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転生幼女はあきらめない  作者: カヤ
キングダム編

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353/400

黎明の空

今朝、間違えて別作品に投稿していました。

改めて投稿しなおしです。

ご指摘の方ありがとうございます。


転生幼女書籍9巻は12月15日、コミックス7巻は14日発売です。

「お前! 黙れ!」


 いらついたシーブスの声と共に、首元の剣がギラっときらめいた。


「キーエ!」

「キーエ!」


 小さい子。


 やっぱり困っているのね?


 ウェスター側の竜が騒ぎ始めた。


「キーエ!」

「キーエ!」


 うちの群れの子よ!


 返しなさい!


「わあ、動くな! 動いたらリアが危ないんだ!」


 兄さまの声に群れはひとまず落ち着いたが、今度はサイラスの竜がソワソワし始めた。


「キーエ……」


 お前は向こうの群れの子なの?


「うん。もどりたい」

「何を言っているんだ!」


 シーブスが首元の剣をぐっと押し付けてきた。


 サイラスも怖いけれど、小さい子だろうがなんだろうが乱暴に扱って全く平気なこの男も怖い。


「キーエ!」


 ちょっとどきなさい。


「うわっ」


 シーブスはラグ竜に押されて剣を持ったままたたらを踏んだ。その拍子に私の首元から剣が離れ、ラグ竜の大きな頭がかごを覗きこんだ。


 もどりたいのね。


「うん!」


 じゃあ、私の頭につかまりなさい。


 これは地獄に垂らされた一筋の蜘蛛の糸だ。


 私はいつも竜のかごに乗る時にやっているように、手足を大きく広げて竜の頭にしがみついた。


「おい、竜! 何をしている。やめろ!」


 サイラスの動揺した声がする。


 思わず竜の頭にしがみついた私だが、今の状況はと言えば、私の無防備な背中をサイラスとシーブスにさらしている間抜けな姿だということになる。冷や汗がにじむ思いだ。


「やめろ! 今お前には結界箱を付けていないんだぞ!」


 竜の前に私の心配をしてもらいたい。


 そういえば、この竜は、サイラスを乗せていてサイラスを愛しい子と呼ぶ。


 おそらく結界箱を持っているのはサイラスで、サイラスが降りている今、竜が結界をはみ出てしまえば、竜は虚族に襲われることになる。


「それに淡紫! お前は魔力は回復したのか?」


 私はドキッとして、じぶんの中の魔力を探った。移動している間、籠の中で寝ていたから、多少なりとも戻っているようだ。だが、竜の頭に全力でしがみつきながら結界を張るのは難しい。


「サイラス! 約束が違います! リアの安全を確保してください!」


 誰もラグ竜が私を助けられるなどと思ってはいない。


 思わぬ状況に右往左往しているのだろう。


「竜! 待て!」

「キーエ!」


 私がしがみついているためにくぐもったラグ竜の声が答える。


 群れの子どもはだいじ。


 私にとってのいとしいお前と同じように。


 そしてラグ竜はゆっくりと駆け出した。駆け出したのは、虚族に取りつかれないようにするためである。このまま短い距離を駆け通せば、無事にウェスター側の展開している結界に入ることができる。その間、私のこのプルプルとしている手足がもてばだが。


「待て!」

「キーエ!」


 ぽとん。


 白みかけた空に、明けの明星が輝く。この世界にも朝に輝く星があるんだなあと、竜の顔からからはがれ落ち、仰向けに地面に転がった私はぼんやりと思う。


 どうやらサイラスはゆっくりと駆けるラグ竜に追いつき、飛び乗ったらしい。その衝撃で私はラグ竜の顔から落ちてしまったというわけだ。そのサイラスはと言えば、私のことを結界に入れるなどという親切心はなく、すぐさま竜と一緒に結界のあるシーブスの元に戻っていった。


「リア!」


 兄さまは今日は叫んでばかりだ。


 輝く明星がすぐに不気味な虚族で見えなくなる。朝からそんな不気味なものは見たくないのだが。


 だが、ぽん、ぽんと虚族は私の上から弾かれていく。


「さすが、わたし」


 私は仰向けに寝っ転がったまま、大きくぽんとスカートのポケットを叩いた。


「けっかい、じょうじはつどう。おまもりは、ひとつじゃない」


 その私を走ってきたハンスが地面から掬い取っていく。当然、ハンスも腰には小さい結界箱を付けている。


「無茶しやがって! ほんとにリア様は!」


 その無茶をなんとかするのが護衛の役割でしょと言いたい。


 すぐにウェスター側に連れてこられた私は、歓迎される間もなく、全方位をファーランドとウェスターの軍に囲まれたサイラスに向き合うこととなった。ラグ竜に乗っているサイラスとシーブスは突破を狙ったようだったが、どこも兵が厚く配置され、逃げようがないことは明らかだ。


「さあ、リアは帰ってきました。もう逃げられませんよ」


 兄さまの低い声が響いた。


 追い詰められたはずのサイラスは天を仰いだ。


「ハハハ! 淡紫には最後までしてやられた!」


 私が何かしたわけではない。サイラスのラグ竜が救ってくれたのだ。


「お前が裏切るとはな」


 その言葉とは裏腹に、サイラスは乗っていたラグ竜の肩をポンポンと愛しげに叩くと、ひらりと飛び降りた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] Cyrus doesn’t disappoint as a villain. Yes, we don’t like villains, but a well written villai…
[一言] さすリアっすね。予備の結界石をポッケに忍ばせてるとは。
[良い点] サイラスとうとう断末魔か? だとしたら楽しみ [一言] 動物と愛し愛される人は良い人みたいな動物愛護運動の成れの果てのような神話がありますが、どんな悪人でも自分の馬や犬(この異世界では竜)…
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