寂しくない別れの日
葬儀の日が訪れた。空には雲一つない。
「今日は良い日ですね。彼を見送るにふさわしい」
「良い天気だが、客が誰もいないんじゃなあ。空の青さが目に染みるぜ」
「やっぱりちょっとだけ、寂しいね」
ロボットの頭部に備えられた視覚センサーが、キャノピーの下で動く。
「少しだけ、寂しくなくなりそうですね」
AIは、自分の端末に備えられたセンサーをロボットに追従させる。また、人造人間の被ったゴーグルへその情報を転送した。宇宙船が一台だけ、会場へ向けて降下してきている。肉体を機械化した者たちが用いるタイプだった。
彼らが宇宙船を認識してから間を置かず、宇宙船から通信が入った。喪主であるロボットたちへ向けての挨拶と、AIに対する補助の依頼だった。到着早々に手伝って欲しいことがあるという。
「タスクリストを受け取ったよ」
「どのような作業でしたか?」
「何か、持ってきた機材の設営を手伝って欲しいみたい」
「一体何をする気だ?」
AIが、会場の設営に使用した端末を始動させて作業準備にかかる。ロボットの誘導により着陸した宇宙船がハッチを開くと、端末たちは機材のコンテナを運搬し始めた。
彼らの持ち込んだ機材は、通信機器とその動力源、そして各種センサを備えた端末が多数。
「連絡も到着も遅くなって申し訳ない。太陽系外からの要請に応えるため、これらの機材をかき集めてきたんだ」
船内から現れた機械化人たちも、各々が設営作業にかかる。
「要請とは?」
「遠隔で葬儀に出席可能な環境を、希望者を代表して整えて欲しいというものだ」
ロボットの送った訃報を受け取った者たちは、現地の設備が古く不安定な物と判断した。彼らが通信を介して出席するという形を取るのは不可能だ、とも。
今ここにいる彼らは、地球から最も近い場所で活動していた者たち、ロボットが参列を期待した者たちだった。
機材のセットが終わり、遠隔地からの参列者受け入れが始まる。ロボットたちも、彼らの訪れる拡張現実空間へアクセスした。
星の数ほど。この表現がふさわしい、おびただしい数の参列者たちが彼らの前に居た。
「ははっ。こんな人数、生まれてこの方お目にかかったことないぜ。ロボットの旦那はどうだ?」
「私もです。彼を、彼らを見送るために、これほどの数が集まるとは……」
「まだ、寂しいかい?」
「まさか」
「ふたりとも、見てないで手伝ってよぉ」
一足先に会場のシステムとリンクしていたAIが、殺到する参列者の受付を捌きながら悲鳴を上げていた。
「今行きます」
「今日も、大変な一日になりそうだな」
「ええ。それでも、今日は良い日です」
「同感だ」
どこか嬉しそうな三体の視界の隅で、参列者のカウンターは回り続けていた。




