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転生幼女はあきらめない  作者: カヤ
キングダム編

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186/400

お父様にメリークリスマス(3巻発売日決定お祝いss)

「転生幼女3巻」1月15日発売!

詳しくは作者の活動報告にて。

活動報告に書影をのせてあります。

「あああ、疲れた」

「おとうしゃま?」


 急にドアが開くと、お父様がふらふらと私の部屋に入ってきた。兄さまのお誕生日も終わった12月の末、お仕事が大変だということで、今日は城からの帰りも、夕ご飯もお父様と一緒ではなかった。珍しいことだ。


 どうやら今やっと城から帰ってきたらしい。上着は脱いでいるが、首にはタイが巻かれたままだし、着替えも済ませていないようだ。


「おとうしゃま、ごはんは?」

「ご飯よりリアが足りない」


 お父様は私を見つけるとすかさず抱き上げ、ぎゅっと抱き込んで大きく息を吐いた。


「あの無能どもめ。なんでも私に判断を求めようとするな。ラグ竜関連はラグ竜の係の者に聞けばよいではないか。なぜ私がラグ竜の移動の数を調整せねばならんのだ」

「ありゃ」


 私は抱っこされたままお父様の肩をポンポンと叩き、ついてきたお父様の侍従に食事を用意するよう合図した。本当のところは、ナタリーに合図して、ナタリーから伝えてもらったのだが。


 誰もが幼児の愛らしいしぐさを理解できるとは限らないのだ。わたわたする私を見て首をかしげて困っていた侍従は悪くない。


 たまには部屋で二人だけで食事をするのもいいだろう。私は自分の部屋をぐるりと見渡した。


 戻ってきたら大きくなっていた私の部屋には、大きなベッドの他に、ふかふかのじゅうたんが敷き詰められ、よじ登って絵本が読めるように大きなソファと、おやつをいただくテーブルとイスもそろっている。


 疲れたなら座ればいいものを、疲れすぎているのか私を抱いたまま部屋をうろうろしているお父様に誰も声をかけられずにいるうちに、ノックの音とともに食事のワゴンがやってきた。


「お食事をお持ちしました」

「なぜリアの部屋に」


 一瞬眉をひそめるお父様の肩をまたポンポンと叩くと、私は、


「おろちて」


 といった。


「リア……」


 いやだと駄々をこねるお父様に、私はため息をついた。


「りあもいっしょにたべりゅ」

「それならよかろう」


 機嫌を直したお父様にそっと床に下ろされた私は、さっそくお父様を席に座らせると、隣に子供用の椅子を引っ張ってきた。


「うんしょ、うんしょ」

「リア様、私が」


 ナタリーがさっと私から椅子を取り上げ、お父様の隣においてくれる。さらにさっと私を後ろから抱え上げると、すぽっと子供用の椅子に収めてくれた。うむ。なかなかの連携である。


 すぐにスープがお父様に供されるが、私の前には今日のメインであるこんがりと焼いた鶏肉が少し、きれいに切り分けられておいてある。そのほかにはデザートだ。


 さすがに夕ご飯を食べた後なので、食事に付き合うといっても大したものは食べられない。私が狙っているのは食後のケーキのみである。


 ではなぜ鶏肉があるのか? 私はお父様がスープを飲み終えたタイミングで、鶏肉にぐさりとフォークを刺した。


「おとうしゃま、あーん」

「リア? 何を?」

「あーん」


 早くしないと、鶏肉が落ちてしまうではないか。プルプルし始めた鶏肉を見て、お父様が慌ててフォークに口を近づけた。


 よく考えると、大変行儀が悪い。でも、お父様は上手に鶏肉を口にした。さすが四侯である。


「おとうしゃま、しゃしゅが!」

「リアのくれた鶏肉を落とすなど、もってのほかだからな!」

「あい!」

「ははは!」


 これで、こないだの兄さまの誕生日から拗ねていたお父様の機嫌がよくなるなら安いものである。部屋にはほっとした空気が流れた。


 和やかな夕食後、ソファに寄り添ってお父様と座っていたら、お父様が重くなってきた。どうやらうとうとしているらしい。よほど疲れたのだろう。


 だが重い。もうすぐ二歳になる一歳児には、成人男性を支える力はない。


 慌ててお父様の侍従がそっとお父様を支えてソファに横たえる中、ナタリーが私をお父様の下からそっと引っ張り出してくれた。


「まくら、もうふ、しゅる」

「はい」


 ナタリーから枕を受け取り、お父様の頭の下にぎゅっぎゅっ押し込むと、次は毛布を掛けていく。


 なんだか斜めになっている。


「うんしょ、うんしょ」


 毛布を引っ張って整える。


「よち」


 満足である。


「少しの間、このままにしておきましょう。そのうち起きるでしょうから」


 様子を見に来たジュードが優しい声でそう言った。


「あい。ありぇ」


 よく見ると、お父様の腕の下にちょうどよい隙間があるではないか。私は毛布の隙間からごそごそともぐりこんでみた。ソファを登るのはお手の物である。毛布の中を進んで、お父様の胸のところでぴょこりと顔を出す。


 部屋に声にならない悲鳴が聞こえるような気がするが、まあいい。そのままお父様の顔を見ると、すやすやと寝ているようだ。すやすやと。すやすや。



「う、うーん。こ、これは何のプレゼントだ」


 すっかりそのまま寝てしまった私にお父様は驚いたそうだけど。


 それはきっと今日が、頑張った人にプレゼントをくれる日だから。


 メリークリスマス。





「転生幼女」は「なろう」だけで十分楽しめますが、

書籍には、事件を一つとおまけを一つ足してあり、

読み応えのあるものになっています。


あと、申し訳ないのですが、

本編の再開は年明けまでお待ちください。


それと、新作、

「まず一歩から始める異世界生活~魔物が強くて家から出られません」

地味ですが、情報不足の中、主人公が頑張るお話です。

こちらもよかったらどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] リアが最強に優しいところ [気になる点] リアがポスッと顔出すのを想像したらうおおおとなるところ。 [一言] リア、君は最高だ。もうしばらく付き合わせていただきたい!
[一言] ああ。かわいいパパン!久々のパパン! リアも可愛い!ああ。可愛い。
[良い点] リアさんからのクリスマスプレゼント、ありがとうー。癒されるー。 今年はニコに会ったり、北に行ったり、ゲームに行ったりお疲れさまでした。 来年もよろしくお願いします。待ってまーす。
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