秋、物思うルーク(大きい子編)
6月14日「転生幼女はあきらめない」コミックス2巻発売記念に、短編を投稿します。
今回はここまで。次は夏すぎくらいに出せたらいいなと思ってます。
「あーあ、リアは前はギル、ギルって、もっと俺のとこに来てたのにな」
「そんな事実はありませんよ」
私は丁寧に真実を指摘してあげた。
「小さい子組ができてからは、すっかりそっちに夢中だ」
「健全な発達ですね。やはり同世代の友達ができるのが望ましいです」
「だよなー」
私は隣のギルと、その向こう側に立っているフェリシアをちらりと見て、そっとため息をついた。
ギルは三つ年上、フェリシアは四つ年上である。リアはニコと二つ違い、クリスと三つ違いだから、やはり同世代とは少し違うのだろうが、自分だけが幼いということでギルに申し訳ないと思うこともある。
「まーた自分だけ年が違うとかそんなこと考えてるだろ。やめとけやめとけ」
「考えてません」
ギルに言われてすぐに否定したが、どうしても自分が足を引っ張っているのではと考えてしまうのだ。
「そうよ。年下だからってどうということはないのよ。ギルもそう」
フェリシアにまで言われてしまうのだから、よほど気にしているように見えたのだろう。
「いや、俺はフェリシアと一歳しか違わないんだから、年下扱いしないでくれといつも言っているだろう」
ギルが即座に反論しているが、フェリシアはふふっと笑うだけだ。ギルはらちが明かないと思ったのか、私にこう言った。
「俺だってフィルマンとは10歳くらい離れてるし、だいたい家にいる叔父上叔母上たちは皆年上だったが、なんの問題もなかったぞ」
そんな風に小さい頃からたくさん人と接しているから、ギルは人間関係に困らないのだ。
「それにしても、クリスはやっぱりリアとニコラス殿下といると楽しそうね。普段ももっと甘えてくれてもいいのに」
ジュリアおばさまが片手を頬に当ててため息をついた。
甘えるとはどういうことだろうかと私は不思議に思った。思い返してみると、リアはいつも楽しそうだが、自分から甘えてくることはほとんどない。特別にねだりたいことがある時だけお父様に甘えているが、それだけだ。
「リアも家では別に甘えていないですよ」
「リアが? あんなに甘えん坊さんなのに」
「家では別に抱っこもねだりませんよ。まあねだる前にお父様に抱っこされてるんですけどね」
私は苦笑した。もちろん私も抱っこしているが、自分の邪魔をされたら幼児だって嫌だと思うから、お父様ほどはしていない。
「まあ。じゃあ私にはなぜねだるのかしら」
「リアは、リアを抱きたいと思う人に抱っこされているようですよ」
「まあ。それなら私、クリスも抱っこしたいと思っているのに、クリスはなかなか来ないのよね」
抱っこしたいけど、いつも声をかけていいのか悩ましいのだろう。
「クリスは大人の女性に抱っこされるということがほとんどなかったので、そもそもジュリアが抱っこしたいと思っていることに気がつかないのだと思いますよ。もう五歳ですし」
フェリシアはお母様と呼べないのならジュリアと呼んでほしいと言われているらしい。大人の女性に抱っこされたことがなかったという言葉に苦い顔をすると、ジュリアおばさまはもう一度小さいため息をついた。
「遠慮してるのは私だったのかしら。女の子も欲しかったのよ、私」
「遠慮なくかわいがってくださると嬉しいですわ」
「そう? それならほら」
抱きしめるのではなく、友だちのように背中に手を回されたフェリシアは照れたように頬を赤らめ、そっとジュリアおばさまに寄り添った。どうやらレミントンの二人はほどほどにうまくやっているようだ。
なんとなく安心したのでリアのほうに向かう。
私にとっては勝手知ったるギルの家なので、これからリアがツリーハウスに上がろうとするのは目に見えていた。それは阻止しなければ危ないではないか。
「りあ、のぼる!」
ほら、やっぱり。
「リア様、無理だな。このツリーハウスは縄梯子で上るようになってるから、もっと手の力がついて自分の体を支えられるようになってからだ」
ハンスに厳しいことを言われてむくれているリアもかわいい。
「だっこちたら?」
「自分の力で行けないところは行っちゃなんねえんです」
「むー」
口を尖らせているリアもかわいい。
「妹ってかわいいよな」
「ええ。やっとギルも実感できましたか」
「ああ」
クリスを見ているギルの顔はにやけていてみっともないが。
「お前の顔もにやけてるからな」
「まさか。にやけているのではなく慈愛の微笑みです」
「ああ言えばこう言う」
ギルは行儀悪くちっと舌打ちすると、さりげなく近くに寄って来た。
「なんですか。うっとうしい」
「ルークからさんざん妹の良さを聞かされてうんざりしていたが、今度は俺の番だ」
「なんのことですか」
私は疑わしい目でギルを見てしまった。ギルはコホンと咳払いして、左右に人がいないことを確認した。
「姉さんもいいぞ」
「は?」
「だから、姉もなかなかいい」
「つ、つまり、フェリシアが?」
ギルは少し照れくさそうに頷いた。
「弟扱いされて怒ってはいませんでしたか?」
「あれはつまり、様式美だろ、弟としての」
言っていることがよくわからない。
「少し肌寒いからもう一枚着たらどうかしらとか、口の横にクッキーのクズがついているわとか、親に言われたら苛立つことが、姉に言われるとなんか甘いというか」
「まったくわかりません。そもそも口の横にクッキーをつけるとかがありえません」
私は思わずギルから一歩離れた。
「ちょっと年上の人っていいよなあ」
くくっと笑っているギルは、いつに間にか目の前に三人、小さい子組が並んでいるのに気づいていなかった。
「とちうえのひとって、なんでしゅか?」
「はあっ? リア?」
「どのようにいいのだ?」
「に、ニコ殿下」
「だれのことなの?」
「く、クリス。いや、その」
あたふたして私のほうを見てくるが、助けてなどやらない。
「まあ、ギル。どうしたの?」
「フェリシア! やばい」
「あのね、ぎるがね、とちうえ、もが」
ギルがリアを小脇に抱えて逃げ出した。つられてクリスもニコ殿下も走っていく。
「ギルは本当に下の子の面倒をよく見てくれる、いい子よね」
「はい。本当にそうです。いい奴ですよ」
子ではない。だがギルがそれが嬉しそうなので、否定しないでおこう。
「つぎはわたしをかかえてはしってくれ!」
「つぎはわたしもよ!」
結局楽しそうに走り回ってリアたちと遊んでいるギルは、本当にいい奴なのだ。
「フェリシア。その、大丈夫ですか」
「大丈夫。リスバーンの家の人たちは皆温かいわ」
フェリシアはにっこり笑って私を優しい目で見た。
「ルークもいい子ね」
「私ももう、子どもではありません」
反射的に言い返して、これが様式美だと悟った自分がなんだか嫌だ。
「にいしゃま、おかおがあかい」
いつの間にか戻ってきていたリアを抱えて今度は私が走り出した。
「つぎはわたしだ!」
「わたしもよ!」
姉もなかなかいいものかもしれないとちょっとだけ思った。
リアが一番だけれども。
12歳の秋も、なんだか楽しくなりそうだ。
久しぶりに活動報告を書いています。いろいろお知らせがありますのでよかったらご覧ください。
主にコミカライズ2巻発売と、書籍6巻準備中のおしらせです。
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