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異世界創造のすゝめ~スマホアプリで惑星を創ってしまった俺は神となり世界を巡る~  作者: たまごかけキャンディー
第二の創造~異世界冒険編~

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閑話 聖騎士ミゼット


 斎藤が魔族問題を解決し町の騎士達から事情聴取を受けている頃、隣の国で若き聖騎士団員として活躍するミゼット・ガルハートは騎士団から暇を貰い旅の支度をしていた。


「ねぇ、本当に行くのミゼット?」

「当然よ。今までどこを探しても見つからなかったあいつの足取りを、ようやく掴んだの。次にいつこのチャンスが訪れるかは分からない」


 騎士団の同僚にそう答えながらも手を休めず、着々と準備を進める。

 国から賜った剣を携え、携帯食料を用意し、支給されている高価な魔法薬を鞄に詰めた。


 この魔法薬一本とっても、成りたての下っ端の騎士や一般の冒険者からすれば、目の玉が飛び出るような高価な回復アイテムだ。

 そんな物を騎士になりたてのミゼットが軽々と持てるのも、この国での超優待職、もとい超エリート部隊に所属しているが故だろう。


「でも本当なの? あなた程の天才がいくら努力しても、全く追いつけないっていうその話。私にはとても信じられないわ。周りの人達はきっと幼い頃に憧れた少年に過度な期待を寄せて、あなたを守って死んでしまった事で記憶が美化されているのだと言ってるわよ」


 ミゼットは思う。

 本当に決まっているだろうと。


 幼き頃に出会い、そして導かれ、救われ、いつかきっと見つけ出してみせると誓ったあの日から、片時も忘れた事のない大切な目標。

 そのために、今まで文字通り死ぬ思いをしながら努力を重ねて来た。

 だから今の私を見てもらいたい、もうあの時のように足手まといにはならない、今度こそあなたと共に戦う。


 そう決意を改め、今の自分を思い返す。

 

 力を得た。

 立場を得た。

 武器を得た。

 仲間を得た。

 他にもまだまだ、伝えたい言葉は沢山ある。


 だからこそ、もう一度会いたい。

 そしていつの日か、その背中に追いつきたい。


 ミゼットは、そう思っていた。


「周りがどう言おうが関係ないわ。あいつは私の特別なの。会って言わなきゃならない事があるの。だから行くわ」

「本気なのね……」

「当然よ。私はいつだって本気だわ」


 手がかりとなった冒険者ギルドカード、『ケンジ・ガルハート』の国境横断記録を再度確認し、荷物を持つ。

 この国を出て亜人種が多く暮らす隣の国へ向かったという事は分かっている。


 確かあの国の最寄り町はいま行方不明になる人間が増えていて、騎士団の調査では5年前に現れた魔族もそこからやってきたという報告が上がっている。

 きっとあいつの性格なら、この町でまた魔族の問題に頭を突っ込むのだろう。


 ミゼットは直感的にそう確信した。


「正直あなた程の天才騎士がこの国を離れるのは気が進まないというか、優秀な人員の欠落という意味でも痛手ではあるんだけど……。でもそこまで本気なら、仕方ないか」

「悪いわね。今まで私に目を掛けてくれてた事には感謝しているけど、こればかりは譲れないわ」


 そう強く言い切る13歳の少女に同僚の騎士は肩を竦め、諦めたように溜息を吐く。

 騎士とて、元々この天才少女が自分の言うことを素直に聞き入れる器だとも思っていなかったし、そもそもからして、この国は少女にとってあまりにも狭すぎると感じていた。


 ならばこれは仕方のない事であり、国そのものの器が少女に相応しくないというのなら、いずれこうなるであろう事は確定事項だったと言って良い。

 数年前のある日、突然騎士団に殴り込みを仕掛け自分を聖騎士にしろと言ってきたこの破天荒で、無茶苦茶で、規格外な少女を止める術はない。


 今更どうなる事でもないのだ。


「分かったわ、好きにしなさい。だけどこれだけは約束して。……例え国の騎士を辞めることになってもいいから、たまには私達に顔を見せに来なさい。あなたが居なくなると、ちょっと寂しいから」


 最後に騎士はわざとらしくウインクをした。

 ようするに、いつでもこの居場所は空けておくと、そう言っているのである。


「ありがとう。……それじゃあもう行くわね。今までありがとう師匠、良い修行になったわ!!」

「ええ、あなたみたいな天才を鍛えるのは、私も楽しかったわ」


 そう言ってミゼットは駆け出し、すぐに騎士の目の前から姿を消していった。

 今やあの少女を止めるものは何一つ存在しない。

 いや、止められるものが、存在しない。


 騎士という枷から解き放たれ自由になったあの小鳥は、いったいどこまで羽ばたいていくのだろうと、同僚として師匠として、期待に胸を膨らませるのであった。


「……でも、あれ程の傑物を夢中にさせる少年って、本当に一体何者なのかしらね。不思議だわ」


 本人から伝え聞く噂の少年の事は自分でも調べた。

 しかし出てくる情報は荒唐無稽なものばかりだ。


 ある日何の前触れもなくガルハート領に現れ、そしてクレイ・ガルハートの治療を行い、幼少期のミゼットを教育し、いきなり魔族を討伐しスタンピードから町を一つ救った。

 それもたった、10歳の少年がである。


 あまりにも経歴がデタラメ過ぎて、最初の頃は自分の目を疑った程だ。


 しかし実際に情報が出て来たということは、確かにあの子の追いかける存在は実在していたのだろうと、そう思わざるを得なかった。


「ようするに私程度では捉えきれない程に、この世界は広いって事か。……がんばりなさいミゼット。あなたの行く末には困難が沢山待ち受けているでしょうけど、それでもきっとなんとかなるわ」


 ────だってあなたは、最高の聖騎士ミゼット・ガルハートなんだもの。

 最後にそう呟き、この国の聖騎士団長は最愛の弟子の見送りを終えた。




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― 新着の感想 ―
[一言] 意識していた少年の年齢を追い越して、老女になって再会した時に彼は永遠の少年だった…って光景を想像するとエモい
[一言] どうでも良い話、鍛え甲斐が無いから‶天才〟たと思うぞ。 ‶楽しい〟はない。
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