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子供になったお母さん  作者: 柴田盟
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殺意が沸き起こった時

 次の日学校に到着した僕は、クラスに入ると、駒木根はニヤニヤしながら僕の事を見つめていた。


「よう、高橋の旦那、今日は奥さんとは一緒じゃないの」


「・・・」


 僕は駒木根の言うことを無視した。


「てめえ何無視してんだよ」


 駒木根は僕の方に向かってきて胸ぐらをつかみにかかった。


 僕は今だと思った。


 駒木根が掴んだ手を丸め込み、駒木根の体制を崩した。


 体制を崩した駒木根は転げ落ち、僕はこの隙を逃さなかった。


 顔面やら腹部などをパンチや蹴りで殴りかかった。


「何をするんだよてめえは?」


 体制を崩した駒木根は僕に攻撃など届くはずがない。


 さすがは駒木根、体は大きくてかなりタフだが、昨日お母さんに教えて貰った少林寺拳法の技を教えて貰って反撃にかかっている。


「やめてくれよ。俺が悪かったから」


 僕は駒木根が泣いても許さなかった。


 そこで担任の篠原先生が教室に入ってきて、「おい、何をやっているんだ」


 僕の駒木根に対する攻撃は止まらなかった。


 僕は本気で駒木根の事を殺そうとした。


 これは高岡さんの分も含めて、攻撃を仕掛けている。


 高岡さんも駒木根に対して嫌な思いをしたに違いない。


 そして僕は篠原先生に羽交い締めにされて、止められた。


 クラスの人達は僕の顔を見て怯えていた感じだった。


 それに駒木根は小便を垂らして、気絶している。


「何をやっているんだよ高橋、駒木根ボロボロじゃないか」


 僕は篠原先生に向かって「うるせーよ。こんな奴殺してしまった方が良いに決まっているじゃないか」


「先生に向かって何て口を吐くんだ」


 そんな時高岡さんが「純君、もうやめて」と言う言葉に僕は頭が冷えた感じがして、攻撃をストップさせた。


 そしてようやく篠原先生の羽交い締めを解かれて、駒木根を見下ろした。


「僕は弱虫なんかじゃない」


「高橋、それは分かったから、とにかくもうやめろ」


 篠原先生に僕は注意をされてしまった。


 本当にお母さんが教えてくれた少林寺拳法の技は役に立った。


 これで僕と高岡さんをからかう輩はいなくなっただろう。


 僕は高岡さんやお母さんに守られてばかりの人間にはなりたくない。


 僕が高岡さんやお母さんの事を守る側だ。


 昨日お母さんは言っていた。そのクラスの駒木根って奴に最初は無視して、胸ぐらを掴んだときがチャンスと。


 周りのクラスメイトの人達は唖然として見ていた。


「何見て居るんだよ」


 僕は駒木根の机を蹴り飛ばした。


「もうやめろ、クラスのみんなもお前の事を見て怯えているんだぞ」


「そんな事は知ったこっちゃねえよ」


 僕の理性は吹っ切れていた。駒木根の奴には色々とされたからな。


 今度駒木根の奴が僕に喧嘩を仕掛けて来たら、本気で殺すつもりでかかって行った方が良いだろう。


「純君、どうどう、とにかく落ち着いて、ほら、深呼吸」


 僕は高岡さんに言われたとおり深呼吸をして、気持ちを整えた。


 少し落ち着いた。


 もうこれでクラスには孤立してしまうかもしれないけれど、僕には高岡小百合さんと言う委員長がいる。


 もし今度僕達の事をからかいに来たら、本気でぶち殺してやろうと思っている。


 僕は気を取り直して、自分の席に座った。


 隣には高岡小百合さんが僕の事を心配そうに見ていた。


 今更ながらだが、ちょっとやり過ぎたかもしれない。


 でも喧嘩となると僕はなぜか凄く熱くなって、理性が飛んでしまう。


 その後、一時間目と二時間目は自習になってしまった。


 駒木根は保健室につれて行かれて、僕は算数の計算ドリルをやることにした。


 本当にクラスは静まりかえっていた。


 みんな僕と駒木根の喧嘩に僕に恐れをなしたのだろう。


 それで良い。


 僕が勉強していると高岡小百合さんは「純君、かっこいいよ」と僕の耳元でささやくのだった。


 本当にこれで良かったんだよね。あのまま、もし誰も僕の事を止めに入らなければ、駒木根の奴を殺してしまいそうになってしまった。


 でも元はと言えばあいつが悪いんだ。あんないじめっ子本当に殺されてしまえば良いのだ。

 あいつのほくそ笑む顔を想像すると殺意が生まれそうになってくる。


 とにかくこれで僕達はいじめられなくなって来るであろう。


 学校が終わってホームルームが始まり、そして終わって、高岡小百合さんは僕に「一緒に帰ろう」と言われたのだった。


 高岡さんの家と僕の家は近所だから帰る方向が同じだ。


「純君、あれは何でもやり過ぎなんじゃない?」


「僕も分からない、あいつには色々とされたから、駒木根の奴が泣いても僕は許さないと思って本気で殺そうとしたんだ」


「純君、ダメだよ。そんな事をしたら純君犯罪者になってしまうよ」


 そうだ。高岡小百合さんのおかげで僕は自我を取り戻す事が出来たんだ。


「純君、今日は遊べる?」


「別に良いけれど」


「じゃあ、ランドセル置いてから帰るからそれまで待っていてね」


 そう言って高岡さんは自分の家に一度帰り僕の家に向かうのだろう。


 僕が帰ると、お母さんは「純君お帰り」と言って僕のホッペにキスをされてしまった。


 これだから僕は駒木根の奴にいじめられてしまうのかもしれない。


「何か純君、少したくましくなったね。昨日教えた少林寺拳法は役に立った?」


「うん。駒木根の奴を半殺しにしてやった」


「ちょっと純君、半殺しって何よ」


「あいつはあれぐらい痛めつけてやらないといけないと思って」


 するとお母さんは僕の頬を平手でピンタを喰らってしまった。


「何をするのお母さん」


「お母さんはそんな事をさせるために少林寺拳法を教えたのではないよ」


「でも駒木根の奴許せなかったんだ。あいつには酷いことをされたし、それに高岡小百合さんも凄く嫌な事を何度もさせられた」


 するとピンポーンとお家のベルが鳴り出した。


 きっと高岡小百合さんが遊びに来たのだろう。


 僕は玄関に行き、案の定高岡さんだった。


「あら、高岡さんいらっしゃい」


 さっきの緊迫した空気はどこへやら、高岡さんが来ると、お母さんは満面な笑みで迎えた。

「高岡さんに聞きたい事があるんだけれども」


「はい、その事なら今日私や純君にいじめを仕掛けてくる駒木根君に純君は痛めすぎ何じゃないかと思うほど、駒木根君の事を気絶するほど、攻撃を加えて居ました」


「純君、お母さんはそんな事をさせるために少林寺拳法を教えたんじゃないよ」


「でもあれくらいやらないと奴は反省なんかしないよ。これ以上やられない為にはあれぐらいしておかないといけないよ!」


「・・・」


 反論出来なくなったお母さん。


「とにかくお母さんも純君も落ち着こう」


 そう高岡小百合さんに言われて、僕達は落ち着いた。




 ★




「とにかく純君、少し痛めつける位なら許せるけれど、そんな半殺しまでしなくても良いとお母さんは思うよ」


 確かにそうだよな。あれはさすがにやり過ぎたのかもしれない。でも何だろう。あの時の自分の気持ちを思い出して見た。


 クラス中が怯えて声も出せない程になってしまっていた。


 僕はみんなに怖い思いをさせてしまったのかもしれない。


 そうだ。お母さんの言うとおり少し痛めつけてあげる位が丁度良いのかもしれない。


 高岡小百合さんが居なければ、僕は駒木根の奴を殺してしまっていたのかもしれない。


 僕は自分自身が恐ろしくなってきた。


 お母さんが僕に手を上げるのも仕方のない事なのかもしれない。


 お母さんは仕事に入り、僕と高岡小百合さんは宿題をする事になった。


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