パパからの提案 ①
「パパ、おはよう!!」
「ああ、おはよう。ベルレナ」
パパが優しく微笑む。
わたしは朝からそんなパパの優しい笑みを見られて、何だか嬉しくなった。
――わたしが九歳の誕生日を迎えて、ベルラだった頃の屋敷を見て、吹っ切れてから、わたしとパパは益々仲良くなったと思う。
パパを朝から起こして、パパに朝食をふるまう。当たり前の日常がただただ楽しい。パパは相変わらずわたしを甘やかしてくれていて、買い物に連れていってくれたりもよくするのだ。
お洋服も沢山増えた。
わたしの部屋のクローゼットが一つ一杯になってしまって、新たなクローゼットも買ってくれた。あと、もっと増えるなら食料庫のように見た目よりもしまえる容量を大きくしてくれるっても言ってくれたけど、流石にそれは甘えすぎだって思ったから自重している。
それにいつかパパの力を借りずにわたし自身の力でそういうことが出来るようになった方がきっといいって思うから。
わたしは魔法の練習もずっと続けている。パパっていう最高の先生がいるからこそ、わたしは少しずつ魔法が上達している。まだまだパパに追いつくほどではないけれど、それでもパパの娘として魔法をもっと上達していきたいと思った。
「ねー、パパ、ニコラドさん、次いつ来るの?」
「あいつか? しばらくは来ないって言ってたぞ。あいつも色々やることがあるからな」
「ニコラドさんは普段何をしているの?」
「あいつは俺よりも社交的だから色々やっているぞ。弟子がいたりとかな」
「へぇー」
ニコラドさんは確かにパパよりも愛想がよい。にこやかに笑っていて、女の人に好かれそうだと思った。いや、でももちろん、わたしのパパの方がもっともっとかっこいいけどね!! パパが一番かっこいいの。
じっとパパを見つめてしまう。うん、やっぱりパパは一番かっこいいよね。わたしのパパ。とってもかっこいいパパ。綺麗な白色の髪に、お月様みたいな黄色の瞳。
わたしも同じ色を持っているのだと思うと、何だか嬉しい。
「えへへ」
「どうしたんだ?」
「ふふ、わたしのパパはとっても綺麗だなって思って!!」
「なんだそれ」
「パパ、信じてないって顔してる! パパはとってもかっこいいんだよ!! わたし、パパの顔、凄く好き! まるで彫刻品みたいに整っていて、それでいてパパってとてもやさしいもの。こんなに綺麗で、こんなに優しいなんて、パパ凄いよ!!」
「……ベルレナも同じ見た目だろ」
「わたしもパパに身体をもらって一緒だけど、なんていうか、やっぱりわたしにはパパが一番かっこよくてすごいもん!!」
それにしてもパパは照れ屋さんで、こっちのほうを見ない。なんだか照れ屋さんのパパを見るとわたしは笑ってしまう。わたしは褒められると嬉しいし、すぐに「でしょう!?」って自分で同意してしまうほうだけど、パパはそういうタイプではないのだ。
昔のわたしは周りの人がどういう人なのか知ることなんてせずに、ただ自分がしたいようにしていたけれど、パパと過ごしていると一緒に居る人のことを知ると楽しいなと思う。
パパは照れてごまかすようにわたしの頭を撫でまわす。恥ずかしくなるとすぐに頭を撫でるのもパパの癖だよね。
「そういえばベルレナ。少し提案があるんだが」
「提案?」
「ああ。ベルレナ、友達を作りたくないか?」
パパが突然告げた言葉にわたしは不思議な気持ちになって、パパを見つめ返した。
「お友達?」
「ああ。ベルレナも俺と一緒にずっとここにいるだけではなく、友達を作りたいんじゃないかって。この前、屋敷を見に行った時にベルレナは同年代と交流があったっていっただろう。友達は親である俺が強制的に作らせるものではないけれど、友達を作るきっかけは俺が与えるものだろ」
パパはわたしと一緒にベルラだった頃の屋敷を見に行った時からずっとそのことを考えていたようだ。やっぱりパパは優しいと思う。優しいからこそこうしてわたしのことを思ってこういう言葉をかけてくれている。
わたしはやっぱりパパが大好きだなと思う。
「えへへ、やっぱりパパは優しいね。わたし、パパが連れて行ってくれるなら、パパと一緒ならどこにでもいきたい。それにお友達が作れるなら沢山作りたい。だから、パパも一緒にお友達作ろうね」
「……俺はいいだろ」
「パパが絶対に嫌だっていうならわたしはパパに絶対に友達を作らなきゃっては言わないよ。でもわたしはパパに友達が出来ると嬉しいもん。わたしは友達沢山作るってことを目標にする!!」
「……本当に気が合うやつがいたらな」
なんだかんだわたしがパパに友達が出来ると嬉しいと言ったら、頷いてくれるパパ。そんなパパにわたしは笑った。
「でもパパ、何処に連れて行ってくれるの?」
「俺が交流を持っている集落だよ」
パパはそう言って、いくつかの手紙を持ってきた。




