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4-9 あづまはや

おかげさまで「即死モブ転生」第二巻が、アース・スターノベルから発売決定です!


3/13発売。今回も桑島黎音先生の美麗イラストでヒロインたちが輝いております。Web版では諸般の事情で非公開にした、主人公とヒロインふたりの初めての夜も復活収録しておりますので、Web版の読者の方にも「ぜにひ!」とお薦めしておきます。


カバーイラストや書影はすぐ公開いたします。応援拡散購入等、皆様よろしくお願いします。


版元側で個別ページはまだ用意できていないようなので、「発売予定」告知ページを張っておきます。

https://x.gd/TQk6k

「レミリア、右だっ! マルグレーテ、お前は左っ!」


 目まぐるしく変わる大渦に俺は、次から次へと指令を飛ばした。渦外周の流れに船体は軋みながらの上下し、甲板は左右前後にシーソーのように揺れ続けている。


 これがもう三十分は続いている。船体の捻れに歪んで、船の外板の所々が剥がれたり反ったりしている。


「モーブ様っ」


 大揺れに倒れそうになった俺を、アヴァロンが背後から抱いて支えてくれた。


「大丈夫。私がお支えします」

「ありがとう」


 ──と、船が急に左に進路を取った。大きく。島を取り囲む渦から逃れ、船首を大海に向けて。


「……」


 見ると、グレイフィンが操船室から出てきたところだ。


「……」


 黙ったまま、俺の肩をぽんと叩く。そのまま舷側に進むと、割れて落ちた手すりを拾い上げた。そのまま、ブリギット島を見つめている。


「お諦めになったのですね、グレイフィン様は」


 囁くとアヴァロンは、俺の体をそっと離した。


「どうやらそのようだな」


 アヴァロンの腰に手を回してやった。スターフェアラーは、ゆっくりと島から離れつつある。すでに大渦の影響からは逃れ、揺れはほぼ収まっていた。


「……」


 俺は見回した。全員無事。怪我人もいないようだ。皆、状況を知り、黙ったままグレイフィンの背中を見つめている。


「……」


 グレイフィンの隣に、俺は並んだ。島の周囲はまだ大渦が取り囲んでおり、そこから発せられる色とりどりの輝きには、この世ならざる美しさを感じられた。


「……あれか」


 波や渦と格闘しながら突破口を探し、スターフェアラーは島を周回した。なので今は、ちょうど反対側が見えている。中央の岩場と熱帯樹の林の背後は、長く続く白砂の浜になっていた。ちょっとこの世ならざるほど白い砂で、まるで夢で見る楽園のようだ。その奥、ひときわ大きな樹木の根本に、明らかに人工とわかる構造物があった。


「……」

「あれが墓なんだな」

「……」


 黙ったまま、グレイフィンは遠い墓を見つめている。自身と隔てる、凶悪な海を挟んで。折れた手すりを、大渦に向けてぶん投げた。


「安心しろ、グレイフィン。約束する。失われた大陸からの帰路、俺達はもう一度ブリギット島への接近を試みると。必ずや、お前を墓前に上陸させてやると」

「……」


 グレイフィンは口をまっすぐに結んでいる。その唇が、微かに動くのがわかった。


「あづ……ま……はや」


 グレイフィンは、そう口に出したんだ。なぜか着続けている、ぼろぼろの服をまとって。

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