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おかえりなさいと迎え入れる ①

「パパはいつ帰ってくるかなぁ」

《そんなに時間はかからないと思うけど》

「パパだもんね」




 パパが飛び出した後、わたしとユキアはのんびりとそんな会話を交わしている。



 パパが対処をしてくれようとしているから、屋敷の外に出ても問題がなさそうだけど……、念のためパパが戻ってくるまでは屋敷の中で過ごすことにしている。


 大丈夫だろうけれど、念のため!

 パパ、早く帰ってこないかな?




《ディオノレさん、怒ってたんでしょ?》

「うん、ちょっと怒ってそうだった」

《ディオノレさんが怒ったら怖いだろうな》



 ぶるりとユキアが身体を震わせる。

 確かにパパの怒りを、実際に受けるなんてことになったら恐ろしいのかもしれない。

 ただわたしはパパが本気でわたしにそういうものを向けることはないって思っているし、パパが幾ら強くても、力があっても怖いっては思えない。





「大丈夫だよ。パパはユキアのことも大切に思っているから、ユキアに本気で怒ったりしないよ」

《うん、まぁ、そうだろうけど。……でもディオノレさんが本気で怒るレベルのことが起こったらどうなるんだろ?》

「んー、どうだろ? パパって優しいから今回みたいに少し怒るぐらいはあるかもしれないけれど、本気で……我を忘れるぐらい怒ることってないと思う」




 パパは優しい。

 それでいていつでも冷静というか、あんまり慌てたりもしない方だ。




 今回みたいにパパがちょっと怒ってしまうことはこれからもあるかもしれないけれど、本当に……わたしの言葉が届かなくなるぐらいにパパが怒る様子なんて想像が出来ない。

 そこまで考えて……パパが取り返しがつかないぐらいに怒っていれば、わたしやママで止めればいいんだと思った。わたしはパパが怒っても仕方がないって思える出来事なら、冷静にそれを判断したならきっと止めないと思う。でももし……パパが後から自分で後悔してしまうような怒り方をすることが仮にあれば……止めたいなと思う。

 わたしはパパに大切にされている。その自覚はあるから、わたしが止めればきっとパパは止まってくれるはずだから。





《確かに……。それこそ、ベルレナ関連のことではないと、そこまで怒らなさそう》

「ふふっ、わたしはパパに大切にされているもん。自分の身は自分で守れるようにもなりたいよね。パパに心配をかけないように、パパが本気で怒らなくてすむように」



 ユキアの言葉にわたしはそう言って笑った。



 ――多分、わたしに何かあればパパはわたしが想像がつかないぐらい怒ると思う。わたしはパパとママに守られて、平和に楽しく生きているけれど、外の世界で何かあれば多分二人とも怒ってしまう。

 ニコラドさんもパパやママが飛んでこないうちに自分で片づけられる方がいいって言ってたし。





「それにしても……パパの結界に小さいとはいえ穴をあけるって凄いよね」

《そういうのに特化した魔法使いだったんじゃない?》

「結界を開けるの専門ってこと? 結界って基本的に何かを守るためのものだと思うけれど、開けるのが専門ってよくわかんないなぁ」

《敵対しているところを攻める時とか、今回みたいに用事がある相手が閉じこもっていれば開けたりとかするんだと思う》

「なんだかそれって結構迷惑な使い方だよね……」

《うん。あとは……親の記憶の中にあるのは、古代遺跡とかで結界に覆われて調査出来ない範囲を調べるためとか?》

「それはまだ平和的な感じだね。それにしても遺跡かぁ。わたし、遺跡はあんまりいったことないなぁ。パパにいって昔の遺跡とかに連れてってもらおうかな?」



 古代遺跡ってどんなものなんだろう?

 古代ってパパが生まれるよりもずっと前の文明ってことだよね? 



 パパが当たり前みたいに読んでいる古代文字とかがある時代ってことだよね。……わたし、パパにちょっとずつ習っているのに古代文字って難しくてなかなか読めないの。

 そういうのも古代遺跡をみてまわったら理解できるようになっていったりするのかな? 




 なんだかわたしはパパとママに沢山の場所に連れて行ってもらっているのに、こうして話しているともっと行きたい場所がどんどん増えていく。




《楽しいと思うよ。あと、結界を開ける能力ってあってもいいと思う。結界って基本的にはその場を守るためのものだけど、閉じ込めるとかにも使えるから》

「そっか。結界で閉じ込められて外に出れなくなるって状況にもなる可能性があるってことだよね。それならそういうのも学んだ方がいいね」




 結界の張り方は学んだけれど、開け方はあんまり知らない。その辺も学んでおくと何かあった時にいいのかもしれない。

 そういう会話を交わしていると、パパの声が聞こえてきた。

 わたしは自分の部屋から、パパの声のする方へと向かう。後ろからはユキアもついてくる。




「パパ!!」




 わたしがパパの姿を見てかけよれば、パパがこちらを向いた。

 なんだろう、ちょっとだけ怒っていたからか、今も雰囲気が少し硬い気がする。




 わたしはそんなパパに近づいて、



「おかえりなさい!!」



 と笑みを向ける。



 そうすればパパの雰囲気が変わった。わたしの大好きな優しい雰囲気の、優しい笑み。



「ただいま」



 そう言って笑うパパを見ると、嬉しくなった。



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