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はじめに

 うちには10匹の金魚が住んでいます。

 縁日で掬ったのでも、ペット屋さんで買ったわけでもありません。

 2021年10月に、私が庭師として働いている庭園の大池(16メートル四方、深さ1.8メートル)から、1リットル容量のペットボトル3本に分けて連れて帰ったのです。

 今からでは想像がつきませんが、ペットボトルのあの口からつるりんと入っていけるほど皆小さかった、体長2~3センチでした。


 なぜ飼うことにしたか、それは、その池の水面が真っ黒に見えるほど、黒い稚魚で溢れてしまったから。

 放置すれば生存競争に合わせ、共食いをするか、病気になるか、鴉や鷺の餌になるだけです。

 せめて10匹でもその池の人口密度(魚口密度)を減らし、少しは良い人生(金魚生)を送らせてあげられるかな、と思ったのでした。


 なぜ稚魚が大発生したかですが、その池には元々、150匹以上の錦鯉と、体長20センチ超えの和金がたくさん泳いでいました。

 6年前くらいだったでしょうか、暑い暑い夏の夜に噴水が止まり酸欠に陥ったようで、朝出勤してみると、池の水面に100匹近い魚が20センチから30センチの白い腹を浮かべているという、トラウマ寸前の景色を見てしまったのです。


 一番大きな錦鯉が体長50センチくらいでした、本当に可哀想なことをしました。


 庭師仲間で手分けして、手遅れになってしまった魚たちはサヨナラして、弱った鯉を他の池に移し、噴水を直し、して、「錦鯉も50匹くらいは生き残ってるね」とホッとして数年。


 気が付いたら「え、うそ?」と言いたくなるほど、池は小魚で一杯になっていました。

 軽く10万匹はいそう。

 ほとんどは「お前、ただの鮒だろ?」と言いたくなるような黒い和金。

 たまに尻尾の長い、コメット型。

 超レアに三つ尾(出目金みたいな尻尾)。

 そんな金魚たちに交じって小さな鯉たち。


 成魚がたくさんいた頃は、稚魚を目にすることはありませんでした。ほんの小さな時に大きな魚たちに食べられていたのでしょう。

 成魚たちは毎年、卵を産んで受精していたはずですが、生き残る確率がゼロに近かった、すでに池の許容範囲まで、魚の数も大きさも飽和状態だったということ。



 稚魚が体長2,3センチに到達してやっと、私たちは池の中で何が起こっているのか理解したのでした。

 失ってしまった100匹もの成魚に代わって子どもたちが育ってくれる、「命の仕組み」というものを目の当たりにしたわけです。


 3年前は真っ黒だった稚魚たち、今ではほとんど全部、赤く変わりました。

 黒は保護色なのかもしれません。

 目立ってしまうからこそ、最近になって青鷺や鴉に捕まる魚が増えています。

 こうやって自然淘汰されながら、残ったものがまた大きく育っていくのでしょう。


 職場では大池に残された兄弟たちを眺め、家では家族になってくれた10匹に感謝しながら、暮らしています。

 金魚に餌をやる、というモチベで休日も平日同様起き出して。

 とはいっても朝8時ののんびりですが。


 今までパラパラと金魚のエピソードを短編でご紹介してきましたが、いっそのこと、10匹それぞれの事件やキャラの違いなどご紹介しながら、ひとつにまとめてしまおうと思っています。


 読了済みのエピソードがありましたら飛ばしてください。


 よろしかったらお付き合いくださいませ。


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― 新着の感想 ―
陸ねぇさまの金魚エピソードが始まってたー! わああ、気づくの遅れました。興味深く読ませていただきます。 噴水が池の酸素を担っていたのですね。
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