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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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亜希子お母さんが言いたかった事

 今日は待ちに待った僕と小百合さんと麻美ちゃんの小説が一番面白いかをお母さんに判定して貰える日だ。


 でも僕は気がついてしまったんだ、きっとどの小説も面白いことを、小百合さんは判定を気にしているように見えるが、僕はそんな事は関係ないと思っている。


 つまらない学校が終わって、僕と小百合さんは家に帰り、小百合さんはランドセルを一度自分の家に置いてから僕の家に来た。


 小百合さんは緊張しているのだろう。小百合さんは小説で僕達三人の中で一番を狙っているからだ。


「亜希子お母さーん」


 と呼んで、お母さんの返事はなかった。


「あれ、亜希子お母さんはどこに行ってしまったのだろう?」


「きっと剛君達の所に行ってバスケでも教えているんじゃない」


「だったら今すぐに剛君達の所に行くよ」


 どうやら小百合さんは僕達三人の中でどの小説が面白かったかを一番知りたいと思っている。


 僕はどの小説も面白いと思っていてそんなのに競い合わせるのはいけないと思っている。


 その事を小百合さんに伝えたかったがタイミングが合わずに言う事が出来なかった。


 僕が漕ぐ自転車で小百合さんは早く結果が知りたいのか?「純君急いで」と急かすように言う。


 剛君達の所に行くと、今日はお母さんはいなかった。


「剛君、お母さんは?」


「ああ、亜希子お母さんからの伝言で秘密の基地で待っているって」


「分かったありがとう」


 そう言って秘密の基地へと僕と小百合さんは自転車で二人乗りして向かった。


 秘密の基地に到着すると、お母さんと麻美ちゃんが中にいた。


 中に入ると、お母さんが、


「待っていたわよ二人とも」


 そこで麻美ちゃんが、


「ほら、亜希子お母さん、誰が一番面白い小説を書いたか教えてくださいよ」


「まあ、待ってよ麻美ちゃん。とりあえず三人とも後部座席に座ろうか」


 僕達三人はお母さんに言われた通り後部座席に座った。


「とりあえず、三人の小説を見せて貰ったけれども、どれも素晴らしい物だと思っているよ。本当に小学生が書いたような小説とは思えないほどの面白さだったよ」


「それで亜希子お母さん誰が一番面白い小説を書いたんですか?」


「小百合ちゃんの小説はとても面白かったよ。特に店に入った女の子三人が店を開けるから代わりに店番をしててくれないかと、言って、店を任せる事にして、珍事に遭いその三人のそれぞれの思いれの人が現れて、その三人に・・・」


「ちょっと待って」


 僕がお母さんの説明を止めた。


「何よ純君、今亜希子お母さんが私の小説の評価を教えてくれているところでしょ」


「それはそうだけれども、お母さんがここで小百合さんの小説を話してしまったら、その小説のネタバレになってしまうじゃん」


「だから何なのよ」


「そうよ、亜希子お母さんは今、小百合ちゃんの小説を話してくれているところでしょ!」


 麻美ちゃんが怒りながら僕に訴える。


「違うんだ。僕は小百合さんの小説も麻美ちゃんの小説もお母さんにネタバレされない様に僕は自分自身で読んで見たいと思ったんだ」


「そんな事をして何になるのよ。締め切りは今日よ。約束通り亜希子お母さんに私と小百合ちゃんと純君の小説で競い合う約束でしょ」


「確かにそうかもしれないけれど」


「ねえ、亜希子お母さん私達の中で一番面白い小説は誰だったの?」


 するとお母さんは薄く微笑んで、


「さあ、それは自分達で決めなさい」


 と言って秘密基地から出ようとしたところ。


「ちょっと待ってよ亜希子お母さん」


 麻美ちゃんは興奮して肩を掴む。


 するとお母さんは麻美ちゃんの小説と僕の小説と小百合さんの小説をそれぞれ渡した。


「後は自分自身で考えなさい」


 そう言って秘密基地から出て行った。


 すると小百合さんと麻美ちゃんの怒りを買ってしまった。


「どうしてくれるのよ純君!」


 小百合さんは判定がないままお母さんが出て行ってしまったことにご立腹の様で、僕にパンチをかましてきた。


 凄く痛かった。まさか少林寺拳法直伝の拳を当たった直前に力を込めると言う基礎的なパンチを食らってしまった。


「ちょ、ちょ、ちょっと、まっまっ待って」


 お母さんが言いたいことを二人に伝えなければならない。


「何が待ってなのよ、もう一発食らいたい?」


「だから、とにかく落ち着いてよ二人とも」


「落ち着いていられないわよ」


 そう言って今度は麻美ちゃんが僕の頬にピンタを喰らってしまった。


 僕もカチンと来て、つい感情的になってしまい、


「だからちょっと待てって言っているでしょ!!」


 すると僕の怒りに触れた麻美ちゃんと小百合さんは大人しくなってくれた。


 ここで僕は一つ咳払いをして、


「誰が一番なんてあり得ないと思うんだ」


「それはどういう意味なの?」


 麻美ちゃん。


「答えは僕達の小説の中にあると思うんだ。僕はとりあえず小百合さんの小説を読むから、麻美ちゃんは僕の小説を読んで見てよ。そして小百合さんは麻美ちゃんの小説を読んで見てよ」


 二人は顔を見合わせて僕の言うとおりに従ってくれた。


 僕は小百合さんの小説を読まさせて貰っている。


 正直僕よりも良く描かれていると思った。


 小百合さんの小説は人を引きつける文章になっている。


 そして小百合さんの小説のクライマックスに到達すると、涙がこぼれ落ちそうになってしまった。


 そしてそれぞれ同時に読み終わり、気がつけば一時間半が経過していた。


「純君本当に良く書けているじゃない。もしかしたら、この中で一番面白い小説は純君の小説かもしれないね」


 麻美ちゃんが悔しそうに言う。すると小百合さんは、


「いやいや、麻美ちゃんの小説の方が面白いと思うよ」


「何よ。いくらライバル同士だからと言って私に気を使うような真似はしないでよ」


「していないよ。本当の事を言ったまでだよ」


「じゃあ小百合ちゃんあなたの小説を見せてよ」


 そこで僕が、


「じゃあ、これからは麻美ちゃんが小百合さんの小説を読んで僕が麻美ちゃんの小説を読んで、最後に僕の小説を小百合さんが読んでよ」


 麻美ちゃんの小説を読んで見ると、本当に十歳が書いた様な物語なのかと疑ってしまうほどの恋愛ストーリーで正直僕は感動してしまった。


 見ていると本当に涙がこみ上げてくる。


「小百合ちゃんの小説も面白いわね。どうやらこの勝負、誰が一番面白い小説を書いたのか分からなくなってきたじゃん」


「そうだよ。麻美ちゃん。僕達は楽しく書いていたからどの小説も面白いと思うんだ。だから僕達の小説の中でナンバーワン何ていなかったと思うんだよ。きっとお母さんはそれを伝えたかったんじゃないかな」


 二人は納得の表情をする。


「じゃあ、何で賞を取るために一番面白い小説を選ぶのかしら?」


 麻美ちゃんが不服そうに言う。


「それは分からないけれど、みんなそれぞれ面白いしょうせつを書いていると思うのにね」


「でも文庫化された小説はとても魅力を感じさせる様な物だったわ」


 そこでお母さんが基地に入ってきて、


「何あなた達、そろそろ帰る時間じゃないの?」


「亜希子お母さん。どれも面白い小説ばかりだったよ」


 と麻美ちゃんが言う。


「でしょ。私が言いたかったのはもう純君はすでに知っていたけれども、勝敗は関係なくみんな面白い小説ばかりだったよ」


「本当に私の小説面白かった?」


 麻美ちゃんは念を押すように言う。


「面白かったよ、特に最愛の人が死んでしまうのがとても悲しかったけれども、恋人だった男の人はまた立ち上がって何かを始めようとしたところとても感動したんだけれどもな」


 と言うことで僕達の小説に勝敗などなかったのだ。

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