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白き勇者は黒き王子へ復讐を挑む  作者: 鴉野 兄貴


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12/13

エピローグ 誰も知らなかった! 魔王と呼ばれた者の末路!

 巨大な目があった。

 ぼくをける目は魔法を放ってきた。


 巨大な腕がはえてきた。

 その腕が戦士を吹き飛ばした。


 目玉がボコボコ増殖し、足の形になると甲虫の背のような外皮が覆う。

 その両脚が大地を踏みしめた。


 目玉が胴体になり、また目玉を生み出す。


 腕が爪を伸ばし、爪が剣となり、そしてその剣をまがまがしい腕が握った。


 爪は伸びていく。

 やがてそれは蝙蝠の翼になって、庭園を陰で覆い隠した。

 増殖する目玉は角になり牙になり爪になり、硬化していく。


「ウォオオオオオ……」


 黒太子は魔物だった。人食いの魔物だったのだ。


 ぼくは剣を抜いた。

 人殺しの黒太子は人食いの魔物である。

 『だから』容赦なく、斬れる。


 ーーめざめなさいーー


「やめて」


 声が聞こえた。


「やめるのよ。勇者」


 踊り子がぼくと黒太子だった魔物の間に立ちふさがる。

 その胎は確かに膨れていた。


「汚らわしい……! 奴と子を為したか!」


 ぼくは黒太子と共に踊り子を斬った。

 色めき立つ仲間たち。口元を覆う占い師。


 ーー目覚めなさいーー


 伸びる大きな腕。

 腕は踊り子をつかみ取る。

 目玉のある腹が大きく裂け、もう一つの口となる。



「やめろ!」


 踊り子と情を交わしていた戦士が腕を伸ばす。戦士の腕ごと、目玉の口は踊り子を飲み込んだ。


「ウマイ……ウマアアアイイ! ……ああああ何たること」


 目玉が揺れる。

 腕が縮み、目玉に戻っていく。

 黒太子の姿に一瞬戻る。


 だがその姿はまたブクブクと膨れ、魔物となっていく。


「ああああ。殺せ。殺してくれ……コロシテ喰ゥゥ!!!」


 魔物が襲ってくる。


 ーーゆうしゃよめざめなさいーー


「妹を! 妹を殺した!」

「あの女は悪魔と情を交わした! 戦士を裏切った!」


「私たちが今までどのような生活をしていたか知らないくせに!」


 争うぼくらを尻目に黒太子だった魔物の剣は確実にぼくらを追い詰めていく。

 普段の彼としてはありえないのだが女絡みでさすがに動揺してしまったらしく隙を見せてしまった戦士に次いで盗賊が倒れ、そして商人も。


 ーー目覚めて。私たちの。私だけの勇者ーー


「奥さんが! 商人さんの奥さんと子供さんを綺麗な水のある村に隔離して疫病から守ってくれたのはあの方なのよ!」


 何を言っているのかわからない。

 ニンゲンハホロボサネバナラナイ。


「奥さんは、奥さんは……」


 何故か侵入した悪しき水の病で亡くなったの。

 占い師が涙を流す。


 いいことではないかね。

 我が守る乙女たちを滅ぼした民の末裔どもよ。


 ーー目覚めの勇者よ。さあ立ち上がりなさいーー


 ああ、今ならわかる。

 酒に酔ったのは嘘だ。

 今は血に酔う私。

 私は、このような存在なのだ。



 母も、あの子も、『彼女ら』もおなじ存在なのだ。

 かつてこの王国に滅せられた同胞は生きていた。


 たったひとつ残った彼女。

 貝ににて似ていない、別の形に収斂せよ。


 深い深い地の底に潜み忘れ去られるまで飢えに乾きに耐え。

 地熱に耐え災害に耐え地震に耐えて地脈の竜を力に。


 それはやがて殻、己のあり方を捨てた。


 小さな魚のように泳ぐナメクジの如き姿へ。

 ナメクジウオはサンショウウオのような姿へ。

 トカゲのような姿から四脚で歩く毛のある生き物に。


 やがて人に近づいた生き物に。

 餓鬼族、犬鬼族、ドワーフ、エルフ。

 そして人の姿に。


 最も人の願望をかなえる姿に。性格に。

 傷つけることを躊躇うような美貌と善良さ、献身さを手に入れる。

 人の世界に交わって手に入れる。


 何百年も、何千年でも待つ。

 人という生き物が消滅するその日まで待とう。

 不老の特性を生かして、ただ待つだろう。


 内に秘めた(のろい)はさらに増しその疫病はこの国を覆いつくすだろう。

 そして善良で優しくて献身的な彼女らは人々を癒さんとするだろう。

 ぼくら守護者ゆうしゃは、愚かな男たちは彼女たちを愛し頼り守るだろう。ぼくらは人間を駆逐するため糞便や唾液、吐瀉物と共に病根をまき散らすだろう。


 彼女たちとともに水はどこまでもどこまでも広がっていき。そして。

 人は人を食い続けなければ、人食いの魔物になるだろう。


 人間はやがて自らのカタチを守るため人食いの魔物となるのだ。

 人であっても人の道を踏み外した魔物となるのだ。


 ーーふふふ。勇者よ神の名の下に今こそ使命を果たすのですーー



【終わりの始まり】


 黒太子は死んだ。

 占い師はどこかに旅立った。


 ぼくと情を交わした彼女は恐らく魔物にはならない。

 彼女はきっと、丈夫なぼくの子、新たなる勇者しゅごしゃを孕むのだ。

 そして世界はニンフが覆いつくすだろう。



 夢を見ていた。

 最悪な夢だね。


 だが夢じゃないのはあの子がいないこと。

 帰りに寄った小屋で樵は病で死んでいたということ。


 ばかばかしい。ニンフとか。……あれは全て夢だったんだ。



 ステップ、ステップ、ターン……。


 ぼくはかつての村に立つ。

 ぼくに手を差し伸べるのは幻影だろうか。

 そんなこと、もうどうでもいい。


 枯れた花は再び実を結び、また花畑になった。


 ぼくらは二人、ただ幸せに踊る。


 とても、幸せだった。

 だれも、周りにいなかったから。


(Fin)

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