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転生幼女はあきらめない  作者: カヤ
キングダム編

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疑念

 久しぶりにお父様もお母様もそろい、屋敷の大人は緊張して準備に走り回っているが、クリスはとても嬉しそうだ。


 おてんばでわがままに思われているクリスだが、ミルクティー色の柔らかい髪も、同じ色の大きい瞳も、黙っていればおとなしやかな印象である。その優しい感じをそのまま生かすよう、装飾は抑え、淡いクリーム色にこげ茶を重ねたドレスを着せられている。


 あれこれ服を合わせるのに、クリスはずっとお母様と一緒にいられて機嫌がよかった。


 お母様は、本当に服の趣味がいい。私は嬉しそうにお父様とお母様にまとわりついているクリスのかわいらしい様子に目を細める。


 クリスの髪の色は私と同じで、お母様の色を受け継いだらしい。そしてお父様の、優しい薄茶の目の色をさらに淡くして受け継いだ。三人で一緒にいるところを見ると、お父様とお母様の素敵なところばかりもらったかのようで、本当にかわいらしい。


「客人がそろそろ参られます」


 執事の言葉に皆で外で出迎える準備をする。キングダムでは、王に頭を下げる必要はないとされる四侯ではあるが、他国からの客人に礼を尽くさないわけにはいかない。まして、イースターの王族も来るとあっては。


 急に決まったことで、お互いの絵姿なども交換できていない。それでも、子どもだから会えばきっと大丈夫でしょうと言う根拠のないお母様の自信はどこから来るのか。


 お相手は10歳と15歳の兄弟だそうで、どちらに決まってもいいそうだ。とはいえ、常識的には10歳の子のほうがクリスのお相手だろうとは思う。


「どちらにも決めなくてもいいのですよね、お母様」


 どちらかでいいのだと言われれば、「どちらかを選ばなければならない」という気持ちになるものだ。私はそうしなくていいのだとクリスに聞かせるために、改めて確認した。


「もちろんよフェリシア。お見合いとはいえ、当人の気持ちが伴わなくてはどうしようもないもの」


 お母様はおかしそうにころころと笑った。私はちょっと安心した。


「そうそう、フェリシアもきちんとした格好をするのよ」

「私は今回は添え物ですし、お相手が15歳ということを考えると、なるべく目立たぬ方がよいと思います」


 私はお母様の容姿をそのまま受け継いでいて、美しいのだそうだ。正確に言うと、守ってあげたくなるようなはかなさだそうだ。現当主、次期当主の覚悟を持つものがはかないだなんてありえないのに。ばかばかしい。私はふんと鼻息を吐いた。あら、リアみたいだったかしら。私はばれていないかこっそり左右を見渡した。大丈夫なようだ。


 でも、着飾ればそれなりに目立つ。10歳にしろ、15歳にしろ、5歳より16歳のほうに目が行くのは当然のことだ。今回の主役はクリスだ。私は陰に徹する。


 とはいえ、お母様には逆らいきれず、いつもよりはきちんとした装いをさせられている。


 外に出て待つ私たちのもとにすぐに軽やかに数台の竜車がやってきた。



 先頭の竜車から、せっかちな様子で少年が一人、そしてそれを引き止めるような形で慌てて大きな少年が一人下りてきた。これが今回のクリスのお相手だろう。


「こら、ハリー。侍従が先だと言っているのに!」

「ごめん、兄さま。早く外に出たくて」


 二人とも緩くウェーブした濃い金色の髪に、緑の瞳をした活発そうな子どもたちだ。キングダムの典型的な貴族と同じ色あいをしている。


「ふぇりちあとほとんどおなじとちでしゅ」一瞬、リアの声が聞こえたような気がして、ちょっとお姉さんぶっている自分にくすりと笑みが漏れた。


 馬車から遅れて慌てて侍従が出てくるのと同時に、後ろの竜車からも人が下りてきた。


 私は驚きで一瞬目を見開いた。


 金色の髪、金色の瞳。キングダムの王家と同じ。イースターの王家がキングダムと似た色が出ることは聞いていたが、ここまで似ているとは思わなかった。


 でも違う。ぶしつけに見るわけにはいかないから、一瞬目に入っただけだが、なにが違うと思ったのか。自分に問いかけてみる。アルバート殿下より二つ年上、なのに落ち着いている。やや吊り上がり気味の目、薄い唇、がっしりした体格と相まって、色さえ違っていたら、そう、貴族というより、護衛のような雰囲気なのだ。


「ようこそレミントンに」


 お母様の柔らかい声が響く。


「お招きありがとうございます。私が兄のブラン・ラディスラス。こちらが弟の」

「ハリー・ラディスラスです」


 本来なら王族を優先すべきなのだろうが、今回はあくまで観光と付き添いという体裁なので、イースターの王子は後回しだ。


「付き添いのサイラス・イースターです」


 低い挨拶の声は、何の感情もこもっていなかった。無理に押し込んだ付き添いなのに、何の関心もないの? それとも、感情を隠すのがうまいだけ? 私は目を伏せたまま紹介を待つ。


「お久しぶりね」

「はい。アンジェリーク殿にも、ブロード殿にもお変わりなく」


 私は驚きを外に出さないように努力した。大人がどのような社交をしているのか私がすべて把握しているわけではないけれど。


 国外に出ないお母様とお父様が、どうしてイースターの王族と知り合いなの?


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