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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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気にするな、と言われても気にしてしまう僕

 僕とお母さんと小百合さんで剛君達の所に行ったところ、剛君達は中学生ぐらいの人達に絡まれていた。


 でも剛君達はお母さんから教わった少林寺拳法で中学生三人を撃退したのだった。


 それで剛君達はお母さんに叱咤されて、反省する。


 その事を秘密基地にいる麻美ちゃんに話したら、凄く動揺して取り乱してしまった。


「落ち着いて麻美ちゃん」


 麻美ちゃんは深呼吸をして落ち着いてくれた。


 僕は思った、麻美ちゃんには何か心に黒い物があるのだと。


 その事を聞いて見たいと思ったが、余程思い出したくない内容だと思って聞かなかった。


 麻美ちゃんは胸に手を当てて、深呼吸を何度も繰り返している。


 麻美ちゃんの前ではこう言った暴力の類いの話はタブーだと感じて、とりあえず麻美ちゃんの涙が止まるまで、僕と小百合さんは近くで麻美ちゃんを見守った。


「大丈夫だよ、麻美ちゃん。誰もあなたの事に暴力なんて振るわないから」


 小百合さんは優しい目で麻美ちゃんを見つめて、落ち着かせている。


「みっともない所を見せてしまったわね」


 と麻美ちゃんは言う。


 その事に対して僕達は何を言えば良いのか言葉に迷ってしまう。


「私は麻美ちゃんの味方だよ。だからそんなに怯えなくても良いんだよ。麻美ちゃんをいじめる人に対して私達が全力で阻止するから」


 すると麻美ちゃんは両耳を塞いで、


「もう喧嘩の話は止めて!!」


 僕と小百合さんはもう何も出来なかった。


 そうだ。ここは施設長の光さんを呼んだ方が良いと思って僕は小百合さんに麻美ちゃんを見守っていてくれと言っておいて、僕は剛君達を養っている施設へと自転車を漕いで行った。

 自転車を漕ぎながら僕は麻美ちゃんにあんな話をするんじゃなかったと今更ながらに思った。


 とにかく施設長の光さんは麻美ちゃんの理解者だ。きっと麻美ちゃんの事情を知っていると思っている。


 そこで思ったが、まず剛君達に相談すれば良いと思ったが、そう思った時にはもう遅く僕は施設の近くに到着している。


 そう思いながら自転車を漕いでいると、剛君達の施設の到着した。


 施設は改めて見ると、立派な教会だった。


 教会の中に入ると、施設長の光さんが祈りを捧げていた。


 そう言えば、光さんがお祈りをしている時は話をかけてはいけないルールだと剛君達が言っていたっけ。


 でも今はそれどころじゃないので僕が声をかけようとすると跪いてお祈りをしている光さんが立ち上がった。


「あの、光さん」


「あら、あなたは確か、純君と言いましたね」


「はい僕は高橋純です」


「今日はどういった用事でこちらに来られたのでしょうか?」


 僕は麻美ちゃんの事情を説明した。


「なるほど、それは私が行かなくてはいけないみたいですね」


「はい、麻美ちゃん、凄く取り乱してしまいまして」


「じゃあ、純君、私を麻美の所まで案内してください」


 施設長の光さんは相変わらずに僕達と同じような若さを醸し出している。それにお母さんに少しだけ似ていた。もしかしたら光さんもお母さんと同じような不思議な現象に陥ったのかもしれないと思ったが、今はそんな事はどうでも良い。とにかく光さんを麻美ちゃんの元へ案内してあげなきゃいけないと思った。


 光さんも自転車で行くのか、僕は外で光さんが出てくるのを待つことにした。


 すると光さんはオートバイを持ち出して、それに跨がり、


「純君、麻美の所まで案内して」


 そう言われて僕は麻美ちゃんがいる僕達の秘密基地の廃バスまでつれて行くことにした。


 光さんはオートバイだ。僕は自転車だ。


 光さんはゆっくりとオートバイを走らせて僕の後についてくる。


 そして僕達の秘密基地の廃バスまで到着した。


「ここです。光さん」


 光さんは僕達の秘密の基地に入ると、麻美ちゃんは光さんにすかさず抱きついたのだった。

「光さん」


「大丈夫だよ。ここには麻美に暴力を振るう輩なんていないから安心して」


 どうやら麻美ちゃんは光さんの事を信頼しているみたいだ。


 きっと麻美ちゃんの事情も知っているのだろう。


 そこで剛君達とお母さんが秘密の基地までやってきた。


「光さん」


 剛君が言う。


 みんなどうしたの?と言うような顔をしている。


 そして光さんが口を開く。


「あなた達、とにかくいつも言っているでしょ。喧嘩は良くないって。特に麻美に暴力沙汰の事は話してはいけないって」


 そこで僕が、


「違いますよ光さん。暴力沙汰になった事を言ったのは僕です」


「なるほど、麻美の事情を知らなかったのは仕方がない事ね」


「知らなかったとは言え、申し訳ありません」


 と頭を深く下げて謝った。


「麻美もこんなに思われる人が友達だと安心しない?」


 光さんが言うと麻美ちゃんは、


「うん」


 小さな声と共に頷いた。


「それじゃあ、麻美、今日の所は帰りましょう」


 そう言って光さんは麻美ちゃんの手を引いた。


「・・・」


 麻美ちゃんは黙って光さんの言うとおり、手を引かれて廃バスの外へと行って、光さんのオートバイの後ろに乗って帰って行った。


 光さんは剛君達に、


「あなた達もすぐに帰りなさいよ」


 と言って光さんは麻美ちゃんの後ろに乗って教会まで帰っていったみたいだ。


 それを見送った僕は罪悪感でいっぱいだった。


 するとお母さんが、


「麻美ちゃんに何があったの?」


「先ほど剛君達が中学生を撃退したことを話したら、怯えて泣きわめいて取り乱してしまったんだよ」


「剛君達は麻美ちゃんの事に関して何か知っているの?」


 そこで明が、


「知っているよ。麻美は親に虐待を受けて、それに耐えきれずにうちの施設に来たのよ」


 虐待かあ、僕はお母さんに虐待など受けた事がないのでその気持ちはあまり分からないのかもしれない。


「その他にも色々な事情があるみたいよ、その事関しては光さんが良く知っているからね」


 明が深刻そうに言う。


 そこで剛君は、


「とにかく麻美の事は置いといて、バスケの練習に入ろうぜ」


 すると明が、


「何をそんな暢気な事を言っているのよ、仲間が大変な事になったんだよ。バスケの練習どころじゃないわよ」


「何を言っているんだよ、確かに麻美の奴が大変な事は分かったよ、だからって俺達までブルーになったら麻美に悪いだろ」


「まあ、確かにあの子は人に気を使われるのが嫌だったわね」


「そうだよ、だから俺達は麻美の分まで頑張らないと」


「そう言いたいところだけれども、今日の所はお開きにしましょう」


「明がそう言うならそうだな、仕方がないな、仲間があんな目にあってしまったんだからな、でもあいつ凄く人に気を使われるのが嫌なタイプで気難しい奴だからな」


「だから、単細胞の剛、私達で陰で見守っていれば良いじゃない」


「陰で見守るか、じゃあそうするか」


 そこで小百合さんは、


「私達も出来る事があったら遠慮なく言ってね」


「おう、その気持ちだけ受け取っとくよ、とにかく麻美の前では暴力沙汰のことはタブーにして欲しい」


 剛君にそう言われて僕は罪悪感でいっぱいだった。だから、


「ごめんなさい。僕があんな事を言ってしまったから」


「確かに原因は純君にあるかもしれないけれど、お前は知らなかったんだから仕方がないよ。だから、あまり気にするなよ」


 そう言って剛君達は僕と小百合さんとお母さんに挨拶をして、帰って行った。


 秘密基地に残されたのは僕達は外に出て、お母さんはママチャリに乗って僕と小百合さんは二人乗りして自宅へと帰って言った。


 お母さんは、


「とにかく純君、あなたは知らなかった事だからあまり気にしちゃダメよ」


 気にするなと言われても僕は気にしてしまう。

 

 この蟠りは消えないのだろうな。

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