22.失敗
1週間後――
「なんでよぉ」
ロビンとロメロは前回と同じく冷や汗を流しながらリリアの前に立っていた。だが今回は手はアワアワと所在なく動き目もキョロキョロと忙しなく動いていた。
なぜなら…………
「リリア様ぁ、泣かないでください~」
「皆で次の手を考えましょう!ね?」
前回戦う宣言した部屋でボロボロボロボロとリリアの目から涙が流れているからだ。リリアが泣く様は儚くて、今にも消えてしまいそうだ。まあ、悲しくて泣いているわけではないので消えるわけないのだが。つくづく外見というのは中身を上手く隠してしまうものである。
ところでなぜ彼女が泣いているのか?
それは、リリアが考えたガネーシャ男爵からお金を巻き上げるぞ作戦がうまくいかなかったから。
リリアはロビンとロメロが何やら慰めの言葉を言っているのはスルーし、考える。
自分の作戦はうまくいっていたはず、そうそのはずだった――。
「おい、聞いたか?領主様が穢れ祓いをしてくださったリリア様に何もお礼してないらしいぞ!」
「まあ!この領地を救ってくださった方にお礼の一つもしないなんて業突く張りの最低野郎だねぇ」
「きっとガネーシャ男爵には天罰が下るわよ」
そんな会話が至る所でなされるガネーシャ領で建物の陰に隠れながらにやりと笑うのはリリアである。
計画通り。
この世では特に平民の聖女に対する尊敬の念は非常に高い。穢れが発生した場合穢れに侵された人々を取り押さえることはできなくはないが、症状は悪化していき、人々に感染していく。根本的な解決にはならない。
穢れは聖女が扱う魔法でしかどうにもならない。
だからこそ聖女は崇められ、大切にされる。
聖女がこの世から消えれば世界は滅びてしまう。目に見える活躍をする聖女は各々の国王たちよりも人気が高いくらいである。
それを利用した。
ロメロとロビンにガネーシャ領に領主が聖女に謝礼をしなかったと噂を広めさせたのだ。貴族としてそのあるまじき行為に呆れ半分憤慨半分の領民を見てリリアは作戦成功だと確信した。
貴族というものは面子が大事。これだけ領民の間に不評が広まればガネーシャ男爵も慌てて謝礼を払うはず。
ガヤガヤとガネーシャ男爵に対する悪意が高まるのをニヤニヤと笑いながら見続けるリリア。
そして、その顔を引き気味に見るロメロとロビン。
二人はちょっと思う。なんでこの人が聖女の力を持っているのか、と。そんなことを思われていると……既に知っているリリアは構わずニヤニヤし続ける。
彼女は確信した。
ガッポガッポ
ガッポガッポガッポガッポ
ガッポガッポガッポガッポガッポガッポ
彼女の頭に浮かぶのはじゃんじゃん湧く金、金、金
のはずだったのに、なぜこうなった。




