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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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一人の無力さ、でも僕は一人じゃない

 僕と小百合さんは、少林寺拳法で中学生三人をのして、僕は理性を無くして殺そうとしてしまった。


 でも小百合さんの呼びかけに僕は思いとどめて、殺さずには済んだ。


 僕は世の中で弱い物いじめが一番嫌いな事だ。


 それでその事をお母さんに言ったら叱責を受けて自宅謹慎になってしまった。側には小百合さんも僕に付き合ってくれた。


「純君、弱い物いじめが嫌いだとしても、あそこまでやらなくても良いと思うよ」


 僕は小百合さんに言われて自分の事が怖くなってしまった。


 あのままだったら、本当に人を殺してしまうところだった。


 僕は弱い物いじめがこの世の中で一番嫌いな事だ。


 だからってあんなになるまで痛め付けなくても良いと思っている。


 あの時小百合さんが止めてくれなかったら、僕は駒木根達を殺してしたかもしれない。


 弱い物いじめと聞くと、僕は許せない気持ちになってこの僕に流れている血潮がそうさせてしまうんだ。


 本当に僕が人を殺したら、お母さんにも迷惑がかかってしまう。


 僕が不安に思っていると、小百合さんが僕の手を重ねて来た。


「不安を感じるのは分かるけれども、とにかくそんなに恐れないで、私は純君がたとえ、離れ離れになってもいつでも私は純君の味方だから」


「そう言ってくれるのは小百合さんだけだよ、もし僕が殺人者になってしまったら、僕は立ち直れないよ」


「大丈夫、それでも私は純君の側にいてあげるから、大丈夫だよ」


 小百合さんはその大きな瞳を突きつけて、僕に言う。


 何て優しい目なんだろう。こんな人が僕の彼女だなんて思うと僕は幸せを感じたのだ。


「純君」


 そう言って、小百合さんは目を閉じた。


 小百合さんは僕にキスをせがんでいた。


 これが僕と小百合さんのファーストキスだ。


 そう思いながら、僕と小百合さんは唇と唇を重ね合わせたのだった。


 それだけで幸せだった。僕は犯罪者にならずに済むかもしれない。


 僕には小百合さんという彼女がいる。だから、僕は小百合さんに守られてばかりの自分にはなりたくない、互いに助け合い、苦労を共に出来るような仲になりたい。


 小百合さんとのキスは僕を幸せへと誘ってくれる物だと思った。


 小百合さんとキスをした後、少しだけ、キスの余韻を心にかみしめていた。


 でもそんな幸せな余韻はすぐに無くなり、とりあえず、僕と小百合さんは今日出た、宿題をやることにした。


 宿題は漢字の書き取りと、算数の分数の足し算だった。


 何かこうして二人で過ごしていると、僕は大変幸せな感じになってくる。


 一緒に勉強をしていると、なぜか互いに負けてられないという気持ちにもなってくる。


 そうだ。小百合さんは僕の恋人であり、心の支えである、ライバル同士でもあった。


 それと僕達が宿題を終えると、僕と小百合さんは互いに小説を書くことになった。


「やっぱり小百合さんも小説を書いていたんだね」


「純君こそ、小説を頑張っていたんだね」


「じゃあ、互いに熱を出し合い、小説を書こうよ」


「そうね。私達は恋人同士であるライバル同士でもあるのだから」


 そうだ。この熱を出し合って小説を書くことは本当に楽しいと思っている。


 本当に僕達は小説家になれるんじゃ無いかと大言壮語の様な事を思ってしまう。


 駒木根を殺そうとしたのが何だ。そんな事どうでも良いじゃ無いか。


 僕はこうして小百合さんと熱を出し合いながら書く時の小説が楽しいとさえ思ってしまう。

 僕は一人じゃ無い。


 僕は知っている。一人の無力さを。


 でも今は僕は無力なんかじゃ無い。


 きっかけはお母さんが子供になってだけれども、僕は楽しい時間を過ごしていると思っている。


 そんな二人で、熱を出し合いながら、小説を書いていると時間なんてアッと言う間に過ぎてしまい、お母さんが帰ってきた。


「純君、亜希子お母さんが帰ってきたみたいだね」


 僕はお母さんに対してどんな顔をしてえいれば良いのか後ろめたさを感じてしまう。


「純君、良い子にしていた」


「していましたよ。亜希子お母さん」


「そうか小百合ちゃんも一緒だったかあ」


「私が一緒だと悪かったですか?」


「いやむしろありがたい事だよ。私は剛君達にバスケや少林寺拳法を教えてあげられたのだから、本当は私が純君の側にいてあげないといけないと思ったから」


「僕は一人でも大丈夫だったよ」


 僕が言う。


「何を言っているのよ、私がいなければ純君痛めつけた三人に対して後ろめたさを感じていたじゃない」


「まあ、とにかく純君は反省しているみたいだから、良いでしょう。小百合ちゃん今日もご飯食べて行きなさい」


「良いんですか亜希子お母さん」


「純君の将来のお嫁さんになる事に対して、私はこれぐらいの事しかできないけれど」


「そんな将来のお嫁さんだなんて・・・」


 顔を真っ赤にしている小百合さん。


「今日はロールキャベツよ」


「小百合さん。ロールキャベツだって」


「亜希子お母さんの作った物は何でもおいしいから良いのよ」


「それもそうだね」


 僕は今日、小百合さんがいなければ、駒木根の兄貴の連中を殺すところだったかもしれない。いやもしかしたら殺人未遂で逮捕されてしまうんじゃないかと思った。


 そう思うと僕は恐れおののいてしまう。


 僕と小百合さんはお母さんが作っている間、小説を描いていた。


 すると僕の頭の中では小説どころじゃ無かった。


 弱い物いじめは許せない。弱い物いじめは許せない・・・・。


 と頭の中でリフレインしてしまい、ここで僕はそんなことの理由で殺人未遂をしてしまったのだ。


「どうしたの純君、顔が真っ青よ」


「そうかな、ちょっと気持ちを落ち着かせるためにお水を飲んでくるよ」


 僕は洗面所まで行って、お水を一杯飲んだ。


 少しだけ気持ちが落ち着いた。


 とにかくみんなに心配はかけられない。


 でも僕は一人じゃ無い一人じゃ無い。


 すると後ろから、僕の背中越しに抱きついてくる感触がした。


「純君、あまり自分を責めないで。私は純君の側にいつでもいるよ」


 すると僕の目から大量の涙がこぼれ落ちて来た。


「そうだよね。僕は一人じゃ無いもんね」


「そうだよ。純君は一人じゃ無いよ」


 このシャンプーの匂い、小百合さんが僕を心配して、僕の所に駆けつけてくれたのだ。


 小百合さんは僕の不安や悲しみに駆けつけてくれたみたいだ。


 いつまでもこうしていたい。でもそろそろ夕食だ。


 夕食の時お母さんはにっこりとしていた。


 その笑顔を見れるのは僕が一人じゃ無い事の理由である。


 僕は知っている本当に一人になり自分自身を見失ったら最後だと。


 そうならないように僕は小百合さんや剛君にあっ君に明に凛ちゃんそれに麻美ちゃんやお母さんといつまでも一緒にいたい。


 大人になってもこうしてまだ夢を追い続ける仲間でいたい。

 

 お母さんはニコニコしながら、僕の所に視線を向けている。


 そんな風に見つめられると、何か安心してしまう。


 そうしてメインディシュッのロールキャベツを食べると涙がこぼれ落ちてきた。


「どうしたの純君?」


「いや、何でも無い。ただ僕は一人じゃないんだもんね」


「当然よ。あなたは一人なんかじゃ無いわ」


「そうだよ純君。私もついているからね」


 何かの歌で僕は思い出した。


 悲しいときがあったら、楽しいことが待っていると。


 それに一人ぼっちの時でさえも誰かが僕の事を見ているって。


 今日の事に関して、僕は本当に悪いことをしたと反省させられる。


「ゴメンね小百合さんにお母さん。いくら弱い物いじめがいけないからって暴力を加えてしまったらいけないよね」


「もう、純君は充分に反省しているじゃ無い。それに弱い物いじめを撃退したなんて凄いことだと思うよ」


 とお母さんは言う。

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