表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガールズトークin聖女村 〜聖女たちは今日も毒を吐く〜  作者: たくみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/67

28.お金よりも愛?

 う~~~~~ん………………


 伯爵が言いかけてはやめ言いかけてはやめを繰り返したのは何回目だろうか。もうそろそろ言ってくださらないものだろうか?


 早くせい!とどついてやろうかしらぁ……。


 おほほほほほ、教会長様そのような目で見ないでくださぁい。もちろんやるわけないですよぉ。自分だって命は大事である。


 いやぁそれにしても教会長様いい勘していらっしゃる。うんうん。


「リリア様は聖女様ですもの!もちろん結婚は愛する方とするべきだと思いますわよねっ!?」


 うん?


 しどろもどろな伯爵に我慢が効かなくなったのはリリアではなく娘のマリアだった。


 リリアはその発言に思わずキョトン顔で固まってしまった。


「聖女様お聞きください!私には心から愛する方がいるのです!」


 ほう。マリア様は16歳。恋だの愛だの、いいねぇ、青春だねぇ。そういう自分は恋だの愛だの存じ上げぬ17歳。


「でもお父様は駄目だと仰るのです!」


 ほう、父親の反対する相手。使用人とか?平民とか?なんにしても親に反対されると燃え上がるのが若人というもの。


「なぜ駄目なのです!?我らより上の侯爵家、お顔は天使も嫉妬する美しさ、身長も高く、スタイルも細すぎずマッチョ過ぎず程よい筋肉がつき、貴族が通う学園もトップで卒業なさった秀才ですのよ!?」


 うん?なんかちょっと思っていたのと違うよう。むしろ人気がありすぎて身の程を弁えろといったところなのだろうか。いや、だがツリーズ家といえば爵位は伯爵であるもの歴史、財力、権力を持つことで有名だ。王族にも嫁げる御家柄のはず。


「ああ、侯爵様はとてもご立派な方だ。見目麗しく、成績も素晴らしい、性格はまぁ……真面目な方ではある。だが、金がない貧乏貴族だ。お前のように蝶よ花よと育てられてきた金持ち娘に貧乏生活など無理に決まっている」


「愛があれば耐えられますわ!」


 お金問題。お決まりですなぁ。


 それにしても愛があれば耐えられるとは……若いというのか、現実が見えないというのか……。


「耐えられるわけないだろう!」


「そんなことありません!それに貧乏貧乏と言いますが、侯爵はいつも素敵なお召し物を身に着けていらっしゃいます!お父様が思うほど生活に困ってなどいらっしゃいませんわ!」


「…………だから問題なのがわからないのか?それに我が家が侯爵家に支援するメリットはないのだ」


 地位こそ下だが人脈も、資産も、王からの信頼も全て伯爵家の方が上なのだ。


「借金でございましょう?ですがそのような問題は我が家が払えば良いこと。可愛い娘である私の嫁ぎ先ですもの!当然援助するべきですわ!というよりもお父様が侯爵家を支援すればそれで済む話ですのにごちゃごちゃと……。持っているものが持っていないものを助ければ良いだけのことですわ!」


 目の前に立つ二人の言い争いを父娘父娘父娘……と顔ごと動かしていたリリアの視線が娘にロックオンされた。




 な、な、なんと!他力本願な発言!


 色々と信じられない!



「リリア様もそう思いますわよね!?聖女でいらっしゃるリリア様は愛の尊さを存じ上げでいますもの!私貧乏くらい耐えられますわ!ですがそれはお父様が侯爵家を支援してくだされば済む話!少し我が家とて手痛い出費かもしれませんが、愛は何ものにも代えられない崇拝すべき優先すべきものですわ!………………………リリア様?」


「どうかされましたか?リリア様?リリア様?大丈夫ですか?」


 目をキラキラとさせながら胸の前で手を組みリリアに語りかけていたマリアの目に戸惑いが浮かぶ。伯爵も戸惑いながらリリアの名を呼ぶ。


 大丈夫?ははは、大丈夫なのか心配すべきはあなたの娘の頭です。教会長様……小さくひぃぃぃぃと悲鳴が漏れていますよぉ。全く失礼ですなぁ。


 リリアは凄みのある笑顔を浮かべながらマリアに視線を向ける。その口がゆるりと開く。


「あり得ない」


「「え?」」


 リリアの口から出た低音ドロドロボイスに伯爵父娘はオロオロし始める。


「愛が最も優先すべきもの?

 あり得ない。

 親の金……いえ、商売や領地運営で稼いだ金を簡単に余所に払えとは?

 しかもその理由が愛とかあり得ない。

 貧乏ぐらい耐えられる?貧乏暮らしをしたこともない小娘が……………あり得ないぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


「「!!!?」」


 急に叫びだしたリリアに思わず仰け反る伯爵父娘。


「お、落ち着いてくださいリリア様!ああ、伯爵様、マリア様!申し訳ございません!リリア様は決してお2人に無礼を働こうとしているわけではなくて……ただちょっとお金にがめついだけなのですぅぅぅぅぅぅ」


 教会長が目に涙を貯め、冷や汗を流しながら父娘の足元に縋り付く。


「マリア様!!!」


「はいぃぃ!?」


「愛とは崇高なもの。そうですわ。愛とは素晴らしいものですわ。愛しいものを手に入れるためのキャットファイト。母が子供のために強くなる。命をかけて生命を誕生させる。愛とは人を強くするもの」


「え、えぇ」


「で・す・が、愛とは人を愚かにするものだということも忘れてはいけません!金……愛する男のために貢ぐ!彼の笑顔が見られるだけで幸せ!暴力……ああ、私がいけないの。私にしか本当の姿を見せられないの!ワンオペ……愛する人の負担になりたくない。あの人に頼られている!そんなふうに思うのも愛!……愛。……愛?」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ