すべての者達に感謝を
ああ、今日は僕の嫌いなピーマンだ。
小百合さんがお母さんの食事を手伝って作っている最中に僕は布団にこもりながら、ピーマンを恐れていた。
ああ、あんな事を言うんじゃなかった。
そして、お母さんと小百合さんの声が聞こえてきた。
「純君、そろそろお夕飯よ」
「今日は純君の大好きの反対のピーマンよ」
二人とも楽しんでいないか。
僕は気怠そうに布団から出て、食卓に向かっていた。
食卓に並べられた物はピーマンの肉詰めにマカロニサラダに味噌汁にご飯が添えられていた。
ピーマン以外の料理はおいしそうな物だった。
僕は食卓に座り、ピーマンを見るだけでも僕は吐き気がした。
「純君、何そんな世界が終わりそうな顔をしているの?ピーマンも農家の人達が汗水垂らして作った物なんだからね」
ニコニコしながら小百合さんは言う。
でもそうだ。ピーマンも農家のたまものだと言っても過言じゃないんだ。
僕は思いきってピーマンにがぶり付いた。
食べてみると何かおいしい感じがした。
「何このピーマンの肉付け、凄くおいしいだけど」
「本当に?」
お母さんが疑うような視線を僕に向けてきた。
「本当においしいよ。太陽と栄養満点の土の味がする」
「何よつまらないわね」
「何がつまらないの?そんなに僕の嫌いなピーマンを出して僕が嫌がるのを楽しんでいた訳」
「「・・・」」
図星を付いたのか、二人は黙り込む。
「本当に小百合さんもお母さんも人が悪いな」
「でも純君の嫌いなピーマンを食べて貰って私と小百合さんが一生懸命作ったかいが合ったよ」
「本当にそう思っているの?」
「本当だよ。我が子が苦手な物を食べられるようになって、私は嬉しいよ」
「あーあー、純君が嫌いなピーマンを食べる姿、見たかったのにな」
小百合さんも人が悪い。
「やっぱり僕が苦手なピーマンを食べる事を楽しんでいたでしょ」
「まあ、半分楽しんでいたけれども、私と亜希子お母さんが作ってくれたピーマンの肉詰めを食べてくれて私は嬉しいよ」
すると小百合さんとお母さんは僕がピーマンの肉詰めを食べてくれて嬉しかったのか?ハイタッチをする。
本当に二人が作ってくれたピーマンの肉詰めはおいしくいただけた。
嫌いな物を克服して、僕は一つ大人になれたような気がした。
このピーマンも農家の人達が汗水を垂らして作ってくれたんだよな。
そう思うと、このマカロニも味噌汁の具も、そして味噌もご飯も農家の人達が賢明に作ってくれた事に僕は感謝していた。
そうだ。食材一つ一つにみんなの恥ずかしいけれど愛がこもっていることを僕は今おいしいと初めて思えた。ピーマンを食べて良かった。
食事も済んで後片付けは僕と小百合さんでやることにして、お母さんは翻訳家の仕事に移ったのだった。
僕は食器を洗いながら思うんだ。お母さんが仕事をして、お金を稼いできて、食卓に色々な料理を振る舞っている。
お母さんも汗水流して翻訳家の仕事をしている。
この世の中、色々な人に助けられているような気がした。
そして小百合さんは帰って行き、僕とお母さんは一緒にお風呂に入ることになった。
でも僕は、
「お母さん、お風呂なら一人で入ってよ」
「良いじゃない純君。お母さんと一緒にお風呂に入ることは今だけかもしれないのよ」
「何を訳の分からないことを言っているの、とにかく恥ずかしいから僕は一人でお風呂に入るよ」
「良いから良いから、純君背中流してあげる」
僕は後ろを向いて、お母さんが背中を流してくれた。
そして僕は不本意だが、お母さんの背中を流すのであった。
眠る事になり、お母さんはこれから仕事だ。
今日も剛君やあっ君達と汗水垂らしてバスケに集中していたのに、それほど二人にバスケを教えることは大事な事なんだなーと思った。
そう思うとお母さんとお風呂に入ることが嫌じゃなくなってきた。
お母さんの背中を隅々まで洗って、僕も背中を流してくれた。
お母さんはこれから翻訳家の仕事をしなければ、僕達は食べていけなくなってしまうからね。
スーパーの野菜や肉や魚はそれぞれ農家の人や漁師の人や養豚所の人が作ってくれたたまものだ。それをお金にして食べていけるのはお母さんのおかげだ。そう思うと本当にお母さんって凄い人なんだなと僕は思った。
僕は先に眠り、電気を消して、布団に横になる。
隣のリビングの部屋からお母さんの仕事の音が聞こえてくる。
それはカタカタと言う、お母さんが翻訳家の仕事をしているからだ。
僕はまだ、働けないけれど、僕が大きくなったら、お母さんをうんと楽にさせてあげたいと思っていた。
そして僕は眠りに入り、まるでお母さんの仕事の音は睡眠を促してくれる物だと僕は思った。
明日が楽しみで何か布団の中で武者震いをしていた。
明日は何が起こるのだろう?今日みたいにみんなと一緒に夢の世界へと導いてくれるのかもしれない。
★
次の日の放課後、帰り道で駒木根の奴が大きな人を連れてこちらにやってきた。
「おい。お前が、俺の弟をずいぶんとかわいがってくれたらしいじゃねえかよ」
「兄ちゃんやっちゃってよそいつ」
駒木根が勝ち下にそう言う。
そこで小百合さんが、
「駒木根、あんた卑怯なんじゃないの?大の大人に近い人を連れて報復に来るなんて」
「小百合さん下がっていて」
と僕は本気で駒木根の兄を倒そうとした。
「こんなひょろひょろのガキにお前はやられたのかよ」
と駒木根に兄がゲンコツを与える。
そして駒木根の兄は僕に向かって余裕ぶっているのか?僕の胸元を掴んだ。
この時を待っていた。相手の胸元を掴んだら僕にとって有利な事だ。
駒木根の兄が掴んだ。胸元を手を丸め込み、関節で力が入らないようにして倒して、駒木根の兄をやっつけた。
とにかく僕は二度と僕達に関わらないように徹底的に駒木根の兄を打ち倒した。
「痛え、やめろ。何だ。こいつの技は?」
「僕はお前なんかに負けはしない」
「やめてくれ。もう死んじゃいそうだよ」
本当に駒木根の兄は死んでしまいそうな程痛めつけた。
そこで小百合さんが。
「やめて、純君!!」
と小百合さんの声を聞いて理性を取り戻した。
駒木根の兄はボコボコだった。
そして駒木根の弟である、奴に鋭いナイフのような視線を送りつけると、ビビって自分の兄を見捨ててどこかに去ってしまった。
何て情けない奴なんだ。自分の兄貴は自分の弟のために、人肌脱ごうとしてくれたのに、それで形成が悪くなったら逃げるなんて卑怯極まりない。
僕と小百合さんはその駒木根の兄を気絶させたまま、いつもの家路に行くのであった。
きっとこの事を言うとお母さん怒るだろうなと僕は思った。
でも仕方がない、そうしないと僕達はやられっぱなしになってしまう。
お母さんは少林寺拳法四段だ。
そのお母さんに教えて貰った技を駒木根の兄にも通じてしまった。
お母さんは言っていた。喧嘩は相手の体制を崩したら勝ちだと。
家に帰ると、お母さんが待っていた。
「ただいま」
と言うと、お母さんはいつものホッペにチューをしてくる。
いつものお母さんだった。
「どうしたの?純君、何かあったの?」
「うん、実を言うとね」
先ほどの事を話した。
「なるほど、また純君はやられそうになったのだろうけれど、お母さんが教えた少林寺拳法の技で小百合ちゃんや自分自身を守る事が出来たのね。凄いじゃない」
「凄くなんかないよ。僕は暴力なんて反対だ。でも話し合いで解決出来る相手ではなかった」
「純君、私が知っている少林寺拳法を習って見ない?」




