少林寺拳法を習う事になった純と小百合
お母さんは僕に少林寺拳法を習うことを勧めた。
少林寺拳法を学べば僕は弱気人を守れる強さを得られるかもしれないので、少林寺拳法を習うことにした。
「じゃあ、お母さん、僕少林寺拳法を習うことにするよ」
「よし、じゃあ、明日お母さんが習っていた少林寺拳法の主将を紹介してあげるよ」
「でも、主将って言っても、その体でお母さんの事が分かるの?」
「それもそうね。じゃあ、純君が一人で行って、お母さんは剛君とあっ君にバスケの練習を教えてあげないといけないんだった。だから地図を書いてあげるから、そこまで行っておいで」
お母さんがそう言って、僕は少林寺拳法を学ぶことになった。
そこで、小百合さんがランドセルを置いて家にやってきた。
「あら、小百合ちゃん」
「純君、今日も勉強頑張ろうね」
「ゴメン今日は少林寺拳法を習う為に、お母さんの少林寺拳法の主将に会いに行って来ることになった」
「ふーんそうなんだ。じゃあ、私もついて行って良いかな?」
「小百合さんも少林寺拳法を学ぶの?」
「純君が習うなら私もお母さんに頼んでやってみようと思っている。家のお母さん、私に習い事をさせて貰えるように頼んでみるから」
「とりあえず、僕はまだやるとは言っていないよ、それに小百合さんは女の子でしょ」
「女の子だからって少林寺拳法を習っちゃいけないのかしら?」
「そうは言っていないけれど・・・」
「じゃあ、決まりね。私も少林寺拳法がどんな物か見てみたいし、自分の身は自分で守れる強さを持ちたいからね」
だったら、もう止めることは出来ない。小百合さんも少林寺拳法を学んで、強くなるんだ。僕はヤクザじゃないけれど、任侠と言う言葉が大好きだった。
任侠とは強気を挫き弱気を助けるって習ったからね。
早速僕と小百合さんは自転車で二人乗りして、お母さんの主将に会いに行くことになった。
場所は家の近所だった。お母さんはこの辺に子供の頃から住んでいたらしい。
そして少林寺拳法の道場に到着した。
そこはとあるスポーツセンターの体育館であり、そこに火曜と金曜日に少林寺拳法が行われているらしい。
今日は火曜日だ。そこで僕はお母さんの主将である人に会いに行くために受付に行った。
「あのー、ここで少林寺拳法の習い事があると聞いてやってきたんですが?」
「ああ、なら、三階の体育館になります」
僕と小百合さんは三階の体育館をエレベーターで行くことになった。
三階に到着すると、体育館で気合いの入った声が聞こえてくる。
「ハッ!」「ハッ!」
と体育館をのぞき込むと、凄い声が聞こえてくる。
厳つい人が拳を握りしめ、サウンドバックに蹴りやパンチを加えている。
凄い衝撃音だった。
正直僕は怖かった。
あの人がお母さんの主将なんじゃないかと思って恐る恐る近づいてみると、目が合って凄い眼力で見つめられ、僕と小百合さんは驚いた。
恰幅も良く気合いの入った男がこちらに近づいてくる。
「何だい君達」
「あのー僕達はお母さんに勧められて少林寺拳法を学ぶために来ました高橋純と・・・」
そこで小百合さんは、
「私も純君と同じく新しく入ろうとしている高岡小百合と申します」
「あなたが僕のお母さんの高橋亜希子の主将でしょうか?」
「君達、亜希子さんの息子と娘?」
「私は娘じゃなくて、友達です」
と小百合さんは言う。
「なるほど、亜希子さんの息子とそのガールフレンドの子かあ、亜希子先輩凄く強かったからな。女とは思えないほどの強さだったよ。僕は亜希子さんに一勝もしたことがないんだよ」
こんな体格のいい人がお母さんに一勝も出来ないなんて、お母さんは本当に女性なのかと疑ってしまった。
「そうですか、お母さんって、いや高橋亜希子ってそんなに強かったんですか?」
「強かったって物じゃないよ。もう化け物のように強い人だよ。あの人はうちの主将と張れる位の強さを持っていたからね」
その主将と言う人はとんでもない大男にしか聞こえない。
「その主将は今いるんですか?」
「うん、いるよ」
主将の方に指を指す。
すると僕は目を疑った。
主将はひょろひょろの禿げかかったおっさんだった。
あれが主将?何て弱々しそうな人なんだろう。
僕は恐る恐るお母さんの主将の元へと行った。
「あのー高橋亜希子の息子の高橋純ですけれども、あなたがお母さんの主将ですか?」
「おお、君は高橋亜希子ちゃんの息子さんでそちらが娘さんかね」
「私は純君の友達です」
「何だ。君達は少林寺拳法を習いたいからここに来たのかね?」
「はい」
僕は思った。こんな人が少林寺拳法の強者で主将とは思えなかった。
「純君って言ったっけ。君、今私の事を見た目で判断したね」
「いえいえしていませんよ。そんな失礼な事を」
「どうかね、私と一戦交わって見ないか?」
僕は楽勝だと思って「はい」と返事をしてしまった。
僕だってお母さんの少林寺拳法を教わったりしている。その技を使いこなせばこんなひょろひょろのおっさんには負けないと思っていた。
「さあ、いつでもかかってきなさい」
主将は両手で八の字を書くような構えをしている。
僕は、「やああああああ!」と言って主将を本気でのしてしまおうと思った。
けれど、何が起こったのか?
★
「・・・君」
えっ?
「純君」
小百合さんの声が聞こえてくる。
「僕はいったい?」
「純君は調子に乗って主将に立ち向かって、気絶させられたのよ」
「大丈夫かな?」
主将は僕の前で僕を見下ろしている。
そして僕は改まった。
「失礼な事を思って申し訳ありませんでした。僕はあなたがこんなに強いだなんて思いもしなかったので」
「ふむ、身をもって知ってもらったかな私の少林寺拳法を」
「小百合さん。僕は何でやられたの?」
「純君が猪突猛進にかかっていって、あなたの勢いで・・・ゴメン私も見えなかった」
僕はこの人の元で稽古を付けて貰えれば、強くなれると確信した。
僕は強くなりたい、肉体的にも精神的にも、この人の元で稽古を付けて貰えれば強くなれると本気で思った。
「あのー僕はあなたの元で強くなりたいです。どうか僕を肉体的にも精神的にも強くしてください」
「私もお願いします。私は純君の彼女で亜希子お母さんの様に強くなりたいと思っています」
「じゃあ、今日は見学して行きなさい」
「「はい」」
主将はパイプ椅子を二つ持ってきてくれて、そこで座ってみんなの練習を見ていた。
「とにかくここは基礎を重点にしてやっている事だから、まずは基礎から見て行きなさい。多分君の事だから亜希子ちゃんにちょっと少林寺拳法の技を教えて貰って、喧嘩に使ったんだろう。それで喧嘩には自信があり私に立ち向かってきたってところかな?」
「何で!?そんな事が分かるんですか!?」
「君みたいな未熟者の考えていることは分かるんだよ。とにかく亜希子ちゃんも亜希子ちゃんだ。あのいたずらものめ!!!!?」
主将はお母さんに対してご立腹のようだ。
「あのー僕のお母さんは強かったと聞いています。どのぐらい強かったのですか?」
「それは私と張れる位の強さだったよ。でもジュニア大会で準優勝をして、それから、バスケの選手を目指して、ここをやめて行ったのだけれどもな」
なるほど、お母さんはだから少林寺拳法の道をやめて、バスケの世界に入っていったのか。そんなに強いなら、この主将の様な人になれば良いのにと僕は思う。
「純君と言ったね、君のお母さんは今何をしているの?」
「翻訳家の仕事です」
「翻訳家の仕事?」
「何か、映画などの字幕とかを日本語に翻訳している仕事をしているみたいです」
「そうか、あの子ももうこんな純君って言ったっけ、このような男の子がいる年になったか・・・」
感心するように言う主将。
僕はこの人の元で強くなりたいと思っている。




