第十四話
奏と愛花さんを栄司 さんと美耶 さんにつかせ、残った俺たちは葵たちの家の方に歩きながらモンスターを倒していく。
「ふぅ、モンスターめっちゃいるよね」
「そうだな……短時間に結構遭遇するな」
先程から、数分間歩いていると、何らかのモンスターと何故か遭遇している。
これは、もし何も戦う力とか武器がない人はモンスターに襲われて死んでしまうだろう。
「とりあえず、俺らは人数が多い。さっきみたいにモンスターが多くなければ消耗は少ないだろう」
「そうだね、俺も段々と『聖騎士』を使えるようになってきたし」
周りを警戒しつつ、話しながら歩いていると、十字路を曲がったところに何か箱が置いてあった。
「なんだ? あの箱」
「ん、なんだあれ?」
道路の真ん中に置かれていて、とても怪しい木でできた箱が俺たちの前に現れた。
「宝箱か?」
葵がそんなことを言うが、宝箱なわけないだろう? 宝箱って下が四角く、上が丸くなったあの箱をイメージする。
だが、俺たちの前にある箱は、よく昔の船に積まれているような四角いただの木箱だ。
「どうしたんですか? 蓮哉さん?」
俺たちが止まっていることを不思議に思ったのだろう。後ろを歩いていた愛花さんがやってきた。
「あ、そうだ。愛花さん、あの木箱鑑定してくれませんか?」
「はい、いいですよ?」
愛花さんの鑑定があればモンスターかそうでは無いかがとても分かりやすい。
「あれ、鑑定した結果ただの木箱でしたよ?」
宝箱……では無いのか。
まぁ危険がないんだったら開けてみるか。
「よし、葵。開けてこい」
「なんで俺!?」
「いや、ほら、罠とかあるかもじゃん?」
「そうそう、女子に罠があるかもしれない箱を開けさせるの?」
「いや、罠あるならなおさら嫌だよ!?」
全く、度胸ないなー。
俺はそう思いながら右手を突き出し、木箱の上ギリギリを狙って無属性魔法で作った、『ただの魔力の塊』を木箱にぶつけた。
「「「えぇー!?」」」
「よし、壊れた」
「壊れたじゃないよ!?」
「まぁまぁ、開いたんだから中身見ようぜ」
そう言いながら木箱に近づいていく。
木箱の中身を見てみると、中に入っていたのは金属で作られた盾だった。
「盾しか入ってないか……いや、盾が入ってる時点で異常か」
しかし、これはなんでこんな所にあったのだろうか? もしかして、普通にゲームとかである宝箱とかそんな扱いなのか?
いや、だとしたらなんで木箱なんだよ。
それに盾って誰が……あ、葵の職業って『聖騎士』だったよな。
「ほい、これ。お前の職業『聖騎士』だろ? 盾使うよな?」
「お、そうだな」
葵に盾を渡すと、葵は両手に持っていた剣を片方置き、代わりに盾を装備すると動作の確認を始めた。
「うん! これ、ちょっと、重いけど! 使えるかな!」
動き回りながら葵が言う。
うん、気に入ったのなら良かった。
それにしても、この木箱が宝箱か……いや、宝箱とか普通に落ちてる方もおかしいけど。
「さて、進むか」
「お、そうだな」
あれから、一時間位歩いた。
俺たちは一人数回ずつモンスターの相手をし、今では魔法を教わり終えた栄司さんと美耶さんも戦闘を体験して戦えるようになった。
栄司さんはそのガタイの良さから大剣を振り回して敵を重量の乗った攻撃で叩き潰し、美耶さんは槍と魔法を上手く使って立ち回り、モンスターに対して臨機応変に対応していた。
そんな感じで進んでいると、もう少しで葵や千桜たちの家がある地域に入るようだ。
「あともう少しで俺の家だな」
「そうだなー、最初葵の家に行ってみて、両親がいなかったら多分千桜の家だよな」
「そうね、私たちの家族結構強いからモンスター相手でも平気だと思うわ。それに、私の家は結構広いから今日は私の家に泊まりましょう?」
そうか、もう四時くらいになるか。
そうだな。野宿よりかは家でしっかり疲れを取りたいな。
「賛成です! 初めてのお泊まり楽しみです!」
「ん、久しぶりのお泊まり」
はは、女子たちはなんでこんなにも明るいんだ……それに、お泊まり会って。
モンスターが出現したのに呑気だなぁ。
「まぁ蓮哉、仕方ないよ。みんな多分色々血をみたりしてストレスを感じてるんだ。こうやって明るく振舞ったりしないと気分が落ち込むんだろう」
「あーそうだな」
どうやら今のは声に出てたらしい。
確かに今日は生き物を殺したおかげで若干だが、俺も精神が疲れてる気がする。
そうか、お泊まり会をすることで少し軽減することができるな。
「それなら、千桜の家に泊めてもらうか」
「そうだね。それに、なんかあった時千桜の家族がいるのは心強い」
「確かにな」
そんなことを話しながら歩いていると、ようやく葵の家に着いた。
「じゃ、俺は中に父さんとかいるか見てくるよ。あとは食べれそうなものとか、必要だと思ったものとか持ってくる」
「おう、了解」
そうして葵は家の中へと入って行った。




