20話 温泉
太陽が黄色いよぅ………ふらふらする……。
結局あの後徹夜で3人で朝まで設計図を描き、あーだこーだと議論しつづけました。
肝心の鉱山については全然しゃべっていません………なので、今日寝て起きて夕方からもう一度会談をということで、なんとか宿屋まで戻ってきました。
「もう……だめ………」
ぼふっとベッドに倒れこんで、そのまま意識を飛ばす。Zzzzzz…………
んんっっっ!?よく寝たぁ。
起きると既に夕方。窓から陽の光が差し込み太陽が今、山に沈もうとしている。
変な姿勢で寝たせいか、身体が痛いような?
会談までまだ時間がある!そうなれば行くところは1つしかない!
ふふふふ………ここ、温泉があるんだよね!!!!!鼻歌を歌いながら受付へ。
「すいません、温泉利用したいのですが?」
受付へ行って、お姉さんに声をかける。
「宿泊中1日利用につき銀貨1枚で、何度入っていただいても構いません。かまいませんか?」
「はい」
銀貨1枚を手渡すと小さな札を渡される。これを温泉の入り口で渡すのかな?
「そちらのドアから渡り廊下に出ていただいて、少し上がったところになります。こちらの札が結界認識の札ですので無くすと入れません」
結界認識?防犯用か何かに結界があるのかな?魔物避け?どっちだろ。まぁいっか!
受付の横からドアを開けると屋根と壁のある長い通路、山の上の方へと伸びていっている。結構遠い?かも。
途中で通路が別れており、男と女、あと家族風呂(混浴の貸切かな?)になってるみたいだね。
鉱山にでてきた魔物のせいでほとんど宿泊客はいないっていってたし……貸切かな!?
脱衣所にくる。なんだろう?すごく日本の温泉宿って感じがするよ!?
棚をざっと見てみるけど、誰もはいっていないみたい。貸切だね!!やったぁ。
いそいそと軍服を脱いで籠の中へ放り込む。着たまま寝ちゃったから皺が……。予備があるからいいけど、クリーニングとかってどうすればいいんだろう?
あとで受付のおねーさんに聞いてみよう。
タオルを巻いて身体を隠して……ぅーん、自分の裸には慣れたけど、これ女の人入ってきたら気まずいなぁ。
脱衣所のドアを開けると、岩肌が整えられて、蛇口が付けられ洗体する所、そして岩風呂っていうのかな?かなり大きな露天風呂。屋根ももちろんついている。
そして木を使った3Mぐらい?の柵で隣とは仕切られている。湯船の向こう側は崖みたいになっている。
ふんふん~♪んん~♪温泉うれしいな~♪
鼻歌を歌いながら身体を洗う、男の時と違って丁寧に綺麗にするのだよ!そして髪の毛、これがまた面倒なのなんの!
向こうの世界でもお風呂が好きで結構長風呂だったんだけど、髪の毛を丁寧に洗うと1時間以上お風呂にかかってしまう。
ん~~、よしっ!っと。濡れた髪の毛をタオルで束ねて結ぶ。白い肌が上気してほんのりと桜色になっている。
さぁ、温泉だー!
「はぁ~~生き返るよねぇ?」
そういってため息を吐きながら、ぐーーっと身体を伸ばす。
少し胸元が寂しい気がする。リュカさんとかカミーラさんぐらいとは言わないからぎりぎりCぐらいはほしいなぁ。
泳ぐのはさすがに駄目だよねぇ?
ゆっくりと湯船の中を進んで、外側、崖の方へ。街とは反対側なのか、山間部の景色が綺麗だ。
太陽はもう山に沈んで見えなくなっており、月と星が空に広がっている。向こうの世界と違って灯りなんて少ない分、満天の星空。
お酒とか飲みながらゆっくりできたら、いいよねぇ?
身体の力を抜くと湯船に身体が浮かぶ、仰向けで星空を見上げながらぼーーーっとする。
誰もいないのでこれぐらいいよね?
温泉はいいよねぇ。はぁ………今度は皆と来たいなぁ。
けど、みんなこの世界に来てくれて嬉しかったなぁ……1人じゃないって良い事だよね。
どんなに仲がよくなっても、もしかしたら恋人とかが出来るかも知れないけど(いあ、男とってちょっと考えられないけどさ?
それでもココは異世界で、僕は異世界の人間。それだけはきっと他の人にしゃべれないし。変わることのない事実。
あはは、なんだろ?一番最初の頃にこうなるはずなのに、今頃泣けてきたよ?
ほんっと、皆馬鹿だよね!帰れないのに、たかがMMOで知り合っただけなのに、こっちまで来てくれてさ!
適当に生きて自分が死ぬまで平和ならいっかな?って思ってたけど……
やっぱり、皆が来たんだし。こっちで知り合った皆もいるんだし、ガンバルかな?
ふふふふ、世界を変えよう!!!
明日からがんばるよ!
――
「先輩!こっから先はムリですよ!!!」
「バカヤロウ!露天風呂といえば、覗き!それこそが正義!」
「けど、崖っすよ?もう足場ないですよ!?」
断崖絶壁といえるような崖を普段着の男が2人貼りつくようにして横に進んでいる。
「くっそ邪魔な結界だよな!俺の魔術でも結界誤魔化せねぇなんて!」
1人の男が悪態をつく。
「そりゃぁムリっすよ、露天風呂の結界は特にっ……ってひぎゃあああぁぁぁぁ」
叫び声をあげながら足を踏み外した男が、壁に張りいたまま落ちていく。
「ちっ、馬鹿が!しかし、これでティア様の入浴シーンは俺1人で……」
「よし、やっとついたぜ???」
男がゆっくりと崖から顔を覗かせる。
そして、そのまま男は力尽きたように崖下へと崖に張り付いたままずり落ちていった。
「時間で男湯と女湯入れ替えとか……ありかよ!?……ぁ?入れ替え後の男湯に入れば………」
次の日の朝。崖下で凍えている馬鹿な男2人が発見された。
温泉のお湯の入れ替え後のアイデアをくれた友人の変態に捧げます。
聞いたとき作者は鳥肌が立ちました、キモイデス!




