パパとわたしと紅葉めぐり ②
「紅葉巡りに行くのか? 俺も行く!」
「ニコラドさんも来るの? 嬉しい!」
パパと一緒に何処に行くのか相談している中で、ニコラドさんが屋敷にやってきていた。ニコラドさんは、わたしたちが紅葉巡りに行くことを告げれば、面白そうに笑って一緒に行きたいなどといった。
わたしはパパの了承もとらずに、頷いてしまったのだけど、よかったかな? そう思ってパパを見れば、パパは呆れたような目をニコラドさんに向けていたけれども、頷いてくれた。
「はははっ、本当にベルレナには弱いなぁ。ディオノレに何か頼むときにはベルレナ経由にしたら一発だな!」
「ベルレナ、ニコラドが変なことを頼んできたら断るんだぞ?」
「うん! わたし、パパにちゃんと相談してからじゃないと、そういうの頷かないよ!」
ニコラドさんの言葉に、パパが告げ、わたしはそんなことを告げる。
それにしてもニコラドさんは本当に楽しそうに、豪快に笑うよね。パパの笑い方はこんな風に豪快にじゃないけれど、小さく笑っているんだよね。どっちの笑い方も好きだなぁと思う。
笑っている姿を見るのは、どんな人が笑う姿だろうとも笑う姿を見られるというのはとても素敵なことなんだよね。
「ニコラドさんもパパみたいに色んなところにいっているの?」
「そうだな。というより、ディオノレはあんまり外に出ないから俺の方がもっと色んな場所に行っているぞ」
「そうなの?」
「ああ。今はベルレナがいるから、外によく出るようになっているが、ディオノレときたら十年街に行かないとかざらだったからな」
パパはわたしが思っているよりも外に出ない人らしい。でも確かにパパはあまり周りに関心がない。食料庫に大量の食糧もあるし、パパは自分でなんでも出来るからずっと引きこもっていても問題がないのだろう。
パパの生活がわたしと出会った事でそんな風に変わっているのだと思うと、何だか嬉しい気持ちになる。
「ニコラドさんは、秋だと何処に行った方がいいと思う? お勧めの場所とかあるの?」
「沢山あるぞ。俺は旅行は好きだからな。一時期秋の食べ物巡りとかしてたから、色々連れていけるぞ!」
「本当? 嬉しい!」
わたしがキラキラした目でニコラドさんを見れば、パパが何とも言えない表情を浮かべていた。
「パパ、どうしたの?」
「……何でもない」
「はは、ベルレナ。こいつ、俺よりお勧めの秋の場所を知らないことをショック受けてるんだぞ。ベルレナの期待に応えられなくて何とも言えない感情なんだろ」
ニコラドさんがそんなことを口にしたら、パパに魔法でどつかれていた。図星だったのだろう。
やっぱりパパとニコラドさんって仲良しだなぁ。その仲が良い様子を見ると楽しい気持ちになる。
わたしもパパとニコラドさんみたいな関係の、何でも話せるような仲が良い友達と出会えて行ければいいなってそんなあこがれを抱く。
「やっぱりパパとニコラドさんは仲良しさんだよね!」
そういったらニコラドさんは豪快に笑い、パパは少し嫌そうな顔をしながらも否定していた。素直じゃないな、パパは。
そしてそんな会話をした翌日から、わたしはパパとニコラドさんと一緒に出掛けることになった。
まず向かったのは、ニコラドさんがお勧めだという秋の魚料理が有名な街である。近くに川と海があって、そこでとれるお魚が美味しいんだって!
そういうことを知っているのは、やっぱりニコラドさんが魔導師として長く生きているからと言えるだろう。それにしても季節にだけとれる食べ物って結構あるんだよね。
今は、パパの食料庫から食料を使い放題で、色んな料理をわたしは作れるけれど、パパがいない場所で自分の手で食料を確保しなければならない場合はどこで何がとれるかとかの情報も大事だよね。
わたしとパパとニコラドさんの三人で食べたお魚は、毒も持っているんだって。料理人の人が、その毒を上手く排除して食べられるようにしているんだとか。
毒を持っている部分を排除して、食べられる部分だけ料理して食べるっていうのも凄いよね。そもそも毒を持つものを食べようとした昔の人が凄いのだとそんなことを思った。
「お魚って色んな調理方法があるよね! わたしも沢山学びたいなぁ」
「ベルレナは料理を作るのも好きだよな」
「うん。だってパパに美味しいものを沢山食べさせてあげたいもん!」
ニコラドさんにそう答えれば、パパもニコラドさんも笑みを浮かべてくれた。
その日はわたしたちは料理を食べて、宿に泊ってゆっくりした。ちなみにニコラドさんだけ別部屋だった。パパと一緒のベッドで眠れて、楽しかった。
翌日になって、パパとニコラドさんに左右の手を引かれて、街を歩く。パパと一緒に手を繋いで歩くのも楽しいけれど、ニコラドさんも一緒だともっと楽しいなぁってにこにこしてしまう。
ニコラドさんも綺麗な顔をしているから、周りから注目を浴びていた。




