わたしの初めての魔法 ①
「ベルレナは火属性の魔法が適性が高いから、それからやるか」
「うん!!」
わたしとパパは早速魔法の練習をしようと、屋敷の外に出た。流石に家の中で魔法の練習をするわけにはいかない。初めて使う魔法で屋敷を傷つけてしまっても大変だしね。
まぁ、パパが言うにはこの屋敷全体にも魔法がかかっていて、並の魔法では傷つかないらしいけど。それを聞いてやっぱりパパはすごいなとわたしは思ったのだ。
さてまずはまずはパパが見本を見せてくれるらしい。
「魔導師ディオノレが命ずる。火の神の加護を持って、火球を形成せよ。《ファイヤーボール》」
パパは見本だからか、詠唱をしてくれた。パパレベルになると魔法を行使するための詠唱と呼ばれるものも紡がなくても魔法を使えるらしい。パパはそもそも最初からこういう言葉を口にせずに魔法を使っていた。
パパの詠唱と共に現れるのは、一つの燃える火の弾だ。パパはそれを操り、わたしとパパの周りを一周させる。なんだかパパの手足みたいに火球が動き回っていてすごかった。
「パパは『魔導師ディオノレが命ずる』と口にしていたけれど、これはわたしはなんていえばいいの?」
「普通にベルレナが命ずるでいいぞ。俺がわざわざ魔導師って口にしているのはその方が威力が上がるからだ。魔導師というのはただの称号ではなく、この世界が魔導師と認めたからこそ魔導師なんだ」
「……世界が認めたからこそ魔導師?」
「そうだ。此処にはないが、ステータスが見られるような所に行ってみれば、俺のステータスには『魔導師』がある」
「パパ、すごいね!!」
どうやら世界に認められた魔導師だと『魔導師ディオノレが命ずる』と口にしたほうが良かったりするらしい。パパの無詠唱だと関係がないらしいが、詠唱をする場合はその方がいいんだって。
それにしても自分のことが分かるステータスって一回見てみたいな。
わたしはパパの娘だから、パパに恥じないわたしでいたい。パパが自慢の娘だと言ってくれるわたしでいたい。
——そのためにも魔法を使えるようにならなきゃ!!
そう意気込んでわたしは詠唱を口にする。
「ベルレナが命ずる。火の神の加護を持って、火球を形成せよ。《ファイヤーボール》」
ただ口にしただけでは不発だった。残念なことにわたしは一発で魔法を完成させることは出来なかった。
何かが身体を抜けた感覚はあったけれど、それだけだったのだ。
パパの娘なのに、魔法適性があるのに上手く発動できなかった!! そんなショックから恐る恐るパパを見る。
「パパ……わたし、パパの娘なのに、一発で魔法出来なかった!」
「いや、そんなに落ち込む必要ないぞ? 俺の娘だろうが、はじめてつかう魔法ならそんなに上手くできなくて当然だからな? 寧ろあれだけ魔法適性があるのだから伸びしろ抜群だろう。落ち込まずにもっと過信してもいいぐらいだ」
「……そんなこといっても、落ち込むよ」
パパはわたしに対して優しくて、わたしのことを甘やかして――わたしにそんな風に言うけれど、落ち込むものは落ち込む。
パパがわたしに対して失望した気持ちなどを感じてなさそうなのは嬉しいけれど、わたしは自信をもってパパの娘だと言えるわたしでいたい。そしてパパを知っている人たちにわたしが流石パパの娘だって言ってもらえるわたしでありたい。
そのためには魔法をパパのように……は無理にしても、流石と言われるぐらい使いこなしておきたいのだ。
「……パパ、わたし頑張る!! パパがもっと流石っていうぐらいに!!」
「なんだか妙にやる気だな?」
「当然だよ。だってわたしは魔導師のパパの娘になったんだよ!! パパが流石わたしの娘だって言ってくれるようになりたいもん!!」
思わず本音を口にしてしまって「あっ」となった。こんな風に口にしたわたしにパパはどう思うだろうか? そう思ってパパを見たら、何だかパパは口元を緩めていた。そしてまたわたしの頭を撫でてくれた。パパに乱暴に撫でられて、髪は少しぐちゃぐちゃになる。だけれど、パパに撫でられると嬉しくてわたしは笑ってしまう。
それからわたしは必死になって魔法を何度も行使してみようとした。
だけど、
「うぅうう……出来ない」
上手く魔法が発動してくれない。
なんでだろう。わたしには魔力がおおくて、適性もあるはずなのに。発動しないくせに、身体から魔力が失われていくのが分かるのが悔しい。発動しようとはしているけれど、わたしが魔法を使うのが初めてだからか……中々上手く行かないのだ。
どうして上手くいかないのだろう?
……パパの前でこんなにうまく魔法が上手く行かないなんて、なんだか悲しい。パパはわたしが魔法を使えなくてもいいっていってくれたけど、それでもやっぱりパパの自慢の娘としていたいから。
そう思って続けていたら、流石に疲れてしまった。
魔力を沢山使うというのは、疲れることだということがよく分かった。
「ベルレナ、そろそろやめよう」
「でも……」
「これ以上やったら倒れるかもしれないからな。やめだぞ」
もっとわたしは練習したかったけど、そう言ってパパに止められたので諦めるのだった。
パパはわたしを抱えて屋敷へと戻った。練習がもっと出来ないのは残念だったけれど、パパに抱っこしてもらえると思うと嬉しくてわたしはパパの首に手をまわした。




