193話 干渉
「これはモノリスに対し、何者かが手を加えた結果に違いないということさ」
植物とモノリスが一つになった生物の存在を知り、スヴァローグはそう言った。
支援型のモノリスであれば行動を共にする事は大いにあるらしいが、どうやらこいつは防御型。
以前獲得した蜘蛛のモノリス――生粋のサポート役である支援型の支援タイプであっても、運命共同体よろしく、生死まで共にする選択をするようなプログラムはされていないらしい。
「少年――!!」
スヴァローグの注意喚起と同時に、巨大植物の根元が青白く発光する。
鈍い発光は、モノリスがスキルを使用する予備動作。
頭で理解するよりも早く――反射的にパグとN2を抱え、即座に、全力で――近くの岩陰へと身を潜める。
「野生動物もびっくりの反応速度だったな」
「そりゃお前、これだけ色々起きてたら、流石に警戒するだろ……」
「そんなに懸命になるとは予想外だったが、まぁ、いくら防御タイプと言えど、何をしてくるか分からないからな。モノリスの動作に対しての過剰反応は、至極正しいと言えよう。――それよりも……」
スキルを使ったぞ……少年、植物がスキルを使った――と、スヴァローグ。
声色からは、最早驚きが限界突破している様が伝わってくる。
「その様子だと、やっぱ珍しいんだ?」
「ははは。少年。いいか、少年。よく聞け。珍しいなんてものじゃない。そうだな……この植物が、急に喋りかけて来る方がまだ納得出来る、と言えば凄さが伝わるかな?」
「うーん……多分俺、そっちの方がいいリアクション出来ると思うよ」
この星の事象についてはかなり耐性が出来てきたと思っているが、スヴァローグが驚く程の事象については、もう付いていく気すら起きない。
この感覚のギャップとも呼べるそれは、一生埋まらないんだろうな。
巨大植物が使ったスキルは『吸収』。
文字通り、土から栄養を吸収するスキルらしい。
スキルを使わなければ、生命維持活動――つまりは、栄養摂取が出来ないということではなく、スキルを使う事で、その効率を爆発的に増加させているのだとか。
この植物がスキルを持っていたからここまで巨大化出来たのか、あるいは、ここまで巨大化した故のスキル取得なのかは定かではないが――。
結果からして、いよいよスヴァローグの予想通り、モノリスの生態系の外――つまり何者かの干渉があったことが確かなのだという。
そんなふうな言い回しをされると嫌な予感しかしないが――この植物は、見た目こそおどろおどろしい――けれど、なんというか、近付いてみるとそんなに危ない雰囲気はないんだよな。
防御タイプというのだから、何かから身を守る事は想定しているのだろうけれど、悪意は感じられない。
まぁ……ただの勘だけど。
俺達の敵側――オフィサーやエージェント達がこいつに干渉したとするならば、既に何かしらの被害が出ていていいはずだ。
そうじゃない……とすると――。
「オリジナルの方のお前が何か仕込んでた可能性は?」
「ないだろうな。やつの根幹は観察欲求さ。既に動いている者に対して、破損部分の修正こそすれど、生態の軸を揺るがすような、下手な干渉はしないはずだよ」
自分のこと、やつって言ったぞこいつ。
――となれば、オリジナルのスヴァローグが外的要因ではないということか。
指輪の方が言うのだから、多分そうなのだろう。
残る可能性としては複数考られるが、俺の予想としては、もうほとんど見当はついている。
そう、多分ピノとセシリアだ。
あの二人が何かしているに違いない。




