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転生幼女はあきらめない  作者: カヤ
辺境編

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リアの魔力考察

朝起きて、ご飯。魔石屋に仕事に行く。お昼を食べたら、お昼寝。起きたら、狩り。帰ってきたら、ご飯を買ってくるか、お店で食べるかして、寝る。一週間の最後の二日間には、主にずっとしていなかった一階の掃除をする。そんなリズムが固まった。


その中で一番面白かったのは、こわれた魔道具をもらったことだ。私がカウンターを熱心に見ているので、ブレンデルが一つくれたのだ。


「これは灯り用の魔道具だ」


そうして渡されたのは、網目の大きいかごに詰め込まれた苔と、そこに付属している箱だ。携帯用の灯りは旅の間見ていたはずだが、魔石ばかり見ていたから気が付かなかった。


「この苔が熱を加えると光るんだ。よく見てみな」


そう言うと、壊れていない箱を苔入りのかごにはめ込んで、カギを回した。かちっとすると、ぶわっと苔に明かりがともった。


「仕組みはこれだけ。魔石とこの青い石板をくっつけると、魔石の力が熱になる。その熱を、灯り用のコケや、大きな熱を発する砂に通せば、灯りと熱は簡単に扱えるんだ」

「あーい」


それを見て他の従業員が笑う。


「バートもアリスターも、リアがまるで大人みたいに話しかけるよなって思ってたら、ブレンデルのおやっさんまでか」

「いや、うん。ほんとだ」


ブレンデルはかがんで私に説明していたのだが、腰を伸ばして立ち上がると自分でも今気が付いたというように首をひねった。


「リアがまじめに聞いてくれるからだな、お前らと違って」

「おっととばっちりだ」


あわててカウンターに戻る従業員を笑いながら見送ると、


「リアなら大丈夫だろうから、壊れた石板はおもちゃにしていいよ。それとその箱な。でも間違って食べたりしちゃだめだぞ?」


そう言ってブレンデルは壊れた石板の入った小さな箱をくれたのだった。


箱はただの箱だ。ただし、カギをかちりと回すと、薄赤い石板がずれて、薄青い石板と魔石が直接触れることになる。それによって青い石板に魔石の力が流れ、それが苔や砂に行く。そんな単純な仕組みだ。作ろうと思えば、仕組みのわかっているものなら誰でも作れるだろう。


「ああ、その通りだ。俺でも作れるぜ」


バートがなんでもないことのように言った。


「でも、しょくにん、きんぐだむにちか、いにゃい」


確かにバートはそう言ったはずだ。


「うん。それもそうなんだ。つまり、熱と明かりの簡単なものはある程度知識があれば誰でもできる。だが、少し高度なものになると、その簡単な仕組みだけじゃどうにもならないんだ」


つまり?


「例えば結界箱だ」


バートはアリスターから結界箱を持ってきてもらって、魔石の入っている上半分をパカッと上げてなかを見せてくれた。


「これも作りは同じ。でもな、この石板が違うんだよ」


バートはそこに入っている青の石板を指さした。


「結界は熱では発生しねえ。この石板に何か手が加えられているんだが、それがさっぱりわからないんだ」


そういうことか。


「あかりのまどうぐ、みしぇて」

「魔石じゃなくて、箱の方か。まあいいけどよ」


そう言うとバートはわざわざ二階の自分の部屋の灯りの魔道具と、旅用の小さい灯りの魔道具を持ってきて並べてくれた。


「こっちが俺が作ったもの。こっちがキングダムの職人が作ったもの」


なるほど。バートが作った方のカギを回してみる。かちっ。


「まぶちい」

「あたりまえだろ」


あきれたように言われるのはちょっと我慢して、魔力の流れを感じてみる。魔石の魔力がほんの少しだけ、そのまま流れていくのがわかる。かちっ。あーまぶしかった。


次、旅用の明かりをつけてみよう。こちらは箱も明かりのかごも小さい。かちっ。ん?


「まりょく、かわった」

「変わった?」


青い石板を通して、魔力が増幅された。そして質が変わった。ここが鍵なんだ。


わかったからと言ってどうと言うことはない。純粋に興味だけだったのだ。


「納得したか?」

「あーい!ありがと」

「ん。わからないことは聞けよ」

「あーい」


みんなが優しい。


しかし、魔力とは変質するものなのか。その疑問は残る。次の日から、私はもらった魔道具箱を見ているふりをして、魔力について考えるようになった。バートは魔石を充填できることは知られるなと言った。だけど、魔力の訓練までは止められてない。


そもそも、魔石に魔力を入れ、その魔力で灯りや熱を灯すということは、魔石を通さずに魔力を通したらどうなるのか。


私は誰も見ていない隙を狙って、灯りのかごに、ほんの少しだけ直接魔力を通してみた。


ぼわ。


あわててカウンターを振り返るが、誰も見ていないようだった。


「明かり、ちゅいた……」


魔力を直接伝えるのでも、魔道具箱は使えるのだ。もちろん、魔力を砂に流して熱も出すことができた。だがそれが何になるのかと言われても、特に何もならないのだった。魔石を使った方がずっと楽だ。ただ面白いだけだ。


しかしその面白さがわかると、どうしても気になるのが結界箱だ。勝手に魔石を外してみて、私の魔力を流してみたことがある。それでも結界が発生することはこっそり確認してある。でもなぜ青い石板で変質するんだろう。


それを考えていたら、ふと気づいた。石板で変質するというなら、自分が変質しようとすればできるのではないか。魔力や魔力の流れを感じ取れる自分なら。


なぜそう思ったのかは自分でもわからない。だができるかもしれないと思ったらやってみるしかなかった。


狩りで結界箱を使っているときに、結界そのものをよく観察してみる。確かに、魔力をうすく体の外に展開するのと似ている。しかし、普通の魔力は虚族と反発しない。ヴン、と言うあの振動に反発するように、結界に似せて魔力の質を変えていく。少しずつ、変えていく。


結界と同じ質に自分の魔力を染め変えられるようになった頃には、トレントフォースの町に来てからもう三週間、一か月がたっていたのだった。


そうしてついに、ある意味バートたちの避けていた、町長からの呼び出しが来た。


明日水曜日は「聖女二人の異世界ぶらり旅」の更新予定です。「転生幼女」は明日はお休み、明後日木曜日から再開です!

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― 新着の感想 ―
[良い点] この考察は面白い。長文過ぎないし、理に適ってる。
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