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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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亜希子お姉ちゃんと慕う施設の子供達

 朝けたたましく目覚まし時計の音がする。


 時計を見ると、午前六時を示していた。


 そろそろ起きようかと思って布団から出た。


 リビングに行くとお母さんは翻訳家の仕事をこなしていた。


「お母さん。もしかして夜通し仕事をしていたの?」


「うん。そうだけれども、今日と明日の分を終わらせて今日も純君達と遊ぼうと思ってね」


「そんな無理してまで遊ぶ事はないでしょ」


「でもお母さんは仕事も大事だけれども、みんなと遊ぶ方がずっと楽しいと思ってね」


「楽しいからってそんなにしてまで遊ぶことはないでしょ」


「そう?お母さんはみんなと遊ぶことの方が良いと思っているよ。とにかく今日明日の仕事は終わったから、純君達が学校に行っている間、お母さんは寝ているから、もし帰って来たらお母さんの事を起こしてね」


「分かったよ、起こすよ」


 本当にお母さんは大丈夫なのか?仕事をおろそかにしてしまったら僕達は食べていけなくなってしまう。それこそ、施設の子供達と一緒になってしまう。


 とにかくお願いだから、お母さん無理しないでね。と心の中で僕は呟いた。


 そんなお母さんは朝ご飯を作ろうとしている。


「お母さん無理しちゃダメだよ。とにかく朝ご飯は僕が作るから」


「ダメよ。純君はまだ、パンの焼き方ぐらいしか出来ないでしょ。お野菜とかお肉とかちゃんと食べて貰いたいからお母さんが作ります」


 お母さんはふらつきながらも、台所に向かう。


 そしてお母さんは料理をちゃんと作ってくれた。


 メニューは食パンにスクランブルエッグにソーセージとサラダであった。


 朝ご飯はピーマンが入っていないことに安堵の吐息を漏らしていたのだった。


 でもそれどころじゃない。お母さんは子供体系になってしまって無理をしすぎているんじゃないかと思って僕は心配だった。




 ★




 そして朝ご飯も食べる事も出来て僕はランドセルを背負って学校に行こうとするとお母さんは、「純君忘れ物だよ」忘れ物って何だろうと思っていると、お母さんは僕のホッペにキスをしてきた。


「お母さん僕はもう小学四年生だよ。いつまでもそんな事をしないでよ。こんな所をまた小百合さんに見せてしまったら、小百合さんに笑われてしまうよ」


 そう言うといつの間にか小百合さんは僕達の家の玄関にいた。


「小百合さん。見た?」


「見たって何が?」


「小百合さん僕を辱めようとしているでしょ」


「私が何を見たって言うの」


 目を細めてニヤリと笑いながら僕に尋ねて来た。


「もう、お母さんにキスをされた事だよ」


 と大声で半分泣きそうな声で言った。


「あれー純君小学四年生にもなってお母さんにキスをされる事が大好きなの?」


「そんなんじゃないよ!」


「とにかく今日も学校一緒に行きましょう。ダーリン」


「そのダーリンって言うのはやめてよ」


「どうして?」


「また意地悪な回答を僕に迫って来るんだ。小百合さんの意地悪」


 そう言って僕は小百合さんを置いて学校へと向かったのだった。


「ちょっと純君、私が悪かったよ。そんな事で機嫌を損ねないでよ」


「損ねてなんかないよ」


 そう言って、僕は小百合さんなんかもう知るものかと、思いながら学校へと向かっていった。




 ★




 学校が終わって小百合さんは、


「今日も施設の子達の所に行こうよ、純君」


「分かっているよ」


「もういつまでそんなつっけんどんな態度をとっているの?」


「そんな態度とっていないよ」


「いや、取っている、純君今朝の事で私の事が嫌いになっちゃったんじゃないかと思っちゃってさ」


「じゃあ、もうああ言う事はやめてくれる?」


「ああ言う事って?」


 ニヤリと笑いながら小百合さんは言う。


「だから、そう言う所が嫌いなんだよ」


「分かった分かった、悪かったよ。とにかく機嫌を損ねないでよ」


「分かれば良いんだよ、分かれば」




 ★




 小百合さんはランドセルを置いたら、僕の家に行くと言っていた。


 僕が学校から帰ると、お母さんは眠っていた。


 そう言えば、今日も剛君達と一緒に遊ぶ約束をしていてる。


 それで無理をしてまで翻訳家の仕事をしていたんだっけ。


 お母さんは僕が学校から帰ってきたら起こしてねって言われたっけ。


 お母さんを起こして良いのか迷っていると、お母さんはむくりと起き出した。


「ああ、純君、おはよう」


「うん。おはようって今午後だよ」


 お母さんは立ち上がりうーんと背伸びをしながら、「今日も剛君達と遊びに行くんでしょ」


「うん。そうだけれどもお母さん大丈夫?」


「純君、お母さんを誰だと思っているの?」


「お母さんはお母さんだよ。でも昨日の疲れが残って居ないか、大丈夫なの?」


「大丈夫だって。お母さんは純君をここまで育てて来たんだよ」


「そうなの」


 そんな時である。僕の家のチャイムが鳴り出した。


 小百合さんが来たんだ。小百合さんを出迎える為に僕は玄関に行った。


「あー小百合さん来たんだ」


「うん。今日も剛君達と遊ぶために来たんだよ。あの子達と遊ぶの楽しいからね」


 するとお母さんが「そう言えば、帰りのキスをしていなかったね」と言ってお母さんは小百合さんの前で僕にホッペにキスをした。


「あらあら、純君。またキスされている」


 小百合さんが目を細めてニヤリと笑いながら僕に言った。


「もう、お母さん、小百合さんの前でキスしないでよ!」


 するとお母さんは少し寂しそうな顔をしていた。


 そんな顔をされると僕は何か切なくなり、「とにかくもうキスはやめてね」と言っておいた。


「分かったわよ。隙あり!」


 そう言って、また僕のホッペにキスをするお母さんであった。


 本当に親子の縁を切りたいくらいになってしまった。




 ★



 そうして僕達は河川敷のバスケットコートとサッカーグラウンドで出会った剛君達に会いに行った。


 僕は小百合さんを自転車の後ろに乗せて、お母さんはママチャリで行くことになった。


 僕達が到着すると今日も五人揃っていた。


「来たよ」


 僕が言って、そう言うと小百合さんも亜希子お姉ちゃんも剛君達の所に行ったのであった。

「今日は何をするの?」


 明がボールをバウンドさせながら言う。


「決まっているじゃない。今日こそは亜希子お姉ちゃんにワンオンワンで決着をつけようかと思って私達は昨日の夜、猛特訓をしたのよ」


「良いわよ、明ちゃん、勝負してあげる」


 そう言ってお母さんがデフェンスで、明がオフェンスでワンオンワンの試合が始まった。


 お母さんがデフェンスに回って、それをかわして、明がお母さんを突破しようとしたところ、お母さんを抜ける事は出来なかった。


「フー昨日はあんなに練習したのにね。負けたよ亜希子お姉ちゃん」


「でも明ちゃんもう少しで私のデフェンスを超えそうになったよ。惜しかったね」


「今度は私とやろうか」


 と凛ちゃんは言う。


「いつでもかかってきなさい」


「じゃあ、私がデフェンスで亜希子お姉ちゃんがオフェンスで良いかしら?」


「良いわよ。私は中学校高校と大学もバスケ部だったんだから。そんじょそこらの素人には負けはしないよ」


 お母さんはオフェンスで凛ちゃんのデフェンスをくるりと回転させて、突破した。そしてお母さんはゴールに入れてしまった。


「負けたよ、亜希子お姉ちゃん。どうしたら、そんなにバスケがうまくなれるか教えてよ」


「ちょっと待って」


 麻美ちゃんが言う。


「私との勝負はしてくれないの?」


 とおっとりとした麻美ちゃんが言う。


「良いわよ。私と勝負しましょう」


 と亜希子お姉ちゃんは言う。


 亜希子お姉ちゃんがデフェンスでオフェンスは麻美ちゃんになった。


 結果はもちろん亜希子お姉ちゃんの勝ちだった。


 そんな亜希子お姉ちゃんは僕のお母さんなんだよな、そんなお母さんが勝つところを見るとその僕が息子であると誇りに思うときもある。


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