また、冬がやってくる ③
「パパ、ママ。わたしね、精霊獣に会いに行きたいと思うの!」
わたしは魔法に関して談義をしていたパパとママに向かってそう言ってそう告げる。
わたしの後ろにはユキアもついてきている。
「精霊獣に会いたい?」
「ユキアがいるじゃない。他にも契約をしたいの?」
パパとママはわたしの発言にそんな風に問いかける。わたしがこんな申し出を言い出すと思わなかったのかな。
「ううん。そういうことじゃないの。わたしはユキアが居ればいいなとは思っているけれど、ただ精霊獣に会ってみたいなと思ったの。ユキアがね、他の精霊獣に興味があるって言っていたのもあるけれど、私自身が精霊獣に会ってみたいなって」
わたしはパパとママに近づいて、自分の気持ちを口にする。
精霊獣に会いに行きたいとなると、確かに契約をしたいと思っていると思われても仕方がないのかも。何かしら目的がないと精霊獣にわざわざ会いに行こうと皆、しないだろうしね。
「なるほどね。精霊獣の中には人に対して反感を持っている個体もいるだろうから、不用意に近づくと戦闘になるかもしれないわよ」
「そうなの?」
「ええ。私は過去に精霊獣と戦闘になったこともあるわ」
「え。それ大丈夫だったの?」
ママの言葉を聞いて思わず不安になった。
だってアイスワンドは精霊獣を害したからと大変な環境にある。ママは精霊獣を倒してしまっていたら……と考えるとどうなったんだろうと心配だった。
「大丈夫よ。倒してはないわ。長時間の戦闘になって不毛だったから、途中でずらかったもの。その精霊獣は魔導師である私を警戒していたのよ」
「魔導師だと警戒されるの?」
「精霊獣の個体にもよるけれど、ほら、私達魔導師は研究熱心でしょう? 魔導師の中には精霊獣の素材を使って研究をしようとしている存在もいるもの。……正直私も本当に作りたいものがあってそれに精霊獣の素材が必要なら問答無用で襲ったと思うし」
「ママ、平和的に素材はもらおう?」
「ふふっ、分かっているわよ。今の私はそういうことをしないわ。精霊獣を害して余計な問題が起こるのも大変だもの。欲しい時はきちんと話し合ってもらうわ」
なんだろう、ママは私にはとっても優しいし、パパに対して可愛いけれどやっぱり魔導師なんだなと実感する。
パパとママは二人とも――わたしに出会うまでもっと好き勝手生きていたんだろうなってそうも思う。
わたしはパパとママが大好きだから、自由に生きて欲しい。でも二人が余計な敵を作ったりして周りから悪い風に言われるのは嫌だなと思うからこういう風にパパとママが平和的に何でも解決しようとしてくれるのは嬉しいけれどね。
「あとね、精霊獣の本ってないでしょ?」
わたしはパパとママに向かってそう言って話を続ける。
「精霊獣の本は確かに少ないな」
「そうね。あまり人前に出ない種族だもの」
実はわたしがよく知らないだけで、精霊獣についての本もどこかにあるのかなと思ったけれどパパとママの知る限りでもその本は少ないみたい。
「詳しく書いてある本とか、書庫にもないよね。だからね、わたしが沢山の精霊獣たちに会いにいって本書けたらなって思ったの!」
わたしがそう言ったらパパとママは驚いた顔をする。わたしが本を書きたいなんて言い出すと思わなかったのかもしれない。
「本を書きたいか……。ベルレナが情報をまとめたものなら素晴らしいものになるだろう」
「パパ? まだ書き出してもないんだよ? パパが期待したような出来にならないかもだからね?」
パパってわたしのこと、大好きだなってこういう時に思う。
わたしならきっと良い本を書くんだとそう確信しているパパ。でもパパの期待通りにかけなかったらがっかりさせちゃう! と思ってしまう。
「どんな出来でもベルレナが書いたものならよいものだ」
「……ちゃんと、中身で判断してくれないとやだよ? わたしはね、パパ。本を書いた時にわたしが書いたものだからって無条件に凄いって言われるより、ちゃんと駄目なところとか指摘してほしいからね?」
わたしはパパに甘やかされるのが好き。パパがわたしのことが好きなんだなって思うと嬉しくなる。
でもちゃんとわたしが将来、精霊獣に関する本を書いた時に駄目なところは駄目って言ってほしいと思う。きっと初めてわたしが書く本になるから、絶対に読みにくいところとか沢山あるはずだもん。
「ああ。ちゃんと、言う」
パパはそう言ってわたしの頭を撫でてくれた。
ママもそんなわたしたちのやり取りをにこにこしながら見守っている。
「ベルレナが精霊獣に関する本を書くの、楽しみだわ」
「うん。頑張って書くね。でもそのためには沢山の精霊獣に会わなきゃだから、パパとママに移動は手伝ってもらうことにはなるけれど……」
わたしは転移魔法をまだ使えないから、どちらにしても精霊獣に会いにいくならパパとママの力は借りなきゃいけない。自分の力で全部出来ればかっこいいと思うけれど、その辺はまだまだなんだよね。




