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黒の指揮官  作者: 冬城 一夜
異世界での生活
25/33

外伝 とある紳士の1日

主にネタな回です。

すいません、やっちゃいました(てへっ

帝国城内、謁見の間。


ずらりと並んだ近衛騎士、玉座には淡い紫色の髪の毛をした少女が座り、こちらを見下ろしている。


(あれが……)(獣人の……)(アレが真理を説く者?)


紳士は突き刺さる視線とプレッシャーの中、仁王立ちで美少女を、皇帝を見上げていた。


(ほぅ、美少女だな。意志の強さの感じられる瞳、そして威圧感というかカリスマかな?確かに皇帝であるだけはあるな、萌え!)


「貴様、陛下の御前で膝をつかぬとは!!!」


控える騎士の1人が声を荒げるが、少女の腕の一振りでその声は中断される。


「よい。……部下がご無礼を…。さっそく本題で申し訳ないのですが……私設の軍隊を持とうとしているという話でしたが、事実はどうなのでしょうか?」


冒険者の集まりが私設の軍隊を持つ、前代未聞である。魔界との戦争により人同士の争いなどはありえない世界。


しかし相手は冒険者である、何をするのか理解できないという家臣の意見と、皇帝自身の興味もあり、ギルドを名乗る冒険者の集まりに呼び出し命令をだしたのだ。


(やれやれ、なんでこんな面倒事になってるのやら……大佐が行くべきだっていったら、柔軟な人間がって言われるし、ミミィにも商会の仕事があるって言われる、うちの会社の上司並にひでぇよな)



――――


この場に紳士が立っているのは理由があった。発端は極単純な物。依頼を受けた先で立ち寄った村で獣人の幼女を見つけた、もちろん慈しむような目で凝視する紳士。


怯えたように獣人の女の子は逃げていきます。紳士はショックを受けました、変態として怯えられたり外見に怯えられたのならともかく、何も無いのに怯えられたということに。

(美少女の事なのでなぜ怯えられたのかわかります)


その土地に住んでいる獣人は少なく、領主の獣人差別によって住民からも差別と迫害を受けていました。


それを知った変態紳士の取った行動は、想像通りです。殴りこみました。しかも、幼女や美女、エルフ、獣人への愛を説きながら。


その演説は、紳士が「人間」だと加勢しなかった獣人の心を動かしました。エルフ、竜人がそれに加わります。


そして、「数」が多いということは変わり者も多いということ。人間の中でもいました。亜人萌えな兵、町人、商人。それらが加わり領主の軍勢を打ち破りました。


領主の行いへの他亜人や、エルフ達からの抗議によって紳士は罪に問われず、領主は裁かれました(ヒトの中で揉めれば魔界から侵攻などの対処に問題が出る為)


表面上は見えなくとも、差別や偏見というのは何処にでもあるもの。亜人の間で紳士の噂は瞬く間に広まっていきます。そして噂には尾ひれがつくもので………


曰く、濡れ衣をきせられた獣人の少女を助ける為に5000を超える国の兵士を打ち破った。


曰く、生贄として差し出されたエルフの少女を助ける為に魔獣の森へと単身突入し、少女を助けだした。


曰く、迷宮の奥の下位悪魔を単身で打ち破り、囚われた竜人を救い出した。


曰く、あの仮面は、姿の差異など些細なことでつまらぬ偏見を差別を無くせという事なのだ。


こんな話聞いても普通信じられない。だけどそこに真実が混じっていたらどうか?


差別を受ける獣人の少女の為に領主に立ち向かい、亜人への愛を説きながら戦い、領主の軍勢を打ち破ったと。


それを知っている者がいたら、「お前それ本当だったのか?」「あぁ、俺の故郷の村だよ!」「じゃぁ、あの話も本当だったのか?!」「どんな話だ??」


結果、尾ひれが付いた噂が全て「真実」とされる事になる、もちろん紳士の知らない所で。


紳士  所持称号:全てに愛を注ぐ者 亜人の救世主 真理を説く者 変態紳士 紙袋の男


「ミミィ、なんか朝起きたら私の所持する称号が増えているのだが、これはなんなのだ?」


――――




「ふむ?些か無礼だと思わないのかね?私は帝国の民ですらない冒険者だ。それを用があると呼び出した挙句、名乗りもせず、名前を聞きもせず要件だけとは」


肩を竦めて大きくため息を吐いて見せる。こちらを睨みつけている視線に殺気が混じってくるが、どうということはない。


あのウォルフガング宰相のジーサンからの視線には殺気が無いのだ。その他の有象無象共に睨まれてもなんとも無いわ、ふははは!


「失礼をしました、私は現帝国皇帝ファリスと申します。ミドルネーム等は長くなりますので、ご容赦くださいませ。それで冒険者様のお名前を教えて頂けますでしょうか?」


頭を下げることはできないのであろうが、柔らかい。下賤の者として見下した感じのしない謝罪に紳士はふむと唸る。


「こちらこそ失礼をした。私は紳士という。ふざけているようだがこれが名だ」


「紳士様ですね、早速で申し訳ないのですが、紳士様の所属されるギルドという冒険者の集まりが私設の軍隊を持とうとしているとお聞きましたが?」


杖を身体の前に置いて、両手を置く。小さく息を吐き出す。


「如何にも。この国の法に個人で軍隊を持っては行けないという法律は確認した所存在しない。故に咎められる事も無い筈だが?」


「はい、ですが、「力」を持つには相応の義務等を果たしてもらわなければなりません」


「ほぅ?素直に反乱でも起こされては面倒だから、我々帝国に従えと素直に言われてはどうか?」


がたりっと近衛騎士の一部が殺気立つ、やれやれ、この程度の罵詈雑言にもならぬ言葉で殺気立つとは程度の低い事だ。


「そうですね、それもあります。ですが一部より有事の際に帝国指揮下に入っていただけるなら認めても良いのではないか?という意見もありまして」


「くだらん茶番ですね?要するに維持費はこちら持ち、何かあれば捨て駒にも使えるあと腐れのない非常用軍隊?願い下げですね」


「ですが、そうでなければ認めるわけにはまいりません」


ふぅっとわざとらしく大きく吐息を吐き出す。


「それで?こちらにはこちらの目的がある。ティア様を守る為の軍を有事だから認められない、命令に従えと言われては作る意味がない。それに義務というなら権利を提示するのが当然であろう?」


ティアの名前を聞いてざわりっと周りがざわめく。


「貴様!!!黙って聞いておれば被り物も取らず、陛下への無礼の数々。この場で捕らえ殺されても文句はいえぬのだぞ!」


玉座の脇に控える、剥げ頭のおっさんが怒鳴り散らしてくる。なんだこのオッサン、これで重役?


「ほうほう、捕らえて殺すと言われますか?では、正当防衛させていただいて良いということですか?まぁ、それなら正当防衛の後、王国か連邦にでも行かせていただきましょうか?すでに話はついていますので。」


もちろん話なぞ通していないし、話がついているわけもない。


「なんだと貴様!」


激昂するおっさんにやれやれと肩を竦める紳士。紳士がマトモな格好なら問題ないのであるが、スーツを着て紙袋を被っているのだ、凄まじくシュールな光景である。


「黙れよ。この場で私が話しているのは皇帝だ。その許可も得ずに発言していいと思っているのか?そしてその発言は皇帝の代理であると見なされる。その意志でそう発言しているのだな?皇帝よ?」


ぞわりっと寒気のするような気配が謁見の間を包む、近衛達は息を飲み、先ほどまで激昂していた男はその場に腰を抜かす。


(ふむ?虚仮威しというのも結構効くものであるな。戦闘力であれば周りの近衛も中々のモノであろうに)


「申し訳ありません」


皇帝が頭を下げる、シンっと辺りが静まり返る。


「その者を捕らえよ、陛下への反逆である」


ウォルフガングが静かにそう言う。


「バカめ、冒険者風情がっ……な、なにをする貴様ら!」


「馬鹿は貴様だ。陛下の御前である!」


近衛に押さえられて、見苦しいおっさんが連行されていく。ふむ?予想よりも良い上層部なのかね?


「さて、これで帝国内の虫が片付いた感謝するぞ」


「ふむ?それで?今の茶番が私を怒らせて反応を見る芝居で無かったという根拠にはならぬと思いますが?」


にぃっとこちらを見て、笑顔を浮かべるウォルフガング。


(このジーサン、この展開を狙ってやがったな。食えないどころじゃねぇ。もう帰りたい、おうち帰るっ!)


「聞いた所ウォルフガング宰相の養女の為の私設軍隊ということですか?」


「そうであるが?」


「わかりました、それであれば認めましょう。ただし、有事の際援軍をお願いする事もありますので、無碍にしないでくださいね?」


にこりと皇帝が歳相応の笑顔でこちらに微笑んでくる。なるほど、ようじょつよい。


「こちらの目的に問題のでぬ限りであれば。それに義務であれば権利も発生するが、お願いではな?」


「……それで、失礼ですが、お顔はお見せ願えないのでしょうか?」

(行方不明のお兄様のような声、先ほどの発言といい、似すぎていると思うのですが……)


心なしか、皇帝の瞳に違う感情が篭っているような気がする。きっと気のせいだろう。


「無礼だが、コレを含めて私であるのでその願いは聞くことはできない」


我がの第六感がすぐさま逃げ出せと警告している、しかしここで逃げると話が纏まらないではないか!


「そうですか……その、お兄様とおよびしても?」


再び場が静寂に包まれる。なんなんだこの展開は!幼女にお兄様と呼ばれるだと!?!リア充爆発、いやこの場合爆発するのは私か?!


「私はただの紳士である。が、可愛い幼子がそう呼びたいのであれば、そう呼ぶがよい」


もちろんYESに決まっている!紳士たる者幼女の願いには応える!


「はい、お兄様♪」


にこりと微笑まれる。


ぐふっ、私の精神はもう限界だ。なにコレ、なんなの?!お兄様って呼ばれたよ、チクショウ!!!!


ぬ?!気づいた時には幼女に体当たりを食らっていた。思わず抱きとめてしまう。


「お帰りなさい、お兄様」


満面の笑みで抱きついてくる皇帝。ううむ?もしかしてこの体って皇帝の兄とかいうオチなのか?いや、まさかな?私のような言動の変態が2人といるはずはない。


態度や言動の違いで一発でわかるであろうし。


そして、条件反射で頭を撫でてしまう紳士であった。


おかしい、どうしてこうなった?一生分の運…いや、来世どころか末代?までの幸運を使った気がするぞ?


紳士の称号が追加されました。「行方不明の皇帝の兄」


紳士さんマジ紳士!

彼は女性を泣かせば相手が魔王だろうが、殴り飛ばす漢です。

ちなみにロリコンではありません、ロリコンも含んでいるだけです。

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