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ドキドキ台湾☆ 4 広い公園にて

 美味しい台湾料理を堪能して、ホテルに帰ります。窓から見える街の明かりがキレイ☆

ゆっくりお風呂に入って、ふかふかのお布団で寝ます。 ああ、幸せ♡


 翌日の朝、5時30分。まだ外はうす暗い。

別室の姑と合流して、近所へ台湾おかゆを食べに行きました。早朝なので涼しいですが、季節は夏。今日も暑くなりそうです。


 雑多な商店街にある小さなおかゆ屋さんは、おかゆの香りと、パンを揚げる香ばしいにおいと、醤油みたいなジャンの豊かな香りが入り混じっています。ニオイだけでも、おいしそう! おなかすいた!! これから仕事へ行く人たちが、慣れたようすで注文します。ガイドブックに書かれているお店だけど、地元密着のお店です。もちろん日本語メニューなんて、気の利いたものはナイ。日本語は通じないので、気合で注文します! 


「あの人の食べているアレと! その鍋のお料理と、この朝の定食を! 一つずつ! ください!」


ビシっと指を差して、注文する! 私の並々ならぬ気合に、お店の人が笑いながら料理をよそってくれます。


「おいしい! ハオツー! 最高!」


 普段は八角などの香辛料はニガテなのですが、台湾で食べると美味しい! 異国の味がする! 台湾で食べる台湾料理、最高!! あっという間にたいらげて、大満足です! おいしかった!!


 熱々のお茶を飲みながら、私は姑に話しかけます。


「お義母さん、これからどうしましょうか? 銀行へ両替に行きたいのですが、まだ時間があります」

「それなら太極拳を見に行きたいわ」

「太極拳ですか? どこへ行ったら見られますか?」

「大きな公園に行けば、見られると思うわ。できれば写真も撮りたいの」


 姑は定年退職をした後、趣味で太極拳を始めました。凝り性なので、専用のクツや衣装だけでなく、剣までそろえています。またカメラも趣味にしていて、大きなカメラを持ち歩いている。


 そういえば姑のご紹介がまだでしたね。姑は大きな会社で、部長をしていました。今なら女性の部長も珍しくないですが、当時はすごく珍しかった。子育てや家庭を犠牲にして、仕事に打ち込んだ方です。そして多数の男性を押しのけて部長まで登りつめて、定年退職した。退職後も求められて、色々な仕事をしています。有能さと気の強さは、ピカ一です☆ そうでなければ、部長になることは不可能だったでしょう。腰の調子を崩さなければ、社長も夢ではなかったかもしれません。その姑が、かつての仕事と同じように熱中しているのが、太極拳とカメラです。


「じゃあ、大きな公園を探しましょう」


 ガイドブックを見ると、すぐ近くに大きな公園があります。まだ8時くらいなのに、すでに暑い。公園に到着したら、木陰で涼もう……。カキ氷とか、売ってないかな?

 方向オンチの私ですが、なんとか公園にたどり着きました。都会の真ん中にある公園で、立派な門があります。門を抜けて中に入ると、一面に芝生が広がっている。どこまでも芝生。全部、芝生。終わりが見えない……。 ちらほらと木や東屋あずまやもあるのですが、基本、芝生。日陰はほとんどありません。


 広大な芝生で点々と、人が集まっています。5~20人くらいのグループが点在していて、体操や太極拳をやっている。全部で100人くらい。姑は嬉々として、太極拳のグループに近づきます。そして許可も得ずに、バシバシと撮影を始めた! お義母さん、勝手に撮影するのは良くないですよ! なんて、言えない私。姑、めちゃめちゃ気が強いです。武闘派の姑に何か言う勇気なんて、持っていません。ここは他人のフリをしよう。私は他人。関係ないです。

 

 私は暑さでフラフラになったので、ベンチに座ります。姑は腰の痛みを忘れて、夢中になってあちこちのグループを激写しています。太極拳をしている方たちは、姑を気にするようすもなく、流れるような動きで演舞をしています。


 暑い……。日陰に入りたい……。でも日陰がナイ……。ちょっと、横になりたい……。

ベンチに座ったまま、気が遠くなる。このままだと、倒れるかも……。

 ふと気づくと、姑がいなくなっていました。さっきまで飛び回って撮影していたのに、どこにも見当たらない。一面芝生とはいえ、木や東屋もあるので、どっちに行ったかわかりません。

 たぶんあっちかな? 私は立ち上がると、フラフラしながら適当な方角に歩き始めました。

 旅の疲れと暑さで、目が開かない……。半目で歩いていると、周りから怒号が湧きました。


「〇◆※△□!!!」


えっっっ!? なにっっっ!?

大声に驚いて目を開けると、周りの方が全員、私を見ている!! そして全員、同じ方向を指差してる!!


「アンタのお連れさん、あっちに行ったから!!」 たぶん、そう言ってる。


 公園にいた方100人くらいの方たちは、私と姑の行動をずっと見ていたのです!

 姑が撮影しているのも、私が姑と他人のフリをしていたのも、フラフラでベンチに倒れ込んだのも、見ていた。 そして私が姑と違う方向へ行こうとしたので、あわてて全員が同時にツッコんだ!!


全部バレてた! そして、どんだけ親切なんだ!!!!!wwwww


私がビックリした顔で立ち止まると、皆さん口々に何か言いながら、しきりに同じ方向を指差します。姑が消えた方向まで、ちゃんと把握してらっしゃる……。ww カメラで撮影されても気にしてないようすだったのに、バッチリ気にしてたんだ!


私が「あっちですか?」と指を差すと、皆さんうなずく。ちょっと面白くなってきたので「こっちですか?」と、違う方向を指差すと「ちがう! ちがう! あっち!」と教えてくれる。


「ありがとうございます~!」


ニコニコ顔の皆さんに、頭を下げながら進みます。じつは姑、夢中になりすぎて、ずいぶん遠くまで行っていました。フツーだったら迷子になる距離です。でも大丈夫。姑に追いつくまでずっと、公園にいる地元の方たちが「あっちだよ!」と、指差して教えてくれました♪

早朝の公園に、観光に来る人はいないらしい。見慣れぬ二人が困ってないか、地元の方たちは素知らぬ顔で、見守っていてくれたのでした。


おかげで無事に姑と再会して、二人は銀行を目指すことにしました。

そしてこの時は、まさかあんな事件が起こるなんて、想像もしていませんでした!!


(つづく)


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