第十六話
あの後、千桜のお爺さんから模擬戦に誘われ、道場の方に移動した。
前回は二人同時にやったが、今回は一人ずつだ。
そして、審判は千桜が務めるようだ。
「さて、誰から行く?」
「俺からお願いします」
お爺さんが俺と葵の両方に聞くと、葵が真っ先に前に出た。
葵が最初か。俺が最初にやろうと思ってたんだが……まぁいいか。先に葵の実力を見てみようか。
「分かった。前と同じで、ルールは三回相手に竹刀を当てたら勝ちでどうかな?」
「はい、分かりました」
どうやら、前もやった時と同じように、三回相手に竹刀を当てたら勝ちになるようだ。
前回、俺と葵は全くお爺さんの身体に竹刀を当てることができなかった。
だが、今回はステータスも上がったし、速さが段違いだ。
「では、両者構え……始め!」
二人は、三歩ほどの間を取り竹刀を構えて向かい合うと、最初の間は見つめあっていた。
「はァっ!」
数秒の間、どちらも動かないでいると、葵から仕掛け、横なぎのとても早い攻撃をする。
だが、それをお爺さんは一歩後ろに下がり回避すると、そのまま前に詰め、竹刀を縦に振る。
「うおっ!」
葵はそれを咄嗟に後ろに転がることで回避する。
だが、そのまま転がった葵を追撃し、立っていない葵に竹刀を当てた。
「一本! お爺様!」
「あー一本取られた。じゃあもう一本!」
また最初の立ち位置に戻る。
今度はどちらから動くのだろう。
「では、始め!」
千桜がそう言った瞬間、今度はお爺さんから動いた!
足を流れるように運び、一瞬のうちに葵の懐へ入る。
「くっ……!」
「ハッ!」
そして、葵は後ろに飛んで回避しようとするが、間に合わずに横薙ぎに振られた竹刀を脇腹に受ける。
「一本! お爺様!」
「早かった……」
「まだまだだの~」
「くっ、もう一本!」
今のところ、一回も竹刀を交じわらせていない。全て一撃で終わっている。
次はどうするつもりなのだろうか。
「では、始め!」
「ハッ!」
初めの合図と共に、葵が袈裟斬りを放つ。
そして、それが避けられると、一回葵は後ろに下がりお爺さんの対応を見る。
円を描くように互いが移動しながら、相手の隙を伺う。
それをしばらくしていると、お爺さんが急に葵の元へと移動し、逆袈裟斬りをする。
それを葵は受け止める。だが、葵の竹刀が受け流され地面につくと、竹刀が葵の頭に優しく当たった。
「一本! 勝者 お爺様!」
「あー! また負けた!」
「お疲れ」
葵がこちらに向かってくるのを確認し、俺は先程持ってきた竹刀を持ち正面に立つ。
「前回よりも強くなったかい?」
「えぇ、あれから少し努力をしたので」
「両者、構え!」
そう言いながら、竹刀を正眼で構える。
最初はスピードで勝負しよう。
「始め!」
「フッ!」
始めの合図と共に、先程お爺さんがやっていた足を流れるように移動させ、相手の懐へと入り込む。
そして、逆袈裟斬りを放つが、それは竹刀で別な方向へとそらされる。
「ハァッ!」
逸らされたあと、今度は竹刀を横薙ぎに振る。
それはお爺さんに後ろに一歩避けられる。
それを俺は一歩さらに詰め寄り、袈裟斬りを放つ。
その攻撃を竹刀で斜めに受けて俺の竹刀が受け流さると、そのまま竹刀と一緒に体勢も崩れ、横腹に竹刀が当たった。
「一本! お爺様!」
「ふぅ、蓮哉くん早くなったね」
「えぇ、それはもちろん」
だって『ステータス』が上がったのだから。でも、それを持ってしてもこの人には対応されてしまう。
「では、次お願いします」
「そうだね」
最初の位置へと戻り、心を落ち着かせて正眼の構えをとる。
今度はしっかり一本をとる。
「では、構え! ――始め!」
千桜が始めというと、先程まで目に映っていたお爺さんの姿が消えた。
「……っ!!」
咄嗟に後ろに飛ぶと、先程まで俺がいた場所にお爺さんがおり、竹刀を下から上へと振っていた。
「ほぉ、これを避けるか……さっきよりも早いのだがな」
さっきより早いとか……通りで見えないわけだよ!
そう考えていると、素早く俺の方へ移動して袈裟斬りを放つ。
それをギリギリ受け止め、弾くとお爺さんの腹を狙って横薙ぎに振る。
俺の攻撃を竹刀で上に逸らし、ガラ空きとなった俺の身体へと竹刀を当てる。
「一本! お爺様!」
「ハァハァ……早いですね」
「ハッハッハ、そうか?」
「はい、では次お願いします!」
クソ、今の動きは早かった。
特に最初は全く見えなかったし。
「では、構え!」
竹刀を正眼に構える。お爺さんは今度は竹刀を下に降ろしている。何をするつもりだろうか。
だが、今度はもっと早く攻撃しよう。
「始め!」
「ハァッ!」「ハッ!」
俺が思いっきり袈裟斬りを放つ。
そして、すごい衝撃のあと――俺の手から竹刀の感覚が消えた。
「勝者! お爺様!」
手を見てみると、竹刀がない。
お爺さんを見てみると、逆袈裟斬りをしたようで、竹刀が上へと上がっている。
多分、竹刀を飛ばされたのだろう。
「はは……お爺さん強すぎるわ」
どうやら、この人に勝つのはまだまだ先になるようだ。
ブックマーク、評価、感想お願いします!
誤字脱字ありましたらお知らせ下さい!




