ママの部屋と、昔の話 ②
「ママ、この絵は? とっても綺麗」
ママの持っていた荷物の中には絵もあった。綺麗な額縁の中におさめられるいくつかの絵。それはとっても綺麗な風景画。これは何処の光景なんだろう??
「昔、知り合いの画家がよこしてきたものよ」
「そうなんだ。ママは画家さんとも知り合いなんだね。ねぇ、ママ。入り口のところにパパとわたしの絵があるでしょ。わたしね、ママも含めて三人の絵が欲しいなって思うの。前に書いてもらった画家さんに頼もうかと思っていたけれど、ママの知り合いの画家さんがいるならそっちに頼む?」
「ずっと昔だから、もう亡くなっているわ」
「そうなんだ……」
「ええ」
ママの言葉を聞きながら、ママは長く生きているからこそそうやって知り合いを沢山見送ってきたのだろうなと思った。それはパパやニコラドさんにも言えることだけど、魔導師ってそれだけ人の死を見てきたのかな。
「ママにとって思い出の絵なんだね。こういうものは取っておいた方がいいよね!」
「そうね。流石にこれは捨てないわ」
「空間魔法が上手に使えるとこうやって大切なものも取っておくことが出来るもんね」
「ベルレナはまだ空間魔法は使えないのよね?」
「うん。まだ使えないよ。難しい魔法だからってパパに言われてるの」
空間魔法をわたしはまだ使えない。やってみようとすれば出来るかもだけど、パパから空間魔法は扱いが難しいからって言われているからまだ使ったことはない。
わたしの言葉にママは「そうね」と言って、続ける。
「過去に転移魔法の失敗で見知らぬ場所に飛ばされて、帰ってこれなくなった例もあるわ。それだけ難しいから扱いに気をつけなさい。空間魔法以外も、魔法という力は扱いを間違えると怪我をしたりするから気を付けてね」
「うん。気を付ける! 新しい魔法を使うときはパパとママの傍で使うね。そしたら何があっても大丈夫だもんね」
アイスワンドの国でおびえられてしまったように、魔法というのはとても恐ろしい力なのだ。わたしはパパとママの使う魔法が綺麗で、自分で魔法を使うとワクワクして楽しいって思っている。
でも恐ろしい一面もあるんだなってそういうのをちゃんと認識しておかないと。そうじゃないと失敗してしまったら大変だもん。
ママはわたしの言葉に、わたしの頭を撫でてくれた。
「ベルレナは良い子ね」
「ふふっ、ママにそう言ってもらえると嬉しい」
良い子ね、と褒められてなんだかわたしは嬉しい気持ちになった。
わたしはしばらくママに頭を撫でられていたのだけど、先ほどの絵の話を考える。どうせ描いてもらうなら精一杯おしゃれしたほうがいいんじゃないかな。どういう場所で描いてもらった方がいいかな? と思ってママに話しかける。
「ねぇねぇ、ママは絵を描いてもらう時、どういった服装する? どうせならおしゃれしたいよね!! わたし、ママもパパも綺麗だから凄く着飾ってもらいたいって思うの」
「そうね。折角ならおめかしするのもいいわね」
そう言ってママは、何処かおかしそうに笑った。
「どうしたの?」
「ちょっと昔を思い出して。私、昔は絵を描かれるのが嫌だって思っていたの」
「そうなの? ママが嫌なら描いてもらうのやめる?」
「大丈夫よ。不思議なのだけど、私はディオノレとベルレナと一緒の、家族の絵ならば描いてもらうのもいいかなと思うから」
「そっか。なら良かった!!」
ママが嫌がることはしたくないなと思っていった言葉に、ママは笑ってくれた。
またあの画家さんのところに行って描いてもらうとして、場所はどうしようか? 外の風景と一緒に描いてもらってもいい気がするけれど……。そういうことを想像するだけで凄く楽しいね。
その後もまた引き続き、ママの荷物の整理をする。
穏当に沢山のものが保管されていて、楽しい。パパもこんな風に沢山のものを保管していたりするのかな?
「結構不要なものも多いわね」
「まだまだ使えそうなものばかりだけど、要らないならどうするの?」
「そうね。そのまま燃やしてしまってもいいけれど、まだ使えそうならば売ってもいいかもしれないわ」
「じゃあバザーで出そうよ。前にね、バザーに参加した時、凄く楽しかったの」
「それも楽しそうね。参加しましょうか」
「うん。参加する。パパも誘って三人でバザー参加しようね」
「ええ」
バザーに参加するためにまた何か作りたいな。どんなものを作ろうか?
そうやって考えるとワクワクして、楽しみになった。




