学校へ行こう6
9月15日、発売!
「転生幼女はあきらめない6巻」
記念ssです。
王都襲撃の後のお話です。
やっと終わりました!
それからどうしたかって?
しばらく自宅謹慎の登城禁止です。
「ていがくにきんしん。がっこうかよ」
思わずため息と共に学生風の突っ込みも出るというものだ。
「リア様?」
「なんでもないでしゅ」
ナタリーに聞かれて慌ててごまかした。城に行けないのは残念だが、私の自宅は相当広い。だから謹慎にされたからといってどうということもない。
「城に行かなくていいと楽だなあ」
「護衛として失格です」
ハンスはナタリーが叱ってくれるし、友だちがいなくて寂しいが、久しぶりにラグ竜の牧場に見学に行ったりとなかなか充実した日々を過ごしている。もちろん、ラグ竜の牧場も敷地内だから問題ない。罰は自宅謹慎ではなく自室謹慎にすべきだったのだ。
心配と言えばニコのことである。
クリスはきっとほんの少し叱られるだけで、あとはうちよりは狭いが遊び場がたくさんあるギルの家できっと楽しく過ごせるだろう。寮暮らしのうちの兄さまと違って夜はフェリシアもいるのだし。
だがニコはどうだろうか。皆のしたことの責任を感じて、一人で悩んだりしてはいないか。城の人たちに責められてはいないか。私はニコをいじめる架空の敵に向かってこぶしをシュッシュッと振るったが、そばにいなければ何もできない。それだけがつらい。
結局のところ、自宅謹慎とだけ言われた私は、誰からも叱られることはなかった。保護者であるお父様は仕事中。兄さまは共犯。四侯の娘に誰が何を言えるというのか。
マークがきっかけとはいえ、皆を巻き込んで大騒ぎして、反省はないのかと思う人もいるだろう。答えなら決まっている。
「はんしぇいなど、ない!」
私は腕を組むと、ラグ竜に向かって宣言した。
「キーエ!」
「リア様、どういたしました?」
「なんでもないでしゅ」
そして今、ラグ竜とナタリーに心配をかけたことだけは反省した。
私は心の底でずっと怒っているのだ。なんとか乗り切ったあの事件に理不尽に巻き込まれたことに、自分たちで乗り切らなければいけなかったことに、ことが収まった後もいつもと変わらずに過ごしている人々に。
王族と四侯は変わろうと動き出した。だがそれ以外はどうだろう。
「しぇめて、きぞくだけでも、かわったら」
もう少し、お父様たちも楽になるのではないだろうか。
いたずらで済んでいるうちに、あちこちをかき回し、少しでも変わるきっかけになればいい。そんなことを考えたのは、当然いたずらをやった後のことである。最初から考えていたわけではない。
「リア様、難しいことを考えてるようだが、そんな無理しなくていいんですぜ」
「はんす」
ハンスも私の隣に立って、腕を組んで牧場のラグ竜のほうを見ている。
「平和で、人の言いなりになって暮らしていた奴らが自分の頭で考えるのは大変なのさ。俺もイースターで動けない奴らを引っ張ってどれだけ大変だったことか。俺、そろそろ引退しようかと思ってたくらいなのに」
そんなハンスの今後の展望は知らなくてもいい。だが、気負っていた私の肩の力はすっと抜けたような気がした。
「ニコ殿下も、ありゃあ立派なお子さ。リア様の破天荒さで目立たねえが、いい王様になるんじゃねえかな。だからさ」
「キーエ?」
ハンスがラグ竜に向かって話すものだから、ラグ竜が集まってきているではないか。
「リア様が守ろうとしなくてもいいんだ。大丈夫だよ、ニコ殿下は。叱られても、もう自分で考えて動けてるはずだ」
第三王子に刀を向けられたとき、私はニコを、ニコは私を守ろうとした。だが結局は横に並んで立ち向かったではないか。
「ならんで、たつ」
「それでいいのさ。さ、久しぶりにラグ竜のかごに乗りませんか」
「キーエ!」
「しょれはだめ。おとうしゃまとの、やくしょくだから」
私は首を横に振った。幼児にだって、やっていいことと駄目なことがあるのだ。落としたりはしないわよとラグ竜が首を傾げたが、私はお父様との約束は守る。
「ハハハ。リア様はかっこいいなあ。嫁の貰い手はあるかね」
「ありましゅ。もりもりありましゅ」
きっとその頃には素敵なレディになっているのだから。
お父様が仕事から帰って来たちょうどその日が休日の前の日で、兄さまが寮から帰ってくる日と重なったのは嬉しいことだった。兄さまこそ叱られていないか心配したが、むしろ生き生きとしていてとても大丈夫そうだった。
「一番大変なのはマークだと思いますよ。急な視察に苦情は入ったでしょうが、学院のあの体たらくではたいして文句は言えなかったと思います」
「しょれなら、まーく、たいへんじゃない」
兄さまの言っていることはちょっと矛盾していると思う。
「今回の大騒ぎ自体はたいしたことないんです。だが、学院の造りと対応に大きな問題があることがわかったのですから、それをなんとかしなくてはいけません。それを監督指揮して実行させるのがつまり」
「まーく」
「その通りです。マークはこれから大変なことになるでしょうね」
兄さまはクスクスと笑っている。
「もっとも、リアたちを学院に連れてきた時から覚悟をしていたようです。私も平和なときくらい活躍しておかないと、子どもたちに尊敬されないからね、って言ってましたよ」
「まーく……」
マークらしい言い方である。
「学院の生徒には、私たちを責める動きもありました。家族の管理もできないのかって。でも、ギルの一喝が効きましたね」
「ぎる?」
「ええ。『お前らは、非常時には責任を教師に押し付けて逃げ隠れするしかできない惰弱だ』って」
「ほわー」
私は口をぽかんと開けた。
「あの時、ギルは自分と私を連れて逃げるので精一杯だった。そんな自分への怒りもこもっていたと思います。ですが、何かあった時に自分で考えて行動する力をつけることはとても大切だと思うのです」
「あい」
私も深く頷いた。
「ギルは最上級生です。卒業するまでに、自主的に判断し動ける活動をすると言って大張り切りですよ」
「しゅごい」
「私も楽しみです。そういう活動でこそ、将来使える人材を見極められますからね」
「にいしゃま、ちょっとこわい」
兄さまはニコッと笑った。
「なにしろうちには、嵐のような妹がいますからね」
「ぷう」
「お口を尖らせてもかわいいだけですよ」
その話をにこやかに聞いていたお父様は、
「リアの好きにすればいい。あとでそのフリフリを着て見せておくれ」
と楽しそうだった。だが、次に城に行って帰って来た日には、なぜか青筋を立てて怒っていた。
「リア、いったい学院で何をした。リアが大きくなったらいずれうちにという縁談の打診が山のように来ているぞ」
「りあ、らくがきちただけよ」
山のようにと言っても大した数ではないだろうが、カボチャパンツの幼児に縁談が来るとは不思議なことがあるものだ。だが私はハンスに向かってふふんと胸を張った。
「よめのもらいて、ありゅ」
「そのようですね、リア様。それまではやんちゃはほどほどにしてくださいよ」
「あーい」
もちろん、そんな話は先のことだ。私はお父様に向かって手を伸ばした。
「りあ、おとうしゃまといっしょにいりゅ」
「リア! もちろんだとも」
お父様にぎゅうぎゅう抱きしめられていてちょっと苦しいが、「おおきくなるまでは」という一言は言わないでおこう。でも。
「な、なにかがでりゅ」
とりあえずお父様には抱っこはほどほどにしていただきたいものである。
「転生幼女6巻」について、書影、特典情報等、活動報告に上げてあります。
下の作者マイページから飛べますので、よかったらどうぞ。
また、「異世界でのんびり癒し手はじめます」コミックス2巻が9月17日に発売中です!
転生幼女は続けるつもりですが、再開がいつになるかは不明です。
他のお話が先に出ると思いますが、気長にお待ちいただけると嬉しいです。




