言って泣かしてしまった事もあるんだよな。だから悲しいのは僕だけではなく麻美ちゃんも同じなんだって気がついた。


 僕は考え事をしながら食事をしている。


 すると小百合さんが、


「また、純君蟠っているのね」


「どうして分かるの?」


「純君顔に出るからさ、すぐに分かるよ」


「そうなんだ」


「で、麻美ちゃんを悲しませた事にまだ蟠っているんでしょ」


 小百合さんには敵わないと思って首を縦に降った。


「大丈夫よ。麻美ちゃんには剛君達や、光さんがついているから、大丈夫よ。今頃、麻美ちゃんの悲しみをいやして貰っているのよ」


「そうだよね。麻美ちゃんは一人じゃないもんね」


 そう思うことで蟠りが一つ消えた様な気がした。


 僕はお母さんが悲しい顔や蟠った顔をした所を見たことがない。


「お母さんは悲しいことや辛いときはないの?」


 するとお母さんはすぐに「ないよ」と言った。


「どうしてないの?」


「それは教えられないな」


「教えてよお母さん。お母さんも人間なんだから悲しいことや辛いことがあって当然だと思うんだけれども」


 そうだ。お母さんは見た目は子供だけれども、頭脳は大人なのだ。だから知っているはずだと僕は思った。


 何度も聞いてみたけれども、お母さんは教えてくれなかった。


 でも小百合さんは何となくだが分かっているような気がした。


 小百合さんはお母さんの前では言えないけれども、僕と二人きりになったら教えてくれるかもしれない。


 食事が終わり、僕と小百合さんとお母さんで後片付けをした。


「別に小百合ちゃんや純君にやって貰う必要はないと思うんだけれどもな」


 と言っているけれども、お母さんはいつも重労働をさせてしまっている。


「そんな事、言わないでくださいよ。私も純君も亜希子お母さんが少しでも楽が出来るようにしたいですから」


「ありがとう小百合ちゃん」


「また今度、亜希子お母さんお料理を教えてくださいよ」


「じゃあ、明日の朝ご飯を一緒に作りましょう」


 その後の事だった。


 僕が一人でお風呂に入っていると、小百合さんとお母さんは勝手に入ってきた。


「ちょっと二人とも僕がお風呂に入っているときに入ってこないでよ」


「まあ、良いじゃない。純君と小百合ちゃんともっと親睦を深めたいと私は思っているのだから」


 僕はいつもの事だと思って、ため息を一つついて、天井を見上げた。


 すると先ほどまで感じていた蟠りがすぐに消えた感じがした。

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