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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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それぞれの小説

 体育の時間、僕達は準備体操をして、ポートボールの試合をするのだった。


 僕と小百合さんは一緒のチームで、相手のチームに圧勝した。


 試合が終わって、僕は小百合さんに、


「体育の授業が終わったら、小百合さんの小説を見せてよ」


「・・・」


 小百合さん聞こえなかったのか?いや聞こえているはずだ。何か僕のことをはぐらかしている感じがする。


 体育の時間も終わって小百合さんはわざとか、ゆっくりと時間をかけて着替えをしている。

 次の時間は国語であり、教科書に載っている文章を読んでみると大言壮語を思うようだが、これよりも昨日麻美ちゃんが見せてくれた小説の方が面白いと思ってしまった。


 篠原先生に聞こえないように、


「小百合さん小説見せてよ」


「純君、授業中は静かにしなさい」


 今日の小百合さんはちょっとおかしいと思った。


 僕の小説を読んだんだからそれを読ませてくれないなんて。


 そして給食の時間、今度こそ小百合さんに小説を読ませて貰おうと考えたが、小百合さんは今日の学校の給食のシチューとパンをゆっくりと食べて咀嚼している。


 何か気のせいだろうか?僕に小百合さんの小説を読ませたくないんじゃないかと考え始めた。


 そして五時間目の算数の授業中に、


「小百合さん」


 と呼ぶと、


「うるさいわよ。授業中は喋らない」


 これは絶対に何かある。どうしても僕に小説を読ませたくない訳があるのだ。


 何か訳があると思うが、僕は小百合さんの小説を見せて欲しいと思っている。


 五時間目が終わって小百合さんは先生に呼ばれて、どこかに行ってしまった。


 そうだ。この隙に小百合さんの小説を読んでやろうと思って、ランドセルの中身を見てみると、中に小説を書いた原稿用紙が入っていた。


 これが小百合さんの小説か、僕はそれを取り上げると、小百合さんは教室に帰ってきて、僕が小百合さんのランドセルから小百合さんの小説を見ようとしたところ、


「何をしているのよ。このスケベ大王!!」


 そう言いながら走ってきて、僕の頬にピンタを喰らわせた。


「何をするんだよ、小百合さん!」


「それはこっちの台詞よ。断りもせずに私の小説を読もうなんて、恥ずかしいとは思わないの?」


「だって約束したじゃん。僕に小説を読ませてくれるって」


「そんな約束していません」


「今更、約束を破棄するつもり?」


 そして小百合さんはランドセルを背負って僕をシカトして帰ってしまった。


「ちょっと待ってよ小百合さん。僕にその小説を見せてくれるんじゃなかったの?」


 僕はそう言いながら小百合さんの後を追った。


「ちょっとついて来ないでよこの変態」


 僕は小百合さんの彼氏だ。そんな僕が小百合さんに変態呼ばわりされてしまった。


「悪かったよ。僕は小百合さんのランドセルを勝手に開けてその小説を見よう何て思ったことに関しては反省しているよ。でもどうして僕に小百合さんの書いた小説を見せてくれないの?」


 すると小百合さんは立ち止まり、なぜか涙を流していた。


「だって純君の小説、私の小説とは出来が違うんだもん。純君は私と恋人関係でライバルでもある純君にこんな才能があったなんて悔しいよ」


 なるほど、小百合さんは僕の小説を読んで自分の小説とはかけ離れた物だと知り、見せてくれなかったのだ。


「分かったよ。小百合さん。だから泣かないでよ。もう小百合さんの小説を読ませて何て言わないからもう泣かないで」


 僕は恋人である小百合さんを泣かせてしまったことに罪悪感でいっぱいだった。でも、


「小百合さん!僕にその小説を一度も見せてくれないじゃないか?まず僕に見せてから泣いてよ。小百合さんは何のために小説を書いたの?」


「昨日、麻美ちゃんが書いた小説に胸を奪われてつい書いちゃったの」


 と、べそをかきながら僕に訴えかけてくる。


「じゃあ、僕の小説に嫉妬するぐらいなら、小百合さんの小説も見せてよ。それで見せないなんてそれは卑怯だよ」


「だって私の小説なんて純君からしたら、とても見せられる物じゃないと私は思っちゃうんだけど」


 とりあえず僕と小百合さんは図書館に行って小百合さんの気持ちを落ち着かせた。


 小百合さんは泣くのは止んだ物の目を真っ赤にして涙の痕跡が見える。


 そして図書館にはいつものように麻美ちゃんが小説を書いていた。


「こんにちわ。麻美ちゃん」


「あら二人とも、それと小百合ちゃんは何で目を真っ赤にさせているの?もしかして痴話喧嘩?」


「僕達は一応付き合っているけれど、それと喧嘩をしたのは間違いじゃないけれど、そのような言い方はやめてくれる?」


「本当にあなた達仲が良いのね、原因は何?」


「「・・・」」


 そう言われて僕達は黙り込んでしまう。


「まあ、言いたくないなら良いけれど、痴話喧嘩も程ほどにね」


 だからその言い方はやめて欲しいんだけれども。


「純君、じゃあ、私の小説読んで良いよ」


 投げやりに言う。すると麻美ちゃんが、


「あなた達小説を書いたの?」


「そうよ。純君の小説はかなりの物で私の小説とは違い過ぎる」


「私も小百合ちゃんと純君の小説を見てみたいな」


「じゃあ、麻美ちゃん、まずは純君の小説を読んでみてよ。読み終わったら、必ず私に返してね」


「何で小百合さんに僕の小説をそこまで僕に返したくないの?」


「それは亜希子お母さんとの約束だから」


「じゃあ、とにかく小百合さんの小説を見せてよ」


 少しためらうようにランドセルから原稿用紙を取り出して、僕に見せた。


 やっと小百合さんの小説が読める事が出来るよ。


 小百合さんの小説を読んでみると、何これ、凄く面白くて泣けて来るんだけれども。


 タイトルはオレンジの日々であり、母子家庭で育った姉と妹の物語である。その小説を読んでみると、姉が大学受験に失敗して自殺をして、妹はその悲しみに打ちひしがれ、引きこもってしまう。


 そして妹は自殺を決意をする。すると、妹は気がついたら病院のベットの上だった。お母さんは自殺しようとした妹の盟に怒りのピンタを与えたのだった。


 物語はここでおしまいになっている。


 何か、この小説続きが凄く気になって読みたくなってしまった。


 僕は小百合さんの小説を読んで泣きながら、


「小百合さんの小説凄く面白いよ。何がこんな小説見せられないだよ。僕の方こそ嫉妬してしまうほどの物語になっているよ」


「何よ嘘泣きまでして、おべっかするのは卑怯よ」


「おべっかなんてするわけないじゃない」


 小百合さんの小説を読んでいて忘れていたが、僕の小説を麻美ちゃんが見ていたんだっけ。

「純君、あなた才能あるわよ」


 麻美ちゃんはなぜか目が死んだような顔をして、僕の小説を読み終えていた。


「麻美ちゃん。どうしたの?何か口調が変よ」


「そうかな。実を言うと私は純君の小説を読んで凄く嫉妬してしまったよ」


 僕に僕が書いた原稿用紙を返すと小百合さんが前に出てきて、それを奪う。


「何するの小百合さん」


「これは亜希子お母さんの元へ返してあげる約束だから」


「いつそんな事が決まったの?」


「じゃあ、僕も小百合さんの小説を返す訳にはいかないよ」


「とりあえず、麻美ちゃん、私の小説を読んでみてよ。これで麻美ちゃんが感動しなかったら、純君は私におべっかを使った事になるから」


 僕は麻美ちゃんに小百合さんの描いた小説を渡した。


 麻美ちゃんは速読力が凄くて、すぐに読む力を持っている。


 物の十分が経ち。


「本当にあなた、これ、本当に書いたの?」


「僕達の小説どうだった?」


「どうだったもこうだったもないよ。凄く面白い小説だと思うよ」


 その証拠に麻美ちゃんは小百合さんの小説を読んで涙を流していた。


 僕が小百合さんの書いた小説を麻美ちゃんから受け取ろうとしたところ、小百合さんに奪われてしまった。


 小説と言う物は自分が描いた物を他人に読まれないと、その内容が面白いか面白くないか分からない様な物だと僕は思った。


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