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5-5-2 サンドゴーレムロード

「ぐふっ!」


 頬骨が折れるまで俺に刀で殴りつけられ、コルンバは気絶した。


「てめえは地獄行きだ、アホ」


 とりあえず黙らせておかないとな。ここで延々大声で騒がれたら面倒だ。


 はらわたは煮えくり返っている。刃の側をこのクソに向けたかったが、「業物の剣」だと、アホを斬ったときの刃こぼれが怖い。今この状況では、敵との戦闘になる可能性が高い。それに向け、余計なリスクを冒したくないからな。


 なに、コルンバの始末は、後でいくらでもできる。人間を斬るのは気持ち悪いから、このまま放置したっていいんだし。水が飲めなきゃ、数日の命だ。


――「これはこれは――」――


 声が響いた。大声が。どこからともなく。


「なに?」


 マルグレーテが見回す。


――「イレギュラーに、噂の『羽持ち』か。同時に排除できるとは、ラッキーなことだ」――


 哄笑こうしょうが響く。


――「アルネの奴も、時の琥珀こはくの中で悔しがることであろう……。今回も私の勝ちだ。あっさり罠にかかりおって」――


 イレギュラーだと……? その呼び名、もちろん聞き覚えがある。卒業試験ダンジョン、最後の宝の部屋で。ということは、こいつは……。


「姿を現せ。このド外道が」


 俺は叫んだ。ランとマルグレーテの前に立って、油断なく周囲を窺う。


――「ご所望しょもうなら……」――


 しばらく、なにも起こらなかった。……と、例の大きな砂の山が、動画逆回転のように盛り上がり始めた。高く。次第に人の形に。


「サンド……ゴーレム」


 でかい。三メートルくらいだ。半裸の男で、分厚い筋肉が体を覆っている。


「どれ……」


 ゴーレムは動き始めた。体の凝りをとるかのように、首を鳴らし、腕を伸ばして。


「モーブ!」


 マルグレーテが叫んだ。


「こいつ、ただのゴーレムじゃない。魂が入っているもの。サンドゴーレムロードよ。サンドゴーレムを操っていたのは触手の本体じゃない。きっとこいつよっ!」


「ほう。さすがはマルグレーテだ。うまく設計されている」


 ゴーレム野郎が唇の端を曲げてみせた。笑いのつもりらしい。


「どれ、アルネの仕掛けを崩してやるか」




●エリク家を襲った異変と陰謀の真実を、モーブはついに掴んだ。モーブの知らない不思議な秘密を口にすると、サンドゴーレムロードは「もうひとりのボス」を喚び出す……。

次話、「ダブルボス戦」。まさかのダブルボスに挑むモーブたちに声援を!



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