わたしは友人を増やしていく ⑤
「パパ、見て、凄い綺麗!!」
「そうだな」
その日、その街では催しが行われている。それは山に住む聖なる獣への感謝を伝えるためのものなんだって。屋台が出店していて、キラキラしたラドガーデさんを模した飾りなどが街を彩る。そういう様子を見て、楽しそうってワクワクした気持ちになった。
わたしはラドガーデさんにパパのおかげで会えて、はじめて会ってから何度か会いにいっている。ラドガーデさんはわたしと遊んでくれて、とてもやさしい。わたしはすっかりラドガーデさんが大好きになっている。
でもこの街の人たちは、ラドガーデさんのことを崇めているけれどもラドガーデさんと実際に会ったことがない人ばかりなのだという。
前に一度パパに、「他の人をラドガーデさんの所に連れて行ったら喜んでくれるかな?」と口にしたことがある。だけどそれはしないほうがいいとパパは言っていた。
こういう距離感だからこそ、街の人たちとラドガーデさんは良い関係を築けているというのもあるらしい。あとは幾ら仲良くなったとしても欲に絡んでわたしへの態度も変わっていく人もいるのだと。……人と人との付き合いは難しいんだなぁってパパの話を聞いて思った。
でも昔のわたしなら、何か特別な存在と出会える人に出会ったらもっと会いたい、貴方だけ会えてずるい! みたいに感じたかもしれない。要するにそういう風に感じる人もいるということなのだろう。
わたしはパパに出会えて、パパがいてくれているからこそ今の生活に満足しているけれど、今に満足していない人なんていっぱいいる。貴族だった頃にもそういう話を大人から聞いたことがある。
そういうことを気にしなくてもいい人――と考えるとパパのことだよなぁと思った。パパは自身が凄いのはもちろんだし、パパはわたしが何をしても、どういう相手と交友を結んでいても、きっとわたしのことを受け入れてくれる。
――わたし、パパみたいな人と結婚したいなぁ。なんてそんなことを思った。パパにいったら照れるだろうか? それともそれはやめた方がいいと言うだろうか? 反応が気になるから今度言ってみようかな?
そんなことを思いながらパパとうろうろしていたら、声をかけられる。
「ベルレナちゃんも見に来ていたの?」
「うん」
それはこの街で仲良くなった同年代の女の子――ヒミである。ヒミは長い茶色の髪をみつあみに結んでいる。
この街には二週間ほど滞在しているから、街の子供たちとも仲良くなれたのだ。
「ねぇねぇ、ベルレナちゃん、あれやってみない?」
「あれ、なあに?」
「ボールを投げて景品を手に入れるゲームだよ!」
ヒミに誘われたゲームは、魔法によって動く木の板にボールを当てて、得点を稼ぐものだった。その得点に応じて景品が手に入るらしい。
やってみたいなと思ってパパを見れば、パパは頷いてくれた。
その様子を見てヒミが「本当にベルレナちゃんはディオノレさんが好きだね」なんて言われて、「うん」と頷く。
パパとヒミのお父さんが仲良く喋っているのを見ながら、わたしはヒミと一緒にそのゲームのやっている場所に向かった。
お金を払ってゲームに参加する。最初にゲームをしたのはヒミである。中々難しそうで、手に入ったのは小さなお菓子が二つだった。そのうちの一つをヒミがわたしにくれる。ヒミは優しいなぁって嬉しくなった。
次にわたしの番だった。
パパの作ったこのホムンクルスの身体は、動体視力がかなり良い。思いっきりボールを投げる。見えてはいるけれど、外れてしまったのはわたしのボールを投げる距離感を間違ってしまったからだろう。次のボールは見事、その的に的中する。いくつかの失敗もあったけれど、大きな得点の板にあてることが出来た。そして手に入ったのはぬいぐるみ二つである。ぬいぐるみ二つにしたのはヒミにあげようと思ったからだ。
ヒミにお菓子のお返しにとあげたら、「お菓子一つとぬいぐるみじゃ釣り合わないよ」と言われたど「嬉しかったから」とそのままあげた。ヒミは嬉しそうに笑っていた。
その後も街を巡りながら色んなゲームをしたりして遊んだ。一緒に屋台で売られているアイスや食べ物を食べたり、そういう風に遊ぶのが楽しかった。
その催しの中では新しい友達も出来た。わたしとヒミがラドガーデさんを模した飾りのことで話していたらその会話に混ざってきた子供がいたのだ。こういう催しは新しい出会いもある場所なんだなって嬉しくなった。
こうしてお友達と遊ぶのは楽しいなぁとわたしはにこにこしてしまう。それにわたしが街の子供と仲良くなったら、パパもその親とそれなりに楽しそうに話しているのだ。それを見るのもわたしは楽しかった。




