魂を削り合う仲間
僕は小百合さんの小説を読んで感動してしまった。
麻美ちゃんは僕の小説と小百合さんの小説を読んでどんよりしている。
「何よ二人とも初心者のくせに、こんな面白い小説を書くことが出来るなんて」
どうやら麻美ちゃんは僕達の小説を読んで嫉妬してショックを受けてしまったみたいだ。
「麻美ちゃん。本当に僕の小説面白かったの」
「面白かったよ。こんな面白い小説を書けるなんて私よりも才能があるんじゃない」
と麻美ちゃんは相変わらずどんよりしている。そんな麻美ちゃんに、
「いや、麻美ちゃんの小説の方が面白いよ」
「そんなおべっかいらないわよ」
と小百合さんと同じ事を言われてしまった。
「おべっかじゃないよ、本当に面白いと思うよ、麻美ちゃんの小説」
「何か私やる気無くしてきたわ」
「ちょっと麻美ちゃん。そんな事で夢を失わないでよ。僕達はただ麻美ちゃんに感化されて何となく小説を書いてみたいと思っただけだよ」
麻美ちゃんはここが図書館だと忘れて「うわー」と叫び声を上げた。
「ちょっと麻美ちゃん落ち着いて、ここは図書館でしょ静かにしなきゃ」
「もう、私小説を書くのをやめる」
「何でやめちゃうの?」
「だって私には才能がない」
すると小百合さんは、
「やめたきゃやめれば良いじゃない」
「ちょっと小百合さん。そんな言い方はよしてよ」
「私は本心を言ったまでよ。剛君やあっ君は日々亜希子お母さんに負けないように、頑張って練習しているのに、私達の小説が面白かったからって、そんな事で夢を捨てるなら捨てちゃいなよ」
麻美ちゃんにグサリと来る言葉を小百合さんは言った。ちなみに僕も聞いていてグサリと来た。
そんな事を言われたらショックを受けてしまうじゃないか。
麻美ちゃんはそう言われて、
「分かったわよ。私の本気あなた達に見せてあげる」
急に麻美ちゃんは燃え始めた。
「だったら勝負よ。私と純君が書いた小説と麻美ちゃんが書いた小説で勝負をしましょう。どちらが面白いか亜希子お母さんに判定をして貰いましょう」
「面白い、やってやろうじゃないか。泣きべそかいても私は知らないからね」
「その言葉そっくりそのまま返してあげる」
「ちょっと小百合さん、何で僕まで入るの?」
「大丈夫、純君の小説は面白いから、きっと麻美ちゃんと私は燃えに燃え上がるから」
「早速勝負よ」
と言うことで僕と小百合さんは図書館で小説を書くことになった。
僕は原稿用紙に昨日書いた小説の続きを書くことになった。
物語を描いていると次から次へと沸々と物語が生まれて凄く書いているだけで熱くなり凄く楽しかったりする。
小説を書き続けて時間を忘れていたが、もう六時を回っていた。
「やばいよ、小百合さん」
と言うと、小百合さんは小説を書くことに没頭している。
先ほどまでは僕の小説を読んで嫉妬して書けなかったのに急にどうしてしまったのだろう?
それは僕と麻美ちゃんが小百合さんの小説を絶賛したからだ。
本当に小百合さんの小説は心にグッと来る物を感じ取れた事が分かった。
とにかくそろそろ撤収しないとお母さんに門限に遅れて怒られてしまう。
「小百合さん。それに麻美ちゃん。小説に没頭するのは良いけれど、もう時間だよ」
「あら、もうこんな時間、何かに没頭していると、時間がすぐに過ぎてしまう感覚にとらわれてしまう」
小百合さんは言う。
そう言う事で、小百合さんは麻美ちゃんの目を見て、バチバチと視線を合わせる。
「小百合ちゃん私は絶対に負けないから。それに純君にも負けないから」
僕達の小説が面白かったのは嬉しいが、何か二人とライバル意識を燃やすとその熱に感化され、小説を書くことをやめられない。
僕達は図書館を出て、六時を過ぎたと言うのにまだ日は明るい。
小説を書いて僕と小百合さんと麻美ちゃんは凄く充実した感じになっている。
小百合さんは原稿用紙に十枚書いていたみたいだ。麻美ちゃんは聞いてないけれどかなりの量を書いたと思う。
実を言うと僕も二人に感化されて原稿用紙十枚ぐらいの小説を書いたのだった。
でも麻美ちゃんも僕も小百合さんも物語の終盤には入っていないだろう。
僕と小百合さんは同じ団地なので、麻美ちゃんといったん別れた。
麻美ちゃん帰り際に言っていたよ。「絶対にあなた達には負けないから」と言って去って行った。
そんな小百合さんと二人きりになり、僕の携帯にお母さんから連絡が入った。
「もしもし、お母さん」
『純君、何をしているのよ。門限までには帰らないとダメでしょ。もう六時半よ』
「ゴメン、ちょっと熱くなっちゃって」
『熱くなったってもしかして小百合ちゃんと何かあったの?』
嫌らしい声色で言う物だから、僕はそんなお母さんが嫌になって、
「別にそう言う意味じゃないよ。麻美ちゃんに僕と小百合さんの小説を読んだら、麻美ちゃん熱くなっちゃって、僕と小百合さんも熱くなって小説を書いてこんな時間になっちゃったんだよ」
『そう。あなた達、小説を書いているんだ・・・と、それよりもそこに小百合ちゃんはいる?』
「いるけれど、何か用事でもあるの?」
『ちょっと変わってくれる?』
「うん。分かった」と言って僕のスマホを小百合さんに渡した。
「はいもしもしお電話変わりました小百合です」
そう言って小百合さんはお母さんと話し合っている。
何を話し合っているのかと言うと、今日は小百合さんも家でご飯を食べないか?とのお誘いの電話だった。
「分かりました。じゃあ、今日も亜希子お母さんの家でご飯をご馳走になります」
そう言って僕のスマホを小百合さんは渡してきた。
『じゃあ、純君小百合ちゃんを我が家までエスコートしてね』
「分かった」
と言って通話は切れた。
「また、亜希子お母さんに夕飯をご馳走になることになっちゃった。亜希子お母さんの手料理はおいしいから良いんだけれども」
小百合さんは内心ワクワクしている。
僕のお母さんの手料理がおいしいなんて、それは僕にとっても嬉しい事だった。
将来、小百合さんと結婚して、そうしたら小百合さんもお母さんの手料理みたいに作れるようになっておいしい料理が食べられる事が楽しみになってきた。
でもそれは遠い未来の約束の様な物だ。
僕は栗色の長い髪に、つぶらな瞳に、いつも着ているワンピースがとても似合う小百合さん以外の人と結婚だなんてあり得ないと思っている。
小百合さん。大人になったら凄い美人になれるんだろうな。
すると突然、僕の耳を引っ張ってきた。
「何をするの小百合さん」
「何か疚しいことを考えているんじゃないかって思ってね」
「そんなことあるはずないじゃないか!」
そうして僕と小百合さんは僕が漕ぐ自転車の後ろに乗り、急いで帰るのだった。
家に帰ると良い匂いがしてくる。
「ただいま、お母さん」
「お邪魔します亜希子お母さん」
テーブルに行くと、今日は羽根つき餃子だった。
「うわーおいしそう」
と小百合さんが言う。
「二人とも帰ってきたら、とにかく手を洗いなさい」
「「はい」」
と言って手を洗って、テーブルまで行った。
「今日はお母さん特製羽根つき餃子よ。いっぱい食べて行ってね」
羽根つき餃子を食べてご飯が進む。本当においしい。小百合さんも食べることに夢中だった。
食べている途中お母さんは、
「今日も二人して小説を書いたんだ。まさか小百合ちゃんまで小説に興味を持つなんて思わなかったよ」
「それよりもお母さん。僕の小説を返してよ」
「返すって言ったって、私は持ってないから」
そうだ。小百合さんにとられたままだったんだ。
すると小百合さんは即座に僕の小説をお母さんに渡すのであった。
「ちょっと、お母さん返してよ」
「返しません。こんな良い小説、純君が書けるとは思わなかったから」
僕は大きくため息をついた。




