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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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夢を持つ者に対して嫉妬する

 今日は水曜日、学校がすぐに終わって良かった物の、外は雨であった。


 これでは今日は施設の子供達と遊ぶことが出来ないことに落胆していた僕と小百合さんだった。ちなみにお母さんも落胆していた。


 そこで僕はピンときた。


「そう言えば、麻美ちゃんが雨の日になったら図書館においでよって言っていなかった?」


「そう言えば言っていたねそんな事」


「じゃあ、今日は麻美ちゃんが以前言っていたように図書館に行くことにしようよ」


 早速小百合さんは家にランドセルを置いて僕の家にやってきた。


「じゃあ、小百合さん、図書館に行こうよ」


 そんな時である。


「あなた達こんな雨の中どこに行くと言うの?剛君とあっ君の特訓には付き合えないと言うのに」


 と残念そうに言っていたお母さんであった。


「今日は以前麻美ちゃんが言っていた図書館に行くことにしたんだよ」


「図書館かあ、お母さんも一緒に行っても良い?」


「別に良いけれど、また変な事をしないでよね」


「変な事って何よ、純君はお母さんが変な事をしたことがある?」


「とにかくその三十五歳でそのなりって事は伏せて置いてよ」


「何よ何よ何よ純君。私が三十五だからって、何か文句でもあるの?」


 僕の頬をつねりながらお母さんは言った。


「別に何もありませんよ。お母さんはかわいい女の子です」


「よろしいお母さんはかわいい女の子だからね。以前、純君お母さんが死んじゃった夢を見て、私に泣きついてきた事があったんだから」


 と小百合さんの前で堂々とそんな事を言う。


「お母さん小百合さんの前でそんな事を言わないでよ」


 すると小百合さんは、


「純君って本当にかわいいんだね」


「そうだよ。純君は甘えん坊さんなんだから」


「もうやめてよお母さん」


 と僕が強く否定する。


 するとお母さんは僕のホッペにキスをする。


 これもいつもの事だ。


 小百合さんに見られてももう恥ずかしく無くなってきてしまった。


 そうだよ。僕はまだ子供だよ。


 そう言う事で僕と小百合さんとお母さんで雨合羽を着ながら自転車で図書館へと向かった。

 本当に雨って憂鬱な気分にさせてしまう。


 図書館に到着して自転車置き場にそれぞれ僕達が愛用している自転車を置いた。


 雨の日だから、二人乗りはやめようと言ったのだが、小百合さんは聞かずに二人乗りをするように僕に言ったのだった。


 ちょっとハラハラしたかもしれない。


 それよりも麻美ちゃんはいるのか、見てみると、本当に図書館であり、様々な本が置かれている。


 難しそうな本もあれば、僕の大好きな漫画まである。


 僕が漫画に飛びつきそうになったところ、その前に僕達は麻美ちゃんを探さなければならないと思って、麻美ちゃんを探すのであった。


 麻美ちゃんはビジネスルームにいて、何か作文のような物を何枚も何枚も重ねて見ていた。

「麻美ちゃん。来たよ」


 小百合さんが手を振って麻美ちゃんに言うと、麻美ちゃんは罰が悪そうに、書いている物を隠すように机に何枚も重ねられていた作文用紙を隠した。


「何、隠しているのよ」


 小百合さんが言うと、麻美ちゃんは顔を真っ赤にしながら、


「何でもないよ」


「何でもないんだったら、隠しているその作文用紙を見せてよ」


「いや、それはその、やっぱりダメ」


「雨の日は麻美ちゃんが来ている図書館にいらっしゃいって言ったのは麻美ちゃんでしょ。それよりも麻美ちゃんの一押しの本って何なの」


「それなら案内するよ」


 僕と小百合さんは麻美ちゃんについて行った。


「図書館は凄いよ。何せ、芥川龍之介や森鴎外の本まであるんだから」


「私、芥川龍之介の本は好きよ。あの人の書いている本って何か読者のみんなに慈悲の気持ちを込めて伝えているような感じがするんだ」


「あー分かる!本当に芥川先生は凄い人だよね」


 何て小百合さんと麻美ちゃんは芥川龍之介の事について熱く語り合っていた。


 僕は文豪芥川龍之介の事は知らずに、何冊かの漫画を手に取り、麻美ちゃんと僕と小百合さんで麻美ちゃんが座っていたビジネスルームに戻ると、お母さんが先ほど麻美ちゃんが必死に隠していた原稿用紙を見つめていた。


「ちょっと!!!亜希子お母さん!!!何をしているんですか!!」


 そう言って麻美ちゃんは血相をかいて、原稿用紙を取り上げる。


「麻美ちゃんの小説だったのね」


「そ、そうですけれど、何か問題でも?」


「なかなか面白かったよ。麻美ちゃんの恋愛小説」


「見たのですね。亜希子お母さん」


「はい。本当に面白い小説だったよ。少し読ませて貰ったけれど」


「お世辞を言うのはやめてください」


「お世辞なんかじゃないよ。本当に面白かったよ、麻美ちゃんの小説。だからもう少し亜希子お母さんに見せてくれないかな?」


「ダメです。こんな恥ずかしい物を見せるなんて、寿命が十年縮まりそうでしたよ」


「どうしてかな?こんな面白い作品なのに、亜希子お母さんからしたら、芥川賞ものだと思うよ」


「もうやめてくださいよ。そんなお世辞聞きたくはありません」


「お世辞なんかじゃないよ」


 亜希子お母さんと麻美ちゃんは色々と言い合っているが、そこで僕が口を挟んだ。


「麻美ちゃんの夢ってまさか小説家になること?」


 すると麻美ちゃんは黙り込んでしまった。


「そんなすごい夢があるのに何で私達に教えてくれないの?」


「だって恥ずかしいじゃない。私のような凡人が芥川賞物の作品が書けるなんて、お世辞も甚だしいですよ」


 そこでお母さんが、


「そうかな、麻美ちゃんの小説を見せて貰ったけれども、とにかく胸を熱くさせるような物が私には見えたんだけれどもな」


「そんな事を言ってまたお世辞ですか?」


「私はお世辞なんて言わないよ、本当に麻美ちゃんの小説は凄い物だと思う。恋に散った者達が再び立ち上がりまた夢を・・・」


「もうやめて!」


 麻美ちゃんはお母さんに内容を知られて、凄い恥ずかしいんだ。正直僕もその気持ちは分かる。もし自分が書いた作文とか絵を見られると恥ずかしい気持ちになったりする。


 それに麻美ちゃんは本気で小説家の夢を見ているのが分かる。


「麻美ちゃん。僕にも麻美ちゃんの小説見せてくれないかな?」


 と僕が言うと小百合さんも、


「私もお願いだけれども、麻美ちゃんの小説読んで見たいな」


「あなた達本当に私の小説が読みたいの」


「「「もちろん」」」


 僕達三人は口を揃えて言う。


「でも恥ずかしいよ」


 麻美ちゃんは泣きそうな声で僕達に言いかけた。


「でもそれっていつかは大勢の人に見られる事になるんだよ。そうなったら、麻美ちゃんはどんな気持ちになる」


 亜希子お母さんは力説して麻美ちゃんは、


「嬉しいけれど」


「だったら私達にその小説読ませてくれないかな?私達麻美ちゃんの小説に興味があるんだよな」


 お母さんは優しく言う。


「じゃあ、ちょっとだけなら」


 そう言って僕達は麻美ちゃんの小説を読ませて貰うことにした。


 僕は芥川龍之介や森鴎外の事は知らないけれど、とにかく麻美ちゃんが書く小説には興味があった。


 麻美ちゃんの小説を読ませて貰うと、本当に良い物語だと本気で思った。


 こんな凄い物を書けるなんて亜希子お母さんの言うとおり、芥川賞物なんじゃないかと豪語しても過言じゃないと思った。


 とにかく麻美ちゃんは凄い。


 スポーツも万能だし、文学も凄い、まさに文武両道の人だと僕は思う。


「麻美ちゃんって本当に失恋を体験した事があるんだね」


 何を根拠にそんなことを亜希子お母さんは言っているのか?僕には分からなかった。


 そんな事を言われた麻美ちゃんはその大きな瞳から一粒の涙を流していた。


 僕は麻美ちゃんの小説を読んで、これが十歳が書く本なのかと疑うほどの物だと思い知った。本当に夢を持っている人は輝いて見える。


 正直僕は麻美ちゃんにちょっぴり嫉妬したが、僕には保父さんの夢があるのだと思って、その嫉妬の感情を押し殺した。


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