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精霊獣に会ったその後のこと ⑥

 精霊がこんなにも弱っているなんて……わたしは信じられない気持ちでいっぱいになった。

 精霊というのは力を持つ存在なのだ。自然の中で行き、いつだって生き生きしている。少なくとも私の出会ってきた精霊は、そういう子達ばかりだった。

 基本的に精霊は人よりもずっと力が強い存在だ。それなのにこんなに弱っているなんて! わたしはショックを受けてしまう。




「ねぇ、大丈夫?」



 わたしは精霊の閉じ込められている檻へと近づいて問いかける。その精霊は人型の小さな精霊である。

 わたしが声をかけるとようやくこちらに気づいたらしい。



 ……わたしたちが近づいたのにも気づかないなんて不思議だ。もしかしたら檻に何らかの細工でもされているのかな?

 そうじゃないと普通なら気づくよね?





「ひと?」



 そう言って、警戒したようにこちらを見る。



 こうしてこの場に捕らえられているからこそ、人に対する警戒心がとても強いのかもしれない。考えてみればそれは当然で……どうやったら心を許してもらえるかなとそんな気持ちになる。

 だけど私が何か言う前にパパとママが口を開いた。




「そう、警戒をするな」

「私達はあなたの声が聞こえたから此処に来たの。あなたを捕らえた者と一緒ではないわ」




 二人の声を聞いてようやく精霊は存在に気付いたらしい。驚いたような顔をしている。




「魔導師!? それも二人も??」




 すぐにパパとママが魔導師と呼ばれる存在だと気づいたみたいで、檻の中であたふたしている。

 こうやってこんな場所にいる精霊にとっても魔導師という存在は特別なのだろうなというのが分かる。わたしにとって魔導師は割と身近な存在だけれども、普通はそうじゃないはずなのだから。




「そうよ。私達は魔導師。そしてこの子は私達の娘だから、ちゃんと話を聞いてあげて」




 ママがそう口にすると、精霊は驚いた顔になる。




 ……魔導師同士の子供って珍しいんだろうな。わたしはホムンクルスの身体だから、厳密にいえば二人の子供というのにはちょっと違うかもだけど。

 でもあれかなぁ、パパとママにいつか……子供が出来ることもあるのかなとかそういうことも考えてしまう。





 少なくとももうしばらく後の方が嬉しいかも。わたしは出来ればパパとママの一番でしばらくはいたいし。もちろん、妹か弟が出来たらそれはそれで嬉しいけれどね!!





「精霊さんはどうしてこんなところでつかまっているの? あなたを助けるためにはどうしたらいいの?」




 わたしはひとまず、精霊に向かってそう問いかける。



 わたしは出来れば目の前で大変な目に遭っている存在が居るのならば、どうにかしてあげたいと思っている。わたしはすべてのものを救えるような力はないし、そもそもそんな風に全員に責任を持つことなんてまず出来ない。

 だからこそ、わたしは自分の手が伸ばせる範囲で出来る限りのことをしよう。





「……たすける?」




 不思議そうな声をあげるのは、わたしが魔導師の娘だからかも。

 だってパパもママもあんまり他人に興味がなくて、わざわざ誰かを助けようなんてあんまりしない。二人ともわたしにとっては優しい両親だ。だけれどもその優しさは分かりにくかったりはするもん。






「うん。わたしは、折角こうして出会ったあなたがこのまま消えてしまいそうになっているのが嫌なの」




 わたしはただそう思っているだけ。

 ……わたしってやっぱり自分勝手かも。この精霊のことを思いやってとかではなくて、わたしがそうしたいからなだけだもん。




「……助けてもらえるなら、助けてほしい。私、凄く、力弱まっている。この檻からまずは出たい。出ないと、弱る」



 小さな声でそう言われる。

 檻の中にいると弱ってしまうものらしい。そんな恐ろしい効果のある檻が存在しているのも何とも言えない気持ち。





 それにしても檻をどうやって壊せばいいんだろうか?

 わたしには正直壊し方がさっぱり分からない。

 わたしはその檻に触れると、魔力が吸われるような感覚があった。びっくりした!




 思わず足がすくんで、倒れそうになる。パパがわたしのことを支えてくれた。ちょっと近づくだけだとそうでもないのに、触れるとこんな感じになるんだ……!




「パパ、ありがとう。ねぇ、これってどうやって壊せるの?」

「無理やり壊せばいい。ベルレナなら出来る」

「それって、壊したのがすぐにばれてしまったりしない?」



 こんなに凄い檻なのだから、壊したらすぐにばれたりするんじゃないかなって。

 わたしはそんな気持ち!





「大丈夫だ。周りに魔力が漏れないようにはちゃんとする」




 そう言われて、わたしは安心した。

 だってね、パパがこんな風に言ってくれるってことは本当になんでも大丈夫なんだよ。なんだって良い方向に行くんだってわたしはそう思っているの。




 わたしはパパの言葉に頷いて、檻に向かって手をかざす。



 そしてわたしは思いっきり――魔力を込めた。


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