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ガールズトークin聖女村 〜聖女たちは今日も毒を吐く〜  作者: たくみ


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23.燃える闘魂

 うーんうーん……と回想しながら頭を抱えるリリア。


「まあ、ガネーシャ男爵が領民の評判など気にしない方だったのが敗因でしょうね」


 と言うのはロメロだ。リリアが聞いているか聞いていないかわからないが一応意見として述べる。その言葉にピクリと反応したリリアにロメロとロビンは今がチャンスとばかりに話しかける。


「貴族には領民……というか平民を同じ人間だとみなしていない者も多いんですよ。平民が何を言おうと何も気にならない部類の方だったということですよ」


「リリア様。リリア様のお気持ちはよくわかります!助けてあげたのになんだこら!何がお気持ちだけでいいんですよね?だぁ!貴族は有償じゃい!貴族なら大人しく金出せやぁ!何のために助けてやったと思ってるんだこのくそ男爵がぁ!っていうか、何をこっちが流した噂を利用して自分の株上げてんだぁ、クソが!おらぁ!…………って思いますよね」


 冷静なロメロの言葉に一瞬何か閃きかけたのに……その後に発されたロビンの言葉に何を考えていたかわからなくなってしまったリリア。


 ……今何かこう、ここまでいい案が浮かびかけたのに――。ていうかそこまで思ってないし。彼の自分に対する認識がかなりやばい輩のような守銭奴みたいなものだとは。全く失礼なやつである。

 

 ぎろりとリリアに睨みつけられドキリとするロビン。


 うんうん、ドキドキだよな、わかるわかる。いやぁ睨みつける姿も可憐であるなぁ……ロビンとロメロを除く同じ室内にいる者たちは目の保養とばかりに遠巻きに見つめる。


 まあロビンのドキリはそんな感情からではないのだが。


 リリアの視線がロビンから室内にある大量の食料や衣服、手作りアクセサリーなどにうつる。


 ―――本当に、なぜこうなった。


 それらは、ガネーシャ男爵が何もお礼をしていないと聞きつけた領民たちの感謝の印だった。


 いや、もう本当に。なんでこんながめつくけちい悪徳領主の下にこんなに心優しい人々が集まっているのか。今回穢れが発生した場所は貧民街だった。あまり余裕のない生活の中から各自できるお礼の心を示したいと聖女村の前まで持ってきてくれたのだ。


 ありがとうありがとうと言いながら渡してくる人々。ガネーシャ男爵が被害が出てもいい、いやむしろ住民はいなくなってしまえという対応をしたことで現場は最悪な状況だった。救いは広がるのが早く貧民街から更に広がりそうだったので、それなりに早い連絡があったこと。


 とはいうものの、命は助かったものの、手を失ったもの、足を失ったもの、目が見えなくなったもの、様々な人がいた。


 住まいの状況もよくないだろうことは容易に想像できる。あの男爵が復興に手を貸すわけがない。人手もいることだろう。そんな中、貧民街の代表の人や周辺の領民がんざわざ隣国までたくさんの荷物を持って来たのだ。


 涙が出そうだった。


 嬉しさで。


 悔しさで。


 そして、申し訳なさで。


 ダンッと拳を机に叩きつける。ビクリと体が跳ねるロメロとロビン。いちいちこんな小娘にビビるんじゃないわよぉ。


 持たざるものから巻き上げてしまった。これでは私が悪役だ。


 それに……彼女の目の中に怒りの炎が宿る。全身からごおごおと炎が出ているように見えるのは幻覚だろうか。まじで燃えてないよな?水を持ってくるべきかこそこそと話し合うロメロとロビンを睨みつける。燃えてないやい。


 燃えているのは心である。怒りの炎で燃えあがっている。


 ガネーシャ男爵が彼らのその気持ちを自分の評価アップに利用したからだ。困窮して聖女に謝礼を渡せない領主のために彼らが代わりに謝礼をしてくれた、と。


 自分たち男爵家の為に。


 それだけ自分たちは慕われているのだ。


 自分たちがもっとはやく動いていれば、助かった者たちがいたのを棚に上げて。


 何よりも、めちゃくちゃ金を持っているくせに金を払わないケチ野郎のくせに。困窮して謝礼金を払えなかったってなんだ。そんな見え透いた嘘。みんな嘘だってわかってるわ。


 領民が少しでも、お礼をと。聖女に自分たちの心を、示したいと行動したことを――――――


 

 

 自分たちの為に、などとほざきよって…………!


 許せん!!!!!!


 ていうか金払え!!!



 金、金、金、金、金…………………………!





 彼女の頭の中が金パワーでフル回転する。



 被害に遭った人達に余計な苦労をかけてしまったことは大変申し訳なく思う。なんらかの形で手助けをしたいと思う。


 だがそれはそれ、これはこれ。なんかあんな不快な気分にさせといて、一人勝ちみたいな状況はぜっっったいに許せぬ。ていうか、許さぬ!


 何かないか、今度は領民に苦労をかけないような手は。




 うーん……うーん……考えろぉ……できる、できるぅ。自分はやればできる子だぁぁぁぁぁ…………………。




 そして、ピーン!とあることを思い出す。




 「なんでこんな大事なことを忘れていたのかしら……」


 リリアの頬がピンク色に染まり、口角が緩やかに上がる。その嬉しさ全開の笑みは花がほころぶような、周りを蕩けさせるようなもの。


 はぁぁぁぁぁ……なんと美しい、さすが聖女様。


 ため息を吐きつつも、まあうちの嫁さんが一番だけど、と思うロビンとロメロ。


 そんな胸中など知ったこっちゃないリリアはどこからか便箋を取り出すとさささっと手紙をしたため始める。終わると彼女の手元から手紙が消えた。


 願うだけで相手のもとに瞬間移動する手紙、 魔道具である。ロビンは自分のポケットを探る。ああ、その非常に高額な魔道具はこの前経費で買ったばかりのもの。経理担当者にガミガミ言われながら勝ち取ったばかりなのに。涙がほろりと出そうである。


 リリアは腕を組み机を凝視したまま動かない。


 非常に男前である。


 数分後、手紙がふわりと現れる。それに目を通したリリアの口角が上がる。今度の笑みも美しいことこの上ない。


 ただ、何やら邪悪な気配を感じるのはなぜだろうか。



「逆襲開始よ!」



「「はい」」



 何やら解決策を見いだしたよう。一人でわちゃわちゃ騒ぎ、落ち込み、再びわちゃわちゃ騒ぐ我らが聖女様。


 もはやこれから何が起きるかなど全くわからないが、とにかくリリアの顔に笑顔が戻った。


 だから良いのだ。




 嫁ラブ子供ラブ何よりも大事!な2人だが、なんやかんやいって、聖女という生き物に激甘な習性を持つ神官ロビンとロメロだった。




 


 

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